室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t06801#厚生省・建設省−シロアリ駆除剤クロルピリホス使用中止を求める要望への関係団体からの回答#97-09
 本誌67号でお知らせしましたが、アメリカでは、シロアリ駆除剤として多用されている有機リン系殺虫剤クロルピリホスのいくつかの用途での使用自粛が、EPAとメーカーなどの間で合意されました。これに伴い、反農薬東京グループはその詳しい内容の調査と日本でも使用中止するよう求めて関係団体に要望書を提出しました。
 現在までに回答があったのは、クロルピリホスの原体メーカーのダウ・ケミカル日本(株)ダウ・エランコ事業部門、建設省住宅生産課、厚生省生活化学安全対策室、健康住宅研究会の4団体です。建設省、厚生省は文書回答ではなく、口頭での回答でした。
 以下に、回答を紹介します。
質問1、アメリカでのクロルピリホスによる人体被害、健康への影響についての苦情報告を知らせてください。
回答
★ダウ・エランコ
 健康への影響に関するクレーム報告状況(米国)に関して
 クロルピリホスがその使用をEPAにより許可されて以来30年以上が経ち、現在では年間2000万軒以上の家屋において、広く使用されております。その間に健康問題に関して様々なクレームの報告を受けています。そして、これらのクレームは米国のEPAに報告され、EPAによる調査検討がなされております。
 これらEPAにより調査検討されたクレームは、公平かつ中立の立場からなる専門家で構成される前述のブルー・リボン・パネルにおいても検討され、”クロルピリホスには人に対して健康問題を引き起こす懸念はない”と結論づけています。またカリフォルニア州における州規制関係者の間でも、これらのクレームが調査検討され、その結果、特に何等かの対策をとる必要はないとしています。
 なお、10項目にわたる自主規制及び推進計画は、これらEPAによる調査検討の結果も考慮にいれた上で、EPAとダウ・エランコとの合意のもと発表されたものです。
★建設省=私どもは把握しておりませんので厚生省に伝えてあります。
★厚生省=アメリカでの話は現在のところ、詳しい資料はもっていない。これから情報をもっていそうなところにコンタクトしてと思っている。
★健康住宅研究会=回答なし
質問2、アメリカでは、クロルピリホスのシロアリ駆除剤や合板接着剤としての使用状況はどうなっているか。その実態と今後の規制への動きを教えてください。
回答
★ダウ・エランコ
EPAとダウ・エランコ社の合意点に関して
 米国においてダウ・エランコ社とEPAは、1997年1月15日、クロルピリホスの安全使用を徹底するため、下記の10項目の自主規制及び推進計画につき合意に達しました。
 1、ノミ防除のための屋内全面散布薬剤の販売自粛
 2、屋内での全面噴霧処理用薬剤の販売自粛
 3、塗料添加物用途への販売自粛
 4、ペット用直接処理用品への販売自粛(シャンプー、液浴剤、スプレー)
 5、隙間処理等一般家庭で高用量で使用される用途では、居住者、ペットへの一層の保護を目的とした対策を講じるため、不適切な場所での使用を禁止する文言のラベルへの記載、さらに防除業者が遵守すべき事項の追加
 6、適切な再処理間隔をラベルへ記載すること
 7、シロアリ防除剤として不適切な使用が行われた場合、これによって起こる可能性のある暴露を防止するため、ラベル記載事項を変更
 8、これら対策に関して、防除業者の教育、研修の推進
 9、疫学調査を行い、また、試験計画の科学的指針を提出するためのブルー・リボン・パネルを設置(ブルー・リボン・パネルについては後述)
 10、クロルピリホスに関連するとして報告された事故をモニターするため、ミネソタ大学の中毒防止センターのスチュワード・シップ・プロジェクトを継続する
 上記10項目でありますが、これらは、クロルピリホスの全ての屋内使用を規制したものではありませんし、書簡にある”人の居住地区での使用禁止”との理解は、事実に反しております。更に、付け加えますと、米国EPAは、公的に、他の殺虫剤でも屋内使用による暴露を低減する方策を講じると述べております。
 注*シロアリ防除剤としてのクロルピリホスの使用に関しては、不適切な使用が行われないよう配慮したうえで、継続して行われます。
 *上記の10項目のなかに述べられている屋内使用1〜5(ノミ防除全面散布等)は日本では行われておりません。
★建設省
 健康住宅研究会を昨年の7月に発足させまして、厚生省、通産省、林野庁といった関係省庁の参加協力を求めております。さらに学識経験者、関係団体の方々がお入りいただいています。医学界からもお入りいただいております。この研究会の中で、住宅室内における化学物質の健康への影響と、提言するために対策などについての調査研究を続けています。現時点において、アメリカでの実態を把握しておりませんので、お申し越しの件につきましては、関係省庁とも協力しながら研究会において調査しまして、その成果がまとまった時点でお知らせしてゆきたいと思っております。現在のところ、詳細なデータを把握しているわけではありません。
★厚生省=建設省に聞いて見たが、向こうから入った情報を聞きかじったら、ペット用シャンプーなんかが販売自粛になっているらしいと。それからシロアリについては表示をしっかりするようにという話だと聞いていることくらいだ。うちとしても聞いてみようと思う。公表されているものであればそんなに難しくはないと思う。EPAに当たるか、別のルートに当たるかは決めてない。情報が入ったら出せる情報であれば出す。公表されてないと難しい。時間は数ヶ月みていただきたい。インターネットでひけるんであれば簡単だが。インターネットであるのならそちらでも調べてほしい。
★健康住宅研究会
 クロルピリホスに使用用途変更申請について
 ダウ・エランコ社等の農薬製造業者が米国環境保護庁に申し出たクロルピリホスの取り下げは、屋内でのノミ防除用途、屋内での散布用途、塗料添加、ペット用品であり、防蟻剤としては今後も使用されますが、EPA(米国環境保護庁)は適切な使用を促すため使用方法に関する表示の変更を検討しています。
質問3、日本でのクロルピリホスによる人体被害、健康への影響についての苦情報告を知らせてください。
回答
★ダウ・エランコ
健康への影響に関するクレーム報告状況(日本)に関して
 当社及びレントレクの製剤メーカーで調査した過去3年強(1994〜1997の春まで)でのクレーム件数及びその内容は以下の通りです。当社としましてはこれらクレームに対し、その都度真摯に対応するべく関係者(防除業者、メーカー及び弊社社員)を指導しております。
調査対象薬剤:クロルピリホスを防蟻成分とした乳剤製品(主に土壌処理剤として使用)及び油剤製品(主に木部処理剤として使用)
クレーム総件数:29件
クレームの内容(重複内容を含む)
 臭気が気になる             19件  頭が痛い                15件  気分が悪い               10件  目が痛いあるいは目がちかちかする     7件  喉が痛い                 6件  疲労感                  4件  湿疹、かぶれが生じた           6件  咳き込む                 1件  その他                  4件
この調査の対象期間内に、上記対象薬剤は、新築、既築あわせて推定ではありますが、総戸数60万戸の家屋のシロアリ防除に使用されたと思われます。
なお、使用製品(製剤)と健康への影響に関するクレームとの関連を調査した結果、低臭(無臭)性薬剤による施工では健康への影響に関するクレームはありませんでした。
★建設省
 建設省の方で直接苦情を受け取ったということはありません。これも厚生省さんに伝えてあります。
 ただ、財団法人ベターリビングの方に、住宅部品PLセンターがございます。そちらの方で、こういった苦情があるかどうかをお伺いしましたところ、シロアリ防除に関連する苦情は2件受けている。しかし、これがクロルピリホスによるものかどうかはちょっと突き止められなかったということです。
★厚生省
 特別に健康被害を受けたというのは直截には把握していない。97年7月以降、私はここにいるが、これからシロアリ駆除をするけれどどんなことを気をつければいいかという問い合わせは2回ほど受けた。業者にお客さんの方から情報を教えてもらうとか、使い過ぎないようにとか、国民生活センターの報告を知っているかとか詳しく聞くように答えた。シロアリ駆除をして気分が悪くなったと言うことはうちの課で把握していない。逆に、そちらの会でもっと広い情報があるのなら、聞かせていただきたい。
★健康住宅研究会
 日本におけるクロルピリホスによる人体被害・健康影響に関する苦情報告について (財)ベターリビング住宅部品PLセンターでは、シロアリ防除に関連する危害情報をこれまでに2件受け付けています。しかしながら、クロルピリホスを要因とするものか否かは不明です。研究会として特に調査は計画していませんが、引き続き情報収集をしていきます。
質問4、大阪大学医学部の研究者によると、有機リン剤の解毒作用の人種差について、日本人の場合、解毒作用の弱い酵素を有する人の比率が欧米人に比べて高いとのことですが、クロルピリホスの人種による影響の違いについては、どうお考えかお聞かせください(添付資料2参照)。
回答−略−
質問5、クロルピリホスをシロアリ駆除剤や殺虫剤として、住宅や合板接着剤に使用することは、人の居住空間に有害な有機リン剤をまきちらし、健康に重大な影響を与えるので、早急にクロルピリホス含有薬剤の製造・販売・使用を中止してください。
回答−略−
質問6、クロルピリホスによる防蟻処理された家屋の居住空間は、同剤によって汚染されている可能性があります。汚染状況を正確に把握するために、早急にクロルピリホスによる室内空気汚染調査を広範に実施してください。
回答−略−
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作成:1998-04-01