室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t04102#ん?シロアリ対策協会のPL対策#95-09
 本年7月から製造物責任法(通称PL法)が施行されることになりましたが、シロアリ駆除を一手に引き受けている「日本しろあり対策協会」は、自分のお家がPLに食い荒らされては大変と考えてか、PL法対策をはじめています。本号では、昨年12月に発刊された「PL法制定に伴う対策」と題する業界向けのパンフレットの内容を紹介してみましょう。
 まず、冒頭の刊行のことばの中で、『木造建築物を長期に維持するには、「しろあり」対策が不可欠であることはいうまでもない。しかし、花粉症や煙草の煙にも敏感な人もいる。しろあり防除薬剤には有機溶剤を含有する製剤も多いことから、臭気や化学物質に敏感な人には、その影響に関する一層の配慮が、要求され細心の注意が必要であり、難しい課題を背負わなければならない。』と述べています。
 さらに、以下に引用するような記述がみられますが、業界のシロアリ駆除剤による健康被害についての認識がいかにあまいかがわかります。
『しろあい防除施工業者にとってのPL法』という章では、
(1)PL法の立法の意義とそのインパクト
@PL法の立法目的は被害者保護の拡充 「被害者対加害者」と解釈すると、施工業者も薬剤業者もともに加害者サイドにあることは、いうまでもない。
 しろあり対策業界は、従来から安全で有効なしろあり防除に努めてきたが、これまでにもまして、厳しく安全施工を図っていかなければならない環境に置かれていると言えよう。
A責任はまず施工業者に向けられる−−−−
*施工後、眼の痛み、頭痛、喘息の発作等が生じ、室内の空気中に薬剤が検出された。
*施工後、池の鯉が死に、池の中から薬剤が検出された。
*施工後、井戸水から薬剤が検出され使用停止になった。
このような被害、トラブルが生じたとき、クレームはまず施工業者に寄せられるであろう。
薬剤が検出されており、被害との因果関係が疑われる限り、施工業者・薬剤メーカーのいづれかが賠償責任を追及される。
いづれが責任を負担するかは究明された原因次第であるが、施工業者において使用薬剤の記録がなかったり、在庫管理や使用量管理がなされなかったりすれば、その粗雑さを指弾され、PL法云々以前に「過失責任」が認められるであろう。
BPL法の対象は「製造業者等」であるが−−−−
 施工業者は原則として、「製造業者等」には当たらないと解釈され得るし、そうであれば、PL法の適用を受けないといえる。しかし、施工業者が自ら薬剤を調合して、使用・提供したり、薬剤処理を施した木材を販売・提供するなどの実態もあり、一概に「製造業者等」に当たらないとは言い難い。また、しろあり防除施工の実態と責任の所在を考えると、PL法の直接の適用がないとしても、
*施工業者は自己の裁量によって薬剤を使用し、専門業者として高度の注意義務を負って作業に当たらなければならない。
*施主と直接の契約関係に立って契約上の責任を負担している。
などにより、施工業者は責任を負う立場にあるというべきである。
PL法を含めた消費者保護拡充により賠償請求は厳しくなるが、PL法を根拠とする請求か否かを問わず、原因追及段階までは、施工業者も薬剤メーカーも共通の立場に置かれる。
その結果、
*現場の状況に応じた使用がされていない。
*散布・塗布量の過剰。
*混合による有害物質の生成−−−−などの原因が特定された。→施工業者の責任
*薬剤製造時の異物の混入
*ラベルの誤記
*仕様書の記述が不適切−−−−などの原因(欠陥)が特定された場合→薬剤メーカーの責任となる。
法律的な責任根拠については、
*施工業者は:主として民法(契約違反、また過失=注意義務違反による責任)
*薬剤メーカー:主としてPL法(欠陥による責任)
となろうが、原因究明の中で、施工上なすべき注意を欠いていたことの責任が、欠陥に基づく責任より軽く解釈されるとは考えられない。
 なお、施工業者は施主との間で請負契約関係にあるため、施主に対しては契約違反による責任を負担しており、過失=注意義務違反が立証されなくても、契約に反して施主に損害をあたえれば、賠償しなければならない。
ここで言う契約違反とは、契約書に明示されている事項はもとより、明示されていなかったり、契約書自体を締結していなかったとしても、しろあり防除施工を請け負うについて当然常識の範囲でなされるべき事又は、合意されている事項に反したこもと含んでいる。
施主がアレルギー症状を起こしたり、施主のペットが死んだような場合、そのような事態の生じない安全な施工をすると言うのは、請負契約上意図されていたものと解釈さるから、それに反している以上契約違反となるわけである。
(2)しろあり防除施工業者の責任負担
@A略 B施工業者は安全性の概念に関してレベルアップを余儀なくされる
PL法に対応して、薬剤メーカーは取扱説明書、ラベル等の表示の見直しや施工方法の見直しを図り、製品の欠陥の排除に努力することになる。また、隣接業界や施工業者も安全性の概念をレベルアップする必要があろう。
施工業者が注意を払うべき情報は増加し、内容も高度化すると同時に注意義務を果たしたか否かに関する評価のレベルも厳しくなる。
 施工業者の注意義務レベルが上がっていくと、注意義務違反=過失を問われる可能性は実質上高くなる。
レベルアップの中で、施工業者は施工における自己責任をより強く意識せざるを得ない。
例えば、協会の仕様書やメーカーのラベル表示に従って、施工したというだけでは免罪符にはならない。
また、『しろあり防除施工に対するPL対策』の章の中にしめされた施主に対するPL対策という項では、次頁以下に引用したような施工現場の調査確認書を作製するよう指導しています。−確認書略−
(3)消費者側からみれば・・・
 今まで、シロアリ業界は、健康被害を訴えても真面目に対応してきませんでしたが、この「対策」を見ると、内心密かにやばいなと思っていたんじゃないかと思われます。
施工者にも責任があると言っています。しかし、もちろんこれで十分なわけはありません。以下に、「対策」の問題点を示します。
 この確認書は、既存家屋の薬剤処理が対象とされているように見受けられますが、実際、どの程度実施されているのか不明です。家族の健康状態などは、当然プライバシーにあたりますから、調査確認書の内容の秘密が守られる必要があります。病人やアレルギーや化学物質に過敏な体質の居住者に対して、単に被害のない場所に移動してもらうとか、影響の少ない無臭剤系もしくは揮散の少ない薬剤を使用するしか指示がありません。
散布時に場所を移動するくらいで、健康への影響が回避できるとは、とても思えません。また、隣家居住者の健康についてのチェックすることになっていますが、これは、隣家の人に何月何日、どこそこでしろあり薬剤処理をしますが、ご家族のみなさんの健康状態はいかがですか、と尋ねるということなのでしょうが、いままで、薬剤処理をすることを周辺の人に知らせるなんてことがあったのでしょうか。誰誰さんの家でしろあり駆除をしましが、お宅もいかがですなどという宣伝の声は聞きましたが。
 また、当然ながら、新築の場合にもこの確認書は準用されると思われますが、建物完成後に入居する人やシロアリ薬剤処理直後に、現場に入って作業する大工さんなどの建築業者の健康状態についての、調査がきちんとなされるのでしょうか。
 さらにいえば、アパートや建て売り住宅などは、施主と入居者は異なりますから、入居後、シロアリ駆除剤の影響で健康を害した人については、だれが、責任をとるのでしょう。
もっとも大事なことは、シロアリ駆除剤の危険性について、施主や入居者にまえもって、知らせるということなのですが、このことを「安全性の説明」という言葉ですりかえていまうす。その薬剤が人の健康や環境に対してどのような影響をあたえるのかを、施主にきちんと説明した上で、確認書を作製するならば、まだしも、そういうことを一切せずに、確認書を作製しても、それは、健康被害が起こり製造物責任問題が争われることになった時の施工業者の免罪符としかなり得ないのでは、ないでしょうか。『特に、PL法制定が機に従来なかった、予想外の損害賠償を請求されることもあり得る。その際、工事現場の環境調査が整備されていれば、このような事態に対応できるし、過失責任(民法)の追及を免れることができる』という一文が確認書作製の趣旨のひとつとして挙げられていることからも、業界の意図がミエミエです。
 PL法対策でほんとうに必要なのは、有害なシロアリ駆除剤を使わないことしかないと思うのですが。

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作成:1998-04-01