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t06504#環境汚染による子どもの健康への影響についての宣言−8ヶ国環境大臣会議#97-06
 去る5月7日(夕)から5月8日付けの各新聞に、『乳幼児を基準に環境政策』という見出しで、アメリカのマイアミで開かれた8ヵ国環境大臣会議(日本も参加しているが、大臣代理の姿もなく、環境担当大使と環境庁部長他が出ただけ)で、環境汚染による子供の健康への影響が討議され、乳幼児を基準にした環境規制をとるべきことや内分泌系撹乱物質の問題などが宣言文におりこまれたという記事がでました。
 その後、アメリカで開催されたデンバー・サミットでも、この宣言の主旨が反映された共同声明が発表されました。
 日本の環境行政は、いままで、子供を基準にした環境規制をなどという発言をしたことはありませんでした。それどころか、例えば、母乳からのダイオキシン摂取量が環境庁の設置した健康リスク指針値5pgTEQ/kg体重を越えていても、それは、母乳を飲む一時期にすぎないから、生涯を通じては、問題ないとの態度をとってきました。マスコミも内分泌系撹乱物質については、ほとんど報道して来なかったため、今回のこの新聞見出しは、いかにも唐突に思えました。
 乳幼児や子供を基準にした環境対策についての必要性は、以前からいわれており、アメリカで1980年に出版された、クリストファー・ノーウッドの『AtHighestRisk』(綿貫礼子・河村宏訳『胎児からの警告−危機に立つ生命環境』)にも、鉛やダイオキシン、DBCPほかの生殖系毒物や放射線の問題が触れられていましたが、昨年3月テオ・コルボーンらがその著『OurStolenFuture』で最近の研究をもとにして、ダイオキシンや農薬、プラスチック関連物質が内分泌系錯乱物質として作用し、野生生物やヒトの生殖系などに影響を及ぼす危険性を警告したのを契機に、アメリカでの、さらには先進国での環境政策として、取り上げられだしたわけです。
 内分泌系撹乱物質など所詮、化学物質漬けの先進国の傲りの中での対策にすぎない。途上国での飢えや劣悪な衛生環境による子供たちの危機を救うことにまず、力を注ぐべきだとの声も聞こえそうですが、先進国での化学物質汚染が地球規模の汚染につながること、また規制された化学物質や廃棄物が途上国に送り込まれることを考えたら、この問題は、グローバルな広がりをもっており、自国内での規制とともに、それが、外国へ輸出されないこともおさえた視点で対応していく必要があるでしょう。
 有害物質の環境基準だけでなく、わたし達は、いままでも、農作物の残留農薬について、NRC(全米研究会議)発刊の報告書『乳幼児及び子供の食べ物中の農薬』が提起している問題点を、てんとう虫情報20〜23号に連載の形で紹介し、健康な成人男子に対するADIをもとにした厚生省の農薬残留基準値の設定を批判してきましたが、この宣言文を読み、その内容が、一刻もはやく実現されるよう、行政に対する働きかけを強めていく必要性を感じています。もちろん、緊急出版した『ダイオキシンが未来を奪う』も母乳汚染をなくすことが、究極の目的ですので、おおいに活用してください。
 なお、『OurStolenFutre』の翻訳本は、8月に翔泳社から、長尾力訳『われらが奪われし未来』(仮題:予価1700円)として出版されるとのことです。当グル−プでも、次号から、内分泌系錯乱物質の問題を連載の形で、取り上げていくつもりです。 以下に、環境庁から、取り寄せたマイアミ宣言を紹介します。
 宣言文では、鉛暴露、飲料水の微生物汚染、タバコの煙(受動喫煙)、地球気候変動らの子供の健康への影響についても触れられていますが、そのうち、前文の一部と環境基準の設定、室内外の大気環境の質、内分泌系撹乱物質の項を以下に資料として転載しておきます(環境庁報道資料宣言文参照)。
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作成:1998-04-01