空中散布・松枯れにもどる
t07401#空中散布後農薬気中濃度「評価値」で、環境庁交渉−疫学調査、子供・化学物質過敏症・環境ホルモンは無視#98-03
前号でお知らせしたとおり、農薬空中散布反対全国ネットワークを始めとする市民グループは、3月5日に農薬空中散布後の気中濃度評価値に関して、環境庁と交渉しました。
環境庁は昨年12月、「航空防除農薬環境影響評価検討会報告書」(以下「報告書」)を発表し、農薬空中散布後の大気中の農薬について、これ以下なら、健康に被害を与えないという数値(評価植)を示しました。しかし、その値は動物実験から最大無作用量を出し、それに安全係数をかけただけの機械的なものでした。実際に被害を訴えている人々を無視し、私たちが長年要求している健康調査すらしていません。3月5日の交渉はそうした問題点を話しあいましたが、環境庁は私たちの要望に応えようとしませんでした。今後も各地での粘り強い違動が必要です。以下、交渉内容を報告します。
★わからないから健康調査はしないと回答
まず、環境庁に予め出しておいた質問(前号掲載)に対する回答を求めました。最初は、なぜ、健康被害調査をしなかったのかという質問です。
環境庁土壌農薬課の西尾課長は、「評価値は動物実験の結果から摂取の許容量を求めて、実際摂取している量と比較するやり方で求めた。これは残留農薬などの評価でも使われている手法だ。周辺住民の健康被害については、いくつかの市民団体のアンケート調査の結果、例えば、皮膚のかゆみだとか、喉の異常感を訴えているという報告があることは知っている。しかし、農薬の空中散布と自覚症状の関係が疫学的にどうなのかという点に関しては、専門家の中でもいろいろな議論がある。環境庁としては、健康被害を未然に防止する観点から、散布地のみ直しとか、散布のしかたなどで対処しようと考えている」と回答しました。
なぜ、私たちの意見を聞かなかったのかという質問の趣旨がわかっていないのではないかとの指摘に、西尾課長は重ねて、医学の専門家の評価が定まっていないとしか答えませんでした。
少し、引用しましょう。
★環境庁のやるべき仕事を放棄している−略−
★なぜ彦坂論文の評価をしないのか
質問3の空中散布後の健康影響調査に関する論文を検討したかどうかについて、もう一度、植村さんが以下のような質問をしました。それに関連するやりとりです。
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植村:委員会の先生方が、認めるかどうか別としましてね、公衆衛生学雑誌に、ずいぶん前に、彦坂先生たちがデータを使って、飛散量と症状をまとめた論文がでています。それはこれまでの環境庁の農薬の人体への影響を論じる場合に、ほとんど議論されていない。私はね、この論文がだめな論文ならだめだと、現時点でこの論文は採用できないというようなことをちゃんと評価すべきだと思うんですよ。それを黙っていてね、知ってますとさっきおっしゃったけれども、黙って逃げるなんて卑怯ですよ。
どうして卑怯かというと、唯一、農薬による健康被害を公衆衛生学会で指摘した論文なんです。それなら何故、これをどう扱うかということをはっきりいわないのか。委員の中には、公衆衛生の先生もいるんだから、きっちりさせるべきなんです。それを黙っていて、自分たちに都合のいい基準を設けて、影響がないっていう言い方は、おかしいですよね。学会誌に出された論文には、影響があるとでているのに、自分たちの基準以下だから問題ないなんて、平気で述べるなんて、それを行政が鵜呑みにするなんて、これはちょっと間違っていませんか?
西尾(環境庁):これも私どもも見ていますが、先程と同じように、いろいろ意見が分かれているんじゃないかということから、ま、評価してないというのではなくて、今、ここでわれわれがとったやり方で、動物実験から評価するというやり方を選んでいったわけです。ちなみに、動物実験のなかには、例えば、人に対して投与しているのも入っています。
植村:人に対するデータを使ったとおっしゃったけれども、その論文は、ボランティアの人が飲んだ実験結果なんですよ。あるいはそういうボランティアの人はもっと健康な人かもしれない。毒を飲んでも死なないような人間かもしれない。そういう限定された人たちの実験データを用いながら、何故、不特定多数の人たちが、ある意味では被験者になったような事例を採用しないのかということを言いたいのです。それの方が大切じゃないの。
西尾(環境庁):例えば、マウスならマウスを使う、そういうときにでてきた一番高濃度で影響のない動物を出して、それを評価する段階で、何段階も安全性を見越しています。
植村:それはね、人での調査がないときに取る便宜的な手法なんですよ。現実に、被害を受けている人がいるじゃないですか。
岡崎(議員):確かに、人で実験できないときに、動物を使うことはあるでしょうけれども、どうしてその被害があるという人の立場に立たないのかが不思議なんです。
槌田(市民団体):彦坂先生と一緒に測定をしたので、言わせて欲しいんですが、極めて、簡単な実験なんです。水田に空中散布されたときに、風上と風下の人たちがどうなったのか、ほんとうにお金のかからない実験ですね。それを何遍もくり返して欲しいんです。環境庁のかたに。で、上と風下で違いがなかったのなら、影響はなかったと環境庁のかたにいっていただいてかまわないです。だけども違いがあったときには、その時に、環境の測定値はどうだったのか、そういうことから評価値を決めて欲しい。それがみんなの気持ちなんです。動物ではなくて、もう現実の被害がこれだけあるんですから、風上と風下の違いということだけ、その点にしぼって疫学調査をしていただければ、いいんじゃないかと思うんです。
−以下の節略−
★専門家が言うからと責任逃れ
★化学物質過敏症についてもわからない
★子供への影響や環境ホルモンも無視
★まとめ
最後まで、環境庁土壌農薬課はこの調子でした。結局、私たちの要望の(1)早急に農薬空中散布周辺住民の健康に関する疫学調査を行うこと。(2)その結果がでるまで「評価値」は凍結すること。は、拒否されました。
この交渉で明らかになったことは、環境庁が農薬空中散布にお墨付きを与えるために、評価値へのあらゆる批判を受け付けず、強引に押し進めようとしていることです。資料の公開すら応じようとしません。環境庁がこうした姿勢を取り続けることがどこまで可能なのかは、ひとえに私たちの運動にかかっています。
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作成:1998-04-01