空中散布・松枯れにもどる
t04601#林野庁、「松くい虫被害対策特別措置法」の延長、農薬空中散布継続を画策#96-02
今まで何度も触れてきましたが、松林への農薬空中散布の根拠になっている「松くい虫被害対策特別措置法」(特措法)が97年3月で期限切れになります。この法律は今まで3回も延長され、実に20年間にわたって農薬空中散布が続けられてきました。今度こそ、この法律を葬ろうと、松枯れ空散反対全国ネットワーク(事務局:反農薬東京グループ)を中心にさまざまな活動が続けられてきました。
林野庁は、昨年12月の私たちの問い合わせに対して「特措法をどうするかはまだ決まっていない。前回の法律延長時に設立した”松林保全対策懇談会”を今回設立するかどうかも、まだ未定」と回答していました。
この懇談会なるものは、林野庁長官の私的諮問機関とやらで、法的根拠は何もありません。前回の懇談会の役割は、林野庁の都合のいい報告書を書き(実際に作文したのは林野庁ではないかと私は疑っています)、農薬空中散布の続行を容易にさせるものでした。ですから、このような懇談会が設立されるとなれば、林野庁は特措法の、つまりは農薬空中散布を延長しようとしていると考えていいものです。
ちなみに、今ではどの省庁も○○懇談会なるものをでっちあげ、イエスマンばかりをかき集めた上で、自分たちの言いたいことを報告書として書かせ、それを元に「広範な意見を聞いた結果です」と、強引に法律を制定したり、改定したりしています。懇談会は行政の隠れ蓑になっています。
そもそも、法律をどうするか、どういう政策を取り入れるべきかは、その問題に関心を持っている人の意見を聞くことから始まるのであって、公聴会なりで広く参加できる方法を考えるべきです。そしてそれを審議するのは国会議員であるはずです。行政が勝手気ままに法律を操作するための懇談会を作り、そこが方向を出すなどとは立法軽視と言わざるを得ません。このような懇談会の手法は直ちにやめるべきです。
ともあれ、問い合わせに対して何も決まっていないと通してきた後で、林野庁は1月24日の夕方、突如として、社会党の議員に「懇談会を作った。第一回目の会合を1月26日に開く」と、知らせてきました。これは、林野庁が特措法を延長し、農薬空中散布を続けると意思表示したと見ていいと思います。
1月25日に、林野庁から手に入れた懇談会のメンバーは以下の通りです。<>内にその人物の経歴などを入れました。
松林保全対策懇談会委員−略−
これで、農薬空中散布続行、特措法延長のための懇談会の性格がより明らかになりました。まず、元林野庁長官が入っています。この人物は2回目の特措法延長の際には指導部長として実質的な責任者を努め、3回目の延長の際には林野庁長官として特措法延長を推進してきました。
また、元森林総合研究所所長もいます。この人物は松枯れの原因はマツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウとの説を出した研究所の責任者であったし、実際に空中散布の効果を宣伝してきています。
さらに、元水産庁長官、元農用地盤整備公団理事など、関係省庁出身者が多く、現在はそれぞれ公団の理事などに天下りしている人が多いのが特徴です。(ついでながら、官僚の頂点を極めてから天下りした人種とは2回も3回も退職金をもらった上で、こうした審議会や懇談会に名前を連ね、最晩年を優雅に暮らすものかと感じいった次第です。)
こうした人選は、平成7年9月の閣議決定の「審議会等の透明化、見直し等について」の中の「当該省庁の出身者(特に退職後間もない者)又は、現在当該省庁の顧問、参与等の職にあるものは、原則としてこれをその委員に任命しない」に反しています。
松枯れ空散反対運動は、19年間、一貫して農薬空中散布に反対し、松枯れ対策に関して提言を出し続けてきました。それを受け入れて林野庁も伐倒駆除や樹種転換といった農薬空中散布以外の方法を取り入れるようになってきた歴史があります。それをを考えれば、今回の特措法改定に向けての懇談会に、私たちを入れるのが当然です。
しかし、林野庁は私たちの抗議を受け入れず、「林野庁長官の私的諮問機関だから、国会議員にも相談する必要はない」とつっぱねてきました。また、1月26日の懇談会の第一回目の会合について、傍聴したいと申し入れましたが、会議の場所すら明らかにしないというかたくなな態度でした。
これに対して、私たちは農薬空中散布に反対してきた社会党の議員とともに、「この人選では、農薬の人体に与える影響を述べる人がいない」などを指摘し、少なくとも、医学者を入れるべきと主張してきました。林野庁は「辻さんたちの意見を聞かないと言っているわけではありません。参考人として懇談会で意見を聞く場を設けます。それだって前より前進しているじゃないですか」などと言ってきました。冗談じゃありません。農薬空中散布の推進派が大多数の懇談会で、その被害を知らない人たちにたった一回だけの懇談会で発言したところで、どれだけ理解されるものか、聞きっぱなしで終わってしまう可能性もあります。
そもそも、自分たちの思い通りの報告書を書かせるための懇談会ですから、それに反対するような意見をもった人を入れるなど、林野庁としてはとんでもない話だったのでしょう。しかし、社会党の議員の粘りもあって、それこそ、すったもんだがありましたが、最終的に、私たちが推薦した北里大学の石川哲教授が懇談会のメンバーに入ることになりました。石川教授は微量の農薬が人体へ与える影響に関して世界的権威です。これで少しは林野庁も勉強すればいいのですが。
松枯れは現在も終わっておらず、林野庁の統計によると1994年度の被害が112万m3、被害発生都府県は45、市町村でいうと2064だそうです。ちなみに、特措法制定時の72年度は被害量が81万m3、被害発生市町村が1961となっています。法律ができた後、さらに被害が広がったわけです。いかに農薬空中散布が効果がないか明らかな数字です。
しかし、松枯れ被害のある45都府県のうち、11都府県はすでに農薬空中散布をやめてそれ以外の対策をとっています。こうした県の取り組みなどについて、ネットワークでは以下のようなアンケート調査することにしました。
アンケート−略−
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作成:1998-04-01