内分泌撹乱物質にもどる
t08101#農水省、内分泌撹乱農薬に関する質問におざなりな回答#98-09
−前略−
質問書提出 98年7月7日 回答 98年9月1日
回答者 農水省植物防疫課農薬対策室(口頭)
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 質問への回答の前に、農水省の基本的考え方として、以下のようなことを述べています。
 「農薬は登録時に毒性試験や残留試験をして、それを検査して安全性を確認している。内分泌撹乱物質に関連している試験は繁殖試験、胎児への影響、催奇形性試験などがある。こういうところに特徴的に現れるということなので、そこは安全性は確認されているものと思う。環境庁がリストを発表したが、これは文献の中で疑わしいものをリストアップしただけのことで、そういう作用があると確認したものではない。従って、今すぐ、規制する考えはない。農薬は一応安全性が確認されているが、内分泌撹乱作用は新しい知見なので、今後、調査研究をする」。
 つまり、農薬は毒性試験をしているので安全だ。環境庁のリストの発表はけしからん、今すぐ規制はしない。しかし、予算を取るのに調査研究だけはするというのが基本的な姿勢だというわけです。以下、質問への個別の回答です。

【質問1】内分泌系撹乱農薬について、製造メーカーへの行政指導はなされたか?
【回答】農薬は登録時に毒性試験を行い安全性が確認されている。環境庁がリストアップした農薬は文献の中で疑わしいものとしてあげただけで、内分泌撹乱作用があると確認されたものではない。従って指導はしていない。

【質問2】内分泌系撹乱農薬についての文献調査について
【回答】今、われわれのほうで当たっている。調査をしている段階。

【質問3】日本で、使用規制されたり、未登録又は登録失効している内分泌撹乱農薬について、他国での使用状況、国別の実態はどうか。
 日本では、POPs(残留性有機汚染物質)系農薬を現在製造又は販売・使用中の国に対して、製造・販売・使用をやめるよう働きかけをしているか。
 外国で、POPs系農薬を製造している日本の合弁会社はあるか。
【回答】外国のことは調べていない。POPsについては各国の考えがあるので、こちらから規制するよう働きかけはしない。そういうものが使われているかどうかもわからない。日本の合弁会社については、われわれが承知している限りはない。

【質問4】使用規制されたDDT、BHC、2,4,5−Tなどが埋設処理されたが、その後実態がどのようになっているか。
【回答】使用禁止になった時点で適切に処分していただきたいとお願いしている。その後は、必要に応じまして、目でみて異状がないか適正に管理していただきたいとお願いしている。各県で適切にやっていると思う。問題があったという話は聞いていない。2、4、5−Tにつきましては林野庁が適切にやっていると思う。

【質問5】リスト以外にも内分泌撹乱作用のある農薬があると考えられるが、今後、どのような手順で、これらを調査し、規制していくのか。
 また、その際、農薬活性成分中の不純物や分解代謝物、さらには、製剤に添加されている不活性成分について、活性成分と同等の毒性試験をするか。
【回答】新しい知見なので調査研究を含め対応してゆきたい。

【質問6】リストアップされている内分泌撹乱農薬については、発ガン性や生殖毒性を示すものがあり、安全性が確認されるまで、すべて、一時使用中止措置をとるべきだと考えるが、どうか。
 また、登録失効した内分泌撹乱農薬については、製品を回収し、国内での使用禁止・海外への輸出禁止措置をとる必要があると考えるが、どうか。
【回答】登録時の試験で安全が確認されているので今すぐ、規制することはない。そもそもリストアップされた農薬そのものの性格がはっきりしないので、今すぐ回収したり、輸出禁止ということも今すぐやることはない。失効した農薬は海外に輸出されるということは考えられない。

【質問7】ノニルフェノールが生成する恐れのあるAPE系展着剤の年間製剤生産数量は、どの程度か。また、農薬製剤の中に、不活性成分としてAPE系の化合物を添加したものがあるか。あれば、該当する農薬製剤名を挙げ、登録農薬毎にその添加量を示せ。
【回答】展着剤の製剤は全体として把握しており、APE系に限った生産量はわからない。個別の農薬の成分については、公表できないことになっている。

【質問8】農薬製剤中に、不純物としてダイオキシン類及びエチレンチオウレアが混入しているものがあるか。その含有量はどれほどか、登録農薬毎に示せ。
【回答】ダイオキシンについては、現在、登録検査のときに毒性のあるダイオキシン(TEFが決まっているもの)は含まれてないということを確認している。従いまして、現在、登録のある農薬に毒性のあるダイオキシンは入っていることはない。エチレンチオウレアについては、一部不純物として含まれているが、毒性試験は原体でやっているので問題ない。製剤名は公表できない。

【質問9】内分泌撹乱農薬のひとつビンクロゾリンの登録が失効したが、失効年月日は何時で、その理由は何か。登録失効したビンクロゾリン製剤について、回収措置はとられているか。
【回答】ビンクロゾリンの登録失効は今年の4月14日。理由は不明。再登録申請がなかったということで自動的に失効した。96年度から原体輸入がゼロだったので回収の必要はない。

【質問10】魚毒性試験については、現在急性致死毒性の評価しか行なわれていない。農薬についても、魚介類の繁殖に関する試験や内分泌撹乱作用を評価できる試験方法をとりいれる必要があるのではないか。
【回答】いろいろ調査研究がやられているので、そういう中で対応していかなければならないと思っている。99年度の予算で内分泌撹乱物質の影響があるのかないのかの調査研究の予算要求をしている。

【質問11】動物実験で、生殖毒性や胎仔毒性が判明した農薬等のリストをあげた。これら薬剤については、内分泌撹乱物質であるかどうかの試験を早急に行なう必要がある。ほかに、動物実験で、発癌性、神経毒性、免疫毒性があるとされている農薬もある。
 そのためには、すべての農薬について、毒性試験の再評価することが不可欠であると考えるがどうか。 また、この際、毒性データを公開して、国民から広く意見を聞くことが必要だと考えるが。
【回答】因果関係がはっきりしていないので調査研究をする。再評価も繁殖試験とか、催奇形成試験をやっているので必要ない。今年度から内分泌撹乱作用があるかどうか、内分泌撹乱作用の判別技術を開発するために、今の試験方法をベースにして開発している。
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★PCNBの製造中止もしぶしぶ回答
 全体的に、どうやって情報を出さないようにするかということが至上命令のようです。例えば、質問8に関連するやりとりを見てください。
【回答】ダイオキシンについて申し上げますと、現在、登録検査のときに毒性のあるダイオキシンは含まれてないということを確認しております。従いまして、現在、登録のある農薬に毒性のあるダイオキシンは入っていることはないです。
【質問】毒性のあるダイオキシンとは何ですか?
【回答】等価係数で現されておりますものの中で、ゼロじゃないものです。
【質問】それじゃあ、CNPの中にあった1,3,6,8−TCDDは入っていてもいいということですね。
【回答】(毒性のないダイオキシンは)普通の不純物管理の中で、チェックしています。有効成分の濃度を高めるというのが企業の活動ですから。
【質問】2,3,7,8−TCDD以外はいいということになるんですか?
【回答】今、フランと合わせて17くらいあると思うんですよ。最近は更にそれにコプラナPCBが入るとか、入らないとかという話がありますが、環境庁の報告の中でTEFというのがでていますね。ああいうものです。
【質問】TEFがゼロ以外のものは入っていないということを確認していると。それは何年からですか?
【回答】50年の後半ですね。
【質問】だってTEFなんてのが出てきたのはつい最近でしょ。
【回答】TEFがもともとあったのは2、3、7、8が一番大きくあったわけで、それにだんだんTEFが決まってくれば、そこで再評価するんです。今、現在は17だったと思うんですが。全部で200いくつあるなかで毒性のあるのが17です。
【質問】コプラナPCBは入っていないんですね。ダイオキシンとジベンゾフランの中でTEFが決まっているものについては、現在、登録されている農薬には入っていない。そういうことですか?
【回答】そうです。
【質問】前からある農薬でも再登録ごとにやるんですか?
【回答】再登録というか、その時点時点でやっています。合成の過程とか、塩素のつき具合とか、可能性のありそうなものについてチェックをし、入っていないことを確認して、新規は登録しますし、古いのはその時点時点でやります。 【質問】古いのを調べて、そういうものが入っていたというケースはありますか。
【回答】それはひとつありまして、登録失効はしていませんが、製造は中止しています。
【質問】何ですか、それは?
【回答】PCNBです。
【質問】へえ。PCNBは登録はあるけれども、メーカーが自主的に製造を中止しているわけですか。
【回答】そうです。
【質問】これは何がでたんですか?
【回答】正確には覚えていないんですが、7塩化物だったと思うんです。検出限界が10ppbなんですが13ppbでてまして、環境庁の昨年の5月だったと思うんですが、ダイオキシンの排出対策抑制検討会報告の中に農薬の部分を分析した表が載っています。そこをみていただくと、その時に環境庁が関心を持たれた農薬を、あれはメーカーに当然やらせたわけなんですが、やった結果、PCNBが、7塩化だったと思うんですが、でまして、メーカーが自主的に生産というか、原体を作っている会社と農薬を作っている会社と違うものですから、農薬を作っている会社に原体の供給をやめますよという話をして、国内の製剤を作っている会社が出荷できなくなった。ちなみに、13ppbの量を原体出荷量に基づいて環境庁が計算したところだと年間TEQ換算で0.06グラムです。ちなみにタバコが16グラム、ゴミ焼却が3000かそのくらいで自動車が0.07だったですかね。そういう表も載っています。ですから量的にはそういった量なんで、決してめちゃくちゃ多いという量じゃないんですが、まあ、メーカーの方はとめたと。
【質問】それはいつからですか。
【回答】去年の9月ですから、今年のシーズンには出てきていないということですね。PCNB自身が前からいろいろあって、だんだん代替剤にということで、量は徐々に減ってはきていたんですがね。

 とまあ、一つづつ聞かないと答えないわけです。ようやくわかったのが、内分泌撹乱物質のリストに載っている土壌殺菌剤で、以前から発がん性や催奇形成が指摘され、キャベツ産地などで大気汚染が問題になっていたPCNBからTEFの決まっているダイオキシンが検出され、メーカーが製造をやめたということです。何故、こういう情報を進んで公開しないのでしょう。聞かれなければ闇へ葬ってしまうつもりだったのでしょうか。
−以下の節省略−
★毒性試験の生データを公表すると裁判に?
★農薬工業会の見解は農水省と同じ

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作成:1998-10-01