室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t04406#発ガン性農薬ペルメトリンの室内及び人体汚染#95-12
 てんとう虫情報42号で、能登さんから、室内環境研究会第一回研究発表会についての報告がありましたが、その際、発表されたピレスロイド系薬剤ペルメトリンを含むくん煙殺虫剤の室内及び人体汚染についての研究(倉敷芸術科学大学の浅川冨美雪、ほか)を紹介します。
 すでに、ペルメトリンを含むくん煙剤の室内汚染は、横浜国立大学のグループが、DDVP−ペルメトリン混合くん煙剤をもちいた実験で、最高1800μg/立方米の室内空気中濃度を検出しており、一昼夜後には、0.1μgに減少したと報告しています(「横浜国大環境紀要」18巻9ページ:1992年)。
 今回の実験では、くん煙中の室内でのペルメトリン濃度は22739.0μg/立方米と非常に高く、処理後10時間たったその夜の濃度は238.4μg/立方米、1日後には0.2μgに下がり、7日後は検出限界の0.1μg以下となったと報告されています。さらに、人体実験に志願した成人男子がくん煙処理された室内で、7.5時間就寝しましたが、その尿中から、ペルメトリンの代謝物のひとつである3−フェノキシ安息香酸が検出されました。この化合物は、図−略−に示すペルメトリンの化学構造のAの部分が酸化分解されて生じた物質と考えられます。3−フェノキシ安息香酸の尿からの排泄量は、時間とともに減少していきますが、暴露4日経過した尿中にもまだみられたということです。
 分解物の片割れ、構造Bの部分は、体内でどうなっているかは、調べられていませんが、塩素(Cl)を含む結合単位があり、発癌性のある有機塩素化合物に類似した分解物ができているかも知れません。
 ペルメトリンは蒸気圧が低いため、使用後、空気中濃度は、急激に減少しますが、奈良県衛生研究所の実験では、室内の粉塵中に高い濃度で検出されており、また、家屋内での付着残留率の高いことが明かになっています(28日後でもその80%以上が付着残留していた:「衛生化学」30巻207ページ、1984年)。畳や壁、家具などの表面に付着している薬剤が、ほこりとともに、舞い上がり、それを吸い込むこと、さらには、屋内の付着部分に手や肌を触れたり、乳幼児の場合、直接なめることも考えられるだけでなく、衣類や寝具、それに食品が二次汚染される危険もあります。
 一般にピレスロイド系農薬は、天然の除虫菊が蚊取り線香に使われていたこともあって、人体への影響は少ないとの神話がまかり通り、最近では、有機リン系薬剤に替わって、ピレスロイド系の薬剤が、農業用としてだけでなく、家庭用殺虫剤、衣料防虫剤、シロアリ駆除剤などとして、広く使われるようになってきました。しかし、現在、使用されているピレスロイド系の薬剤の殆どは化学合成品であり、中でも、塩素を含むペルメトリンは、その化学構造からして、発癌性が疑われて当然のものですし、加熱酸化によってダイオキシン類が生成することも充分考えられます。
 アメリカのEPA(環境保護庁)は、ペルメトリンを発癌性の恐れのある農薬としています。また、ドイツでは、社会民主党(SPD)が、ピレスロイド系殺虫剤の繊維製品や住居インテリアなどへの使用を禁止するよう政府に要請しています。
 日本では、消費者団体が農薬残留基準裁判で、発癌性農薬であるペルメトリンの農作物における残留基準値が高いことを問題視していますが、農作物以外でのペルメトリンの使用については、何の規制もありません。この夏、私たちが調べた電車内消毒調査でも、JR東日本、東急、西武などでペルメトリンを含有する薬剤が使用されていました。
 有機リン系化合物とともに、ペルメトリンも私たちの身の回りから早急になくしたい薬剤のひとつです。
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作成:1998-04-01