空中散布・松枯れにもどる
t04804#林野庁、松枯れ対策の農薬空中散布の効果を示せず−出てきたのは「薮から切り株」#96-04
 4月10日、松枯れ対策と称して行われている農薬空中散布の効果を検証するため、社民党森林林業対策小委員会の主催で、林野庁、地方自治体、空散反対の市民運動のメンバーを招いて勉強会が行われました。この勉強会は3回目で、今までに松枯れ空散に関する健康被害、予算などについて話し合いをしてきています。
 会には小委員会のメンバーの国会議員10人を始め、市民側からは大阪大学の植村振作氏、島根松枯れと農薬空中散布を考える会代表の渡部美津子さん、反農薬東京グループの辻万千子さん。林野庁からは加藤造林課長、梶谷森林保護対策室長他十数人が出席。また、福島県から矢吹森林整備課課長補佐、斉藤潤一同森林保護係長、岡山県からは本山岡山県農林部林政課課長補佐、浜田同技術参事が出席し、それぞれの立場から意見を述べました。
 林野庁は千葉県の九十九里浜海岸の松林と大分県中津市の大新田の松林、さらに鹿児島県の沖永良部島の松林を例にだし、カラーコピーの写真を示して、空中散布をしていない区域は被害率が高いが、空中散布をしている区域では被害率が減ってきていると説明しました。
 しかし、この3ヶ所は空中散布以外にも伐倒駆除を行っており、純粋に空中散布だけの効果とはいえないことが質問でわかりました。林野庁は「空中散布で抑制し、枯れた木は伐倒駆除するのは当然」と答えましたが、そもそも農薬空中散布の効果を検証するためのデータに伐倒駆除をした後の写真を提出するのは明らかにごまかしです。
 また、どのくらい枯れたか実数を数えることが可能な海岸林で、わざわざ被害率を抽出で出すなど、作意が見られます。厳密な抽出調査でなければどうしても主観が入りやすく、都合のいい数字がでてくるものです。一本づつ数えることが可能な区域ならば、数える方が科学的なのはいうまでもありません。
 大分県の大新田の松林は写真でみると、海岸に沿って紐のように10ヘクタールの松林が伸びていますが、一方は海岸、一方は田んぼで松の木がない。こんなところでわざわざ農薬空中散布を続けていたわけです。農薬空中散布はマツノマダラカミキリを殺すために行われるものですから、ここはどこからマツノマダラカミキリが飛んでくるのかという質問に、林野庁は、空散をしていない端っこに工場があり、ここに松が少し生えているのでここから飛んでくるのではないかと苦しい弁明をする始末。それなら、そこの被害にあった松を伐倒すれば、感染源がなくなり松枯れが防げるし、無駄な空中散布をしなくてもすむのではないかとの指摘には回答はありませんでした。
 島根県で空中散布反対運動を続けている渡部さんは、出雲市が今年の1月に「空散はこんなに効果がある」として出してきたカラー写真を同じ場所を調査し、伐倒駆除のきり株を写真にとって「空中散布をした後、枯れている松は伐倒して、それが空中散布の効果だとした出雲市のやりかたを批判しました。
 また、松枯れはその区域のある一定のところ(主に山裾)から始まります。山頂に空中散布をして、山裾はしてないとした場合、空中散布をしているところはまだ枯れていないので青々と見えるでしょう。しかし、時間が経てば山頂まで枯れるかも知れません。このような写真では本当のことはわかりません。
 これまで特措法延長の際に、林野庁はこうした空中散布区域と空中散布を実施してない地域のカラー写真をつくり、空中散布は効果があるとの証拠としてきました。しかし、空散区域の枯れた木は伐倒しておいて、末実施区域は伐倒しないで写真を撮れば、いかにも空散の効果があるかのような写真になります。今後、林野庁は空散の効果として、この種の写真を使うことはやめるべきです。
 そもそも、何のために空中散布をしているかと言えば、林野庁はマツノマダラカミキリの成虫を殺すためにやると言っているのですから、効果があるかないかは、マツノマダラカミキリが何匹死んだかという調査をすべきです。それが効果確認の手法でしょう。
 しかし、不思議なことに林野庁にその調査を出してくれと要求すると、1979年の拾い取り調査の結果しか出しません。ここでは幅2メートル、延450メートルの路面で6月9日から7月23日までの拾い取り調査でマツノマダラカミキリ落下個体数は合計44頭であったとされています。これしかやってないのでしょうか。市民グループが独自に拾い取り調査をするとマツノマダラカミキリは一匹も見つかっていません。
 さらに、空中散布後の「薬剤防除安全確認調査」が9県で行われています。この調査は自然環境におよぼす影響調査という項目があり、中には昆虫類の調査(生息密度、斃死昆虫調査など)もあります。こういう調査ではさぞかしマツノマダラカミキリの死骸が多く見つかるだろうと思われるのですが・・
 兵庫県が実施した平成6年度の斃死昆虫類集計表によると、散布前と散布後5回の調査をしています。散布前には9種類219個体の斃死昆虫ですが、散布後二日目に10種類、3774個体が見つかっています。散布後の斃死昆虫の合計は16047匹です。どういう虫が死んでいるかといえば、一番多いのがハエで次がハチ、コウチュウとなっています。カミキリ虫類はコウチュウに入りますが、どんなに目をこらしてみてもマツノマダラカミキリは斃死昆虫に入っておりません。他のカミキリ虫もいないのです。この調査ではマツノマダラカミキリはムシするのでしょうか。
 いずれにしても、今回の勉強会でわかったことは、農薬空中散布だけの効果を示すデータを林野庁は出せなかったということです。出てきたのは枯れた松の切り株でした。

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作成:1998-04-01