室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t04205#カビ、菌類が発生源となる揮発性有機化合物にる室内汚染#95-10
 室内汚染で問題となる化学物質の中に揮発性有機化合物があります。その多くは、合板、床材、壁紙、絨毯などの建材やそこに使われる塗料、接着剤、さらには、クリーニング用製品に含まれる物質そのものが揮発して室内大気を汚染すると考えられています。しかし、もうひとつ、原因がありそうなことが、わかってきました。
 アメリカのジョージア工科大学のBayer達は、室内にカビや菌類が繁殖する際、代謝産生によって揮発性有機化合物が発生することを明かにしました。彼らが検出したのは、ヘキサン、塩化メチレン、ベンゼン、アセトンなどで、これらは、溶剤をベースとした建築用材やクリーニング用品を培地として、カビ類が繁殖する時に、製品に含まれる物質が分解して発生すると推定されています。室内に見出だされるごくありふれたクラドスポリウム(Cladosporium)、ペニシリウム(Penicillium)、アスペルギルス(Aspergillus)らの菌類が、熱や湿気を得て、繁殖する際に、揮発性有機物が生成し、頭痛や眼の刺激、気管系の障害等を引き起こすと考えた研究者は、室内浄化につとめ、換気をよくすることが大切だとしています。
 室内で繁殖するカビ・菌類、その胞子や死骸そのものが、ハウスダストとして、ヒトの健康に影響をあたえることは知られていますが、それらが、培地に含まれる物質を分解することによって、新たに生成する代謝化合物の毒性についても配慮せねばならなくなってきたわけです。てんとう虫情報40号で紹介したアンチモン系難燃剤の菌による分解によって毒性の強い三水素化アンチモンが生成することもその一例でしょう(乳児突然死症候群〜難燃剤説をめぐって参照)。
 身の回りで使われる製品の有害性をチェックする時、それをを構成する化学物質(主組成物だけでなく、難燃剤、着色剤、溶剤、界面活性剤ほかの添加剤を含む)自体の毒性はもちろん、それらがどのような条件下で、どのような経路で分解され(生分解、酸化分解、熱分解、光分解など)、どのような物質が、どの程度の量発生するかが問題となるわけです。また、室内を汚染している物質が暖房や調理器などによる熱や燃焼によりどんな物質にかわるかも調べる必要があります(たとえば、防虫剤パラジクロロベンゼンの気体が燃焼により、ダイオキシン類を発生さす恐れがある)。
 室内で使われる場合、生分解性がよい物質が、必ずしも安全だとはいいきれないのです。現行の「化審法」によって、難分解性で、生物濃縮性の高い物質を規制するだけでは、室内環境汚染は防止できないとしてきた私たちの懸念が現実のものとなりつつあります

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作成:1998-04-01