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t07606#国民生活センターが注意情報−急増するシックハウス症候群#98-05
 前号では、国民生活センターが実施した「健康住宅に関する調査」を紹介しましたが、今号では同時期に発表された、「急増する“シックハウス症候群”」(消費者被害注意情報)を取り上げます。 なお、これは、各地の消費生活センターに寄せられた苦情・被害を取りまとめ、分析したものです。
★参考:国民生活センター資料
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★被害はここ3〜4年急増している
 シックハウス症候群とみられる症状は1987年4月から98年3月末までの11年間に449件報告されている。年度別にみると(下図省略)87年度には6件であったが、94年度以降増えはじめ、96年度は136件、97年度は集計途中にもかかわらず158件とこの3〜4年急増している。
★被害は、女性が男性の2倍
 症状が出た人は、女性307人、男性125人で、男女とも30〜60歳代が多い。全体の6割が、家事従事者、無職など家にいることが多い人である。
★被害の詳細
1.眼への障害が多く、複数の症状が出ているケースが多い「体調が悪い」といった漠然とした申し出や「化学物質過敏症になった」というだけで詳しい症状がわからないものが多い。具体的に症状を訴えているケースでは複数の症状が出ている場合が多い。具体的な症状は以下のとおり。
・眼がチカチカする等「眼の障害」211件 ・頭痛92件  ・「のどの痛み」76件
・皮膚などの刺激65件            ・気管支、肺などの呼吸器障害57件
・嘔吐、吐き気がするなど「胃腸への障害」40件
・鼻がつまる、痛いなど「鼻の障害」39件 ・めまい15件
・精神状態不良13件          ・疲労感がある10件
2.入居直後に症状が出た人が多い
・入居直後250件   ・建築中や引越し前の準備で住居にいった時28件
・暑くなってから7件 ・部屋を閉め切ったり、暖房するようになってから6件
3.医者にかからない人が多いが、症状は長引いている
・「医者にかかった」は68件。「医者にかかっていない」のが171件(125件は不明)。
・「医者にかかった」68件のうち、症状が1ケ月以上続いたものが35件と半数を超え、「1週間未満」20件、「1〜2週間」6件、「3週間〜1カ月」4件と続く。
・「医者にかかっていない」171件をみても、「1〜3カ月未満」16件、「3〜6カ月未満」8件、「6カ月〜1年未満」7件、「1〜3年未満」10件、「3年以上」は7件あり、このうち長いものでは10年というものがある。
4.症状が出たため、引っ越した人もいる症状が出たあとどうしたかわかっているものは少ないが、わかっているものは、
・引っ越したり、住まいを移した13件  ・業者が改装などをやり直した9件
・住まいに入居せず様子をみた4件などである。
★原因
1.原因となった建築資材は壁紙・合板等
原因が建築資材であると思われるものは176件。内訳は、合板(フローリングを含む)53件、壁紙やその接着剤52件、畳(畳屋が使用した畳用防虫剤を含む)30件などがある。
2.原因物質は、ホルムアルデヒドが断然
 ホルムアルデヒドが原因と疑われるものが118件と多い。消費生活センターや建築業者のテストなどで「原因物質はホルムアルデヒド」と確定できたものは少ないが、22件はホルムアルデヒドが測定され、このうち、その量が我が国の室内濃度の指針値などからみて濃度が高いと判断されたものが10件を越えていた。
3.シックハウス症候群増加の背景は、住宅の高気密化、清潔志向など
 シックハウス症候群の増加の背景には、住宅の高気密化、高断熱仕様などの新建材の普及がある。また、清潔志向が進み、賃貸住宅でも改装した上で入居することが多くなっていることなどもある。この他、アレルギー症の人が増え、その改善のために使用した防ダニ処理資材やフローリングが新たな被害を招いている場合もある。
★消費者へのアドバイス
1.シックハウス症候群から身を守る住まい方
・買う前の注意が大切。アレルギー体質 や臭いに敏感な人は、ホルムアルデヒドの使っていないものを選ぶ。換気性や湿気対策も確認する。・換気に努め、臭いがしなくなってから 入居する。・防虫、防カビ剤など、化学物質に頼ら ない生活を心がける。
2.シックハウス症候群の症状が出たら
・住宅を離れると症状がよくなるという 場合は、シックハウスを疑ってみる。風の道ができるよう、家具の配置等も考え、意識的に換気に努める。
・換気だけで解決できないほど濃度が高い場合は、ベイクアウト(室内温度を上げ、揮発物質を減少させる)や改修、引っ越し等も考慮する。ただし、その解決方法に効果があるか実行前に十分検討すること。
・業者に対応を求めたい場合にはすぐにホルムアルデヒドなどの濃度を測るなり(保健所等で対応している場合もある)して、問題があれば、設計図、家族の症状や診断書などを添えて、消費生活センターなどに相談する。
・原因がホルムアルデヒドとはっきりしている場合には、ホルムアルデヒドを吸収したり分解する商品(シート、空気清浄器)も出ているので、試しに使ってみて効果をみる方法もある。
………………………(編集部注)
 反農薬東京グループがパンフ「住宅が体をむしばむ」を発行したのが94年9月ですから、政府関係機関のやることはいつも後追い、という感想を持ちますが、その具体的な数字や症例は貴重なデータと思われますので、少し詳しく紹介しました。
なお、終わりの消費者へのアドバイスのところで、「ベイクアウト」と「ホルムアルデヒドを吸収・分解する商品がある」と頼りなげにかかれていましたが、これは効果は大いに疑問です。それこそ、国生活センターでテストしてもらいたいものです。いずれにしろ、今後は“シックハウス症候群”の被害にあったら、すぐに、消費生活センター、保健所に相談しましょう。

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作成:1998-06-27