内分泌撹乱物質にもどる
t05105#「私たちの奪われた未来」−内分泌系撹乱化学物質の危険性#96-06
 てんとう虫情報30号のこの欄でホルモン類似のエストロゲン様化学物質の環境汚染と人体への影響について紹介しましたが、アメリカで、本年3月に発刊された「Our Stolen Future」(私たちの奪われた未来)という書物で、この問題がさらに詳細に取り上げられました。同書は、WWF(世界野生生物基金)のTheo Colbornら3人の共著によるもので、内分泌系を撹乱する化学物質(EDCと略称する)の危険性を、科学的な立場から警告したはじめての啓蒙書で、マスメディアでも取り上げられ、環境保護団体、化学業界、環境行政らにおおきな波紋を投げかけています。
 内分泌系を撹乱する物質として、合成ホルモンDESのほか、DDT、PCB、ダイオキシンらおなじみの有機塩素系化合物、農薬では、殺菌剤ビンクロゾリン、ベンレート、除草剤アトラジンなど、また、よく使用される化学物質であるビスフェノールA(プラスチックの一種であるエポキシ樹脂やポリカーボネートの原料。ポリカーボネートは、コンパクトディスクの基板や哺乳ビン、エポキシ樹脂は缶詰め用内層コーティング材などの用途がある)、非イオン系界面活性剤であるアルキルフェノールポリエトキシレート(農薬や塗料、クリーナーなどに使用)、塩化ビニル樹脂用のフタレート系可塑剤などがあります。
 動物実験や野生生物の調査で、これら内分泌系撹乱物質(EDC)が繁殖率の低下や雌雄の比率の変化の原因となることが指摘され、人に対しては、乳癌や生殖器癌、生殖器の奇形、精子の奇形や数の減少などに関連するのではないかと考えられるため、このままその使用を放置しておくと、人類の未来も危ういのではないかとの警告が発せられています。
 化学業界は、植物系エストロゲン物質(大豆、リンゴ、パセリ、小麦、コメ、その他の農作物やコーヒー、ウイスキーなどに含まれる)の方が、合成化学物質よりも影響が大きいと、反論していますが、今後、内分泌系撹乱物質(EDC)について、科学的な調査研究を行なうとしています。
 アメリカでは、5月に化学業界・農薬業界・学術団体・行政・環境保護団体らの代表が話し合った結果、ある種の化学物質が、魚類や野生生物、そして人に対しては限られた範囲で、内分泌系を撹乱する原因になっているというコンセンサスが得られ、内分泌系撹乱物質(EDC)のふるいわけのための戦略をたてる共同パネル設立の方向が打ち出されました。
 日本でも、通産省の委託を受けた日本化学工業協会が専門の委員会を設置し、情報収集、実態解明の調査研究に乗り出すとのことです。
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作成:1998-04-01