室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t04602#住宅金融公庫の仕様書変更の周知を−「ベタ基礎なら土壌へのシロアリ駆除剤防蟻処理はしなくていいはずなのに・・」#96-02
 てんとう虫情報25号(94年5月号)でお知らせしましたが、住宅金融公庫(公庫)は、反農薬東京グループとの話し合いを通じて仕様書を改定し、シロアリ防除のための処理を薬剤処理の義務づけと見られるような記載を改めました。内容は、防蟻処理そのものが義務ではないこと、また、防蟻処理をする場合でも、ヒノキなど防蟻性のある木材を使用するなどの構法処理か薬剤処理のどちらでも選べるようになっています。
 これは一歩前進と私たちは評価していますが、仕様書の改定内容が十分に理解されてなくて、相変わらず、薬剤防蟻処理をしないと公庫から融資を受けられないと思いこんでいる住宅メーカーが多々あります。反農薬東京グループは、この点の周知徹底を十分にはかるよう公庫に申し入れ、公庫もいろいろ努力しているようですが、なかなか周知されていません。
<読者からの相談>
 先日、反農薬シリーズ11の「住宅が体をむしばむ」を読んだNさんから相談がありました。Nさんは四国に家を新築する予定ですが、契約したハウスメーカーが「薬剤によるシロアリ防除をしないと公庫から融資を受けられない」と言うので困っているということでした。
 詳しくお聞きしたのですが、この家はベタ基礎(床下一面にコンクリートを15センチ以上敷く方法)とのことでしたので、それなら、公庫が土壌処理と同等以上の効力があると認めているので、少なくとも土壌処理はしなくてもいいはずと答えました。
 Nさんはそのことをメーカーに伝え、公庫にも確認したのですが、最終的に「公庫に薬剤処理をしなければいけないと言われた」との連絡があり、「シロアリ防除業者が薬剤名を知らせてきた」とのことでした。
 薬剤は新しいタイプとかで急性毒性が強く、まだどのような毒性があるかはっきりしません。こんなものを床下に散布して万一、健康を害したら取り返しがつきません。反農薬東京グループにはあちこちから、そのような被害者の声が届いています。撒かないにこしたことはありません。
<住宅金融公庫へ問合せ>
 それにしても、ベタ基礎なら薬剤による土壌処理はしなくてもいいと、仕様書にもはっきり書いてあり、以前に公庫に問い合わせて確認もしているのに、おかしいことだと思って公庫に聞いてみました。
 その結果、Nさんの家はプレハブ住宅で、日本建築センターによって工業化認定されており、認定内容が薬剤処理を義務づけていたら土壌処理をしなければならないのだということがわかりました。公庫はNさんから相談があったので、その認定の内容についてメーカーに問い合わせているところだとのことでした。話がちょっと違うのでいろいろ聞きました。結果としては、Nさんの家に関しては、メーカーと十分連絡をとったうえで善処するということになり、メーカー側が薬剤処理を取り下げて解決しました。
 しかし、ここまで施主が動かないとメーカーが薬剤処理をやめないということに怒りを覚えます。住宅メーカーはあまりにも勉強不足です。見栄えばかりがよくて健康に悪い家など誰が欲しがるでしょう。一番大切なのは安全でくつろげる家です。また、施主も住宅メーカーのいいなりにならず、自分がお金をだして家を作るんだということをしっかり自覚して、安全な家を提供するメーカーを選び、希望をどんどん言うべきです。
<プレハブは別?>
 また、問題なのは、一般の工務店が建てるような住宅だと床下を高くしたり、防蟻性のある木材を床下に使うなどの構法で薬剤処理はしなくてもいいということですが、プレハブ住宅のような工業化認定された住宅というのは、全体で耐久性を見るので薬剤処理を義務づけていたら公庫としては何もできないということです。
 公庫がベタ基礎なら薬剤による土壌処理はしなくてもいいと言っているのに、一方で日本建築センターの認定基準でそれを義務づけるというのはおかしな話です。実際にNさんの例が出てくるまで公庫も考えていなかった点でしょう。今後、こちらの方にも申し入れをする必要がでてきました。
<公庫仕様書の改定の理由>
 参考までに、住宅金融公庫が監修している「住宅金融公庫融資住宅工事共通仕様書改定内容の解説」(平成6年度版)から、防腐防蟻措置についての項を転載します。
 ここでは、改定の理由・背景として@環境保全に対する配慮、A薬剤処理の見直し、B融資上の義務づけとの誤解を解く、C消費者に防腐・防蟻措置を選択するための情報の提供、の4つをあげています。私たちの問題提起が大筋で理解されたものと思われます。
 しかし、いろいろ立派なことが書かれているのですが、住宅メーカーなどには読まれていないようで、相変わらず、薬剤処理がセットになって見積もりに入っていることが多いようです。住宅メーカーはもちろん、これから住宅を建てようとしている方にも是非読んでいただきたいと思います。
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 防腐防蟻措置について
 防腐・防蟻措置は、建物の耐久性を確保するために重要な仕様の一つである。
 このため、建築基準法施行令第49条(外壁内部等の防腐措置等)第2項には、「構造耐久力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地盤から1メートル以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない」と規定されており、また、住宅金融公庫融資個人住宅基準第20条(耐久性の向上に関する措置)第1項及び第2項には「第1項 外壁、柱、土台等の腐朽のおそれのある部分に木材を使用する場合においては、防腐剤を塗布する等防腐上有効な措置を講じなければならない。」並びに「第2項 外壁、柱、土台等のしろあり、ひらたきくいむしその他の他の虫による被害を受けるおそれのある部分に木材を使用する場合においては、地域の実状に応じて、土壌処理及び薬剤の浸漬、塗布、吹き付け等防蟻及び防虫上有効な措置を講じなければならない」と規定している。ただし、公庫の建設基準の規定においては、遵守事項(義務基準)ではなく、あくまでも誘導事項(努力基準)であるため、公庫仕様書においては、〜〜〜波形のアンダーラインを付してないことに注意されたい。
 今回の公庫仕様書における改定の理由・背景は次のとおりである。
 第一に、環境保全に対する配慮である。環境基本法(平成5年11月19日)の発布・施行、環境政策大綱(平成6年1月)の制定により、環境への配慮の必要性が高まってきた。
 第二に、薬剤処理の見直しの動きである。薬剤処理は、わが国の昔からの耐久性向上策であった樹種の選択(ひのき、ひば、くりなど)・構法(軒の出を深く・1階床を高く、通風のよい構造)・保全(こまめに手入れ修復を実施)に替わって建設コストを抑えるなどの次善の策として依存する傾向が強くなってきた。
 この薬剤処理には、現場での薬剤処理と工場での薬剤処理の二つがある。まず、現場での薬剤処理では、環境汚染に対する問題から薬剤の見直しが行われ、過去薬剤の持続性が10年以上あることが前提とされていたものが、最近では、一般に5年といわれている。このため、5年間隔の「再処理」が一般化しつつあり、いわゆる居住建物での薬剤散布の安全性などが懸念されている。
 また、工場での薬剤処理では、加圧処理があり、この薬剤には長期間効果のあるCCAが多用されているが、廃材後焼却するときに含有薬剤が気中に飛散し、環境汚染の問題があるため、CCAに替わる薬剤の対応が進められている。
 第三に、薬剤処理が公庫融資上の義務づけとの誤解を解くためである。先にも述べたとおり、公庫融資において防腐・防蟻措置は義務づけではないが、薬剤処理が一般化している現在では、そのような誤解がされてきた。このため、薬剤処理により防腐・防蟻措置を行う仕様を、本来の措置方法である薬剤処理以外の措置を盛りこむ必要性が生じてきた。
 第四に、消費者が判断するのに必要な情報の提供である。建物の耐久性を向上させるための防腐・防蟻措置には、樹種(ひのき、ひば、こうやまき、くり、けやき)の選択、構法による対応(軒の出を深く・1階床を高く・通風のよい構造とし、雨水や湿気から建物を守る)、建物の保守・管理(手入れ修復を行う)および薬剤処理の大きく4つの手法があり、これらの事項を消費者へ理解してもらうための一助となることを目的とした。
 以上、改定の主な理由と背景であり、これらの事項を総合的に判断して今回の仕様書の改定を行い、その具体的改定内容等は次のとおりである。
以下の項を略
<1>ひのき・ひば等の樹種の選択への対応
<2>防腐・防蟻措置の範囲等への対応について
<3>防腐・防蟻対策区分図の変更について
<4>防蟻措置効力のあるべた基礎について

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作成:1998-04-01