室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t05501#建設省が中心の健康住宅研究会に要望書−シロアリ駆除剤も検討すべき・被害者の声を聞け#96-10
 室内化学物質汚染が問題になってきたため、建設省が中心の4省庁と業界団体などが「健康住宅研究会」を発足させ、96年度中に建材選択に当たってのチェックリストを、97年度には「健康住宅設計:施工ガイドライン」を設定すると報道されています。96年7月に発表された「健康住宅研究会調査企画書」を読むと、本当にこれで健康被害が防げるのか疑問に思います。特に、被害が一番深刻なシロアリ駆除剤に関して十分な検討がなされるのかすら不明なため、反農薬東京グループは以下のような要望書を提出しました。なお、健康住宅研究会の企画と問題点に関しても紹介します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
要望書
 私たち反農薬東京グループは、農薬及びその関連物質の環境汚染による生態系や人の健康への影響を危惧して、できるだけ有害な化学物質を身の回りからなくすよう運動をしている市民団体です。中でも、室内化学物質汚染に関しては、早くから警鐘を鳴らし、問題提起をしてきました。
 私たちのもとには、シロアリ駆除剤をはじめとする化学物質の室内汚染で、深刻な健康被害を受けた多くの方々から相談がきており、建設省・住宅金融公庫・住宅都市整備公団・個別の建築業者らに対して、数々の要望を行なってきました。そのうち、いくつかは改善がみられましたが、一市民グループの運動で解決出来ない問題も残っています。
 この度、貴研究会が室内汚染対策のガイドラインを作成するために検討を始めたと聞き、喜んでおります。
 しかしながら、今年7月に出された貴研究会の「調査企画書」を拝見して、一番、被害が深刻なシロアリ駆除剤による室内汚染の問題が十分検討されないのではないかとの危惧を持ちました。また、貴研究会のメンバーが行政と業者中心で、被害を受けた人や、市民運動や消費者の代表が一人もいないのは問題ではないかと考えます。
 そこで、下記のことを要望したいのですが、よろしくご検討ください。
        記
1.シロアリ駆除剤が人体に与える悪影響の調査をしてほしい。そのために、被害者の
  話を聞く機会を設けてほしい。
2.シロアリ駆除剤や建材による健康被害を受けた場合、相談に応じる行政の窓口を設
  置するような体制を整えてほしい。
3.シロアリ駆除剤をはじめとする有害化学物質による室内汚染を規制する法律を作っ
  てほしい。
4.委員会に被害者や、市民運動のメンバーをいれてほしい。

 11月30日までに要望書の回答を文書で下さいますようお願いいたします。
以下、健康住宅研究会の紹介です。−略−
★業者のための基準つくりか?
 以上が計画の内容です。研究会の本委員は53名、うち大学関係者が5人、国立の研究機関から3人、建設省7人、通産省3人、厚生省と林野庁からそれぞれ1人で残りの30人は建設省の外郭団体や建設業界です。もちろん、消費者は一人も参加していませんし、室内汚染で健康被害を受けた人からの話を聞くことも予定に入っていません。一番被害を受けやすい女性もいません。この研究会がヒアリングやアンケートを予定しているところは壁装材料協会などの業界団体とハウスメーカーだけです。どうやって被害状況を知るつもりなのでしょうか。
 さらに、委員長の今泉勝吉氏は工学院大学名誉教授となっていますが、木材建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術研究会委員長となっており、日本しろあり対策協会発行の「木材建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術指針・同解説 改訂版」の編集に携わっている人物です。
 室内化学物質汚染で最も被害が深刻であるシロアリ駆除剤について、この研究会がどこまで検討するのか疑問です。建材からの揮発物質のみということで、シロアリ駆除剤ははずしてしまう可能性大です。
★あちこちで検討しているが…
 ところで、健康住宅というキーワードは各省お気に入りのようで、今までにもいくつかの研究がなされています。まず厚生省は「快適で健康的な住宅に関する検討会議」というところで平成9年度末を目処に室内の微量化学物質が人体に与える影響を調査しているということです。座長は日本大学医学部公衆衛生学教授の野崎貞彦氏。こちらのメンバーには保健所や病院、主婦連などからも参加しています。しかし、建材からの揮発物質のみに限っているため、被害の大きいシロアリ駆除剤は検討していないとのこと。厚生省のこの検討会議と建設省の健康住宅研究会との関係ははっきりしていません。
 また、建設省は今回の健康住宅研究会の事務局になっている(財)住宅・建築省エネルギー機構へ88年から委託研究をしています。この委託研究は健康住宅のイメージや対応状況を明らかにし、設計・施工に関わるガイドラインやマニュアルの整備を促進したとのことですが、「当時は化学物質による室内汚染が今ほど認識されていなかった」ので、マニュアルにおいては、室内環境としては音・光・温熱環境が中心だったとのことです。今回、健康住宅研究会の事務局を担うことになる財団としてはお粗末です。
 さらに、住宅都市整備公団は95年度から「建築材料に添加される化学物質の健康への影響を含め、集合住宅と健康の関係に関する研究」を行っているとのことですが、その詳細については要求しても出そうとはしません。
 このように雨後の筍のように健康住宅の研究や検討会議がありますが、これらと今回の健康住宅研究会との関係はもうひとつはっきりしません。せっかく4省庁が集まっているのならば、厚生省が人体への影響を調査し、建設省や通産省がそれを受けて建築材料や室内汚染に関わる化学物質の削減のための方策を練るくらいはやってほしいものです。そして、業界のための基準やマニュアルではなく、人々の健康を守るためのそれを作成してほしいものです。

購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:1998-04-01