内分泌撹乱物質にもどる
t08201#第8回「もうゴメンだ!街の農薬汚染」全国集会開く#98-10
10月18日、東京・品川の国民生活センターで、「第8回もうゴメンだ!街の農薬汚染」全国集会が開かれました。この日は台風10号の影響で開催が危ぶまれましたが、強い雨風も午前中でやみ、午後からは晴れ間が出るという運の良さで、約100名の参加を得ました。
 今年の集会のテーマは、「農薬と環境ホルモン〜真っ先にやめるべきは、無差別農薬散布〜」。反農薬東京グループ発行の反農薬シリーズ13「農薬と環境ホルモン」の発行と合わせた形で集会が持たれました。
 初めに当グループの辻万千子代表が問題提起を行い、「環境ホルモンとして挙げられている農薬は、今まで私たちが問題にしてきた農薬が多い。国・農薬メーカーは、毒性試験のデーターを公開すべき」などと述べました。
次に、「農薬と環境ホルモン−議論よりまず、使用を控えよう」と題して、植村振作氏(大阪大学理学部)が講演を行いました。
植村氏は、OHPを使いながら、身近なところでの農薬使用の危険性をわかりやすく訴えると共に、「何が環境ホルモンかだけに惑わされることなく、化学物質の使用を減らしていくことこそ大切」と強調しました。
この後、各地からの報告に移り、「町内会での薬剤散布の実態」など6件が報告され、最後に、厚生省、農水省、農薬工業会宛ての要望書を採択して、集会を終えました。集会の模様は次号の特集で詳しく報告します。

★厚生省への要望書
 私たちは農薬や有害化学物質の濫用に反対して活動している市民グループや個人の集まりです。本日、「第8回 もうゴメンだ!街の農薬汚染全国集会」に集まり、集会名で以下の要望をいたします。
 私たちは、今国会で成立した「感染症の予防及び患者の医療に関する法律」に対して、人権に配慮する点が抜けている上に、伝染病予防法以来の平常時での衛生害虫駆除が継続されることがわかり、反対してきました。
 法律そのものには平常時での衛生害虫駆除の義務は明記されていませんが、大臣が策定する基本指針には都道府県が責任をもって行うよう書かれるとのことです。
 現在、行われている平常時での衛生害虫駆除は、薬剤の危険性を十分に知らされないまま、住民が道路、樹木、住宅などおよそ衛生害虫が発生しないような場所にも、水でも撒くように無造作に散布しています。化学物質過敏症やアレルギー患者はもちろん、薬剤に敏感な乳幼児や病人などが住んでいる場所での無差別な殺虫剤散布は危険です。環境ホルモン(内分泌撹乱物質)がこれだけ問題になっている時期に、厚生省が安易な薬剤散布に注意を促すどころか、薬剤散布を推奨するとは考えられないことです。
 平常時での衛生害虫駆除をやめるよう以下の要望をします。

1.厚生大臣が策定する感染症の予防に関する基本指針に、平常時での衛生害虫駆除の項目を載せないでください。
2.薬剤の危険性に関して、都道府県や市町村に任せるのではなく、国が責任をもって国民に知らせてください。
3.公衆衛生審議会で基本指針に関する審議をするときに、私たちの意見を聞くよう機会を作ってください。

★農水省への要望書
−前略−
 現在、環境ホルモン(内分泌撹乱物質)が大きな問題になっています。ご存じのよう に、内分泌撹乱物質には多くの農薬が含まれています。現在、登録され、使用されている農薬もあります。農薬は内分泌撹乱作用以外にもさまざまな危険があり、私たちはその濫用に反対して運動を続けています。
 貴省は内分泌撹乱物質に関して、多額の予算をその研究につぎ込むとのことですが、研究するより先にやるべきことが多々あります。これ以上、未来の世代に負荷を与えないために以下の要望をいたします。

1.農薬登録時に提出された毒性試験成績の生データを含むすべてを公開すること
2.製品に毒性試験結果を表示すること
3.内分泌撹乱物質に関する研究は常時公開すること

★農薬工業会への農薬毒性試験結果の全面公開を求める要望書
−前略:農水省と同じ−
 貴会は、98年5月に環境庁が発表した「外因性内分泌撹乱化学物質への環境庁の対応方針について(環境ホルモン戦略SPEED’98)」を批判し、環境庁に1.環境庁リストから現行登録農薬の削除、2.削除できない場合はリスト掲載の根拠の提示、3.リスト掲載化学物質について、その作用の強弱あるいは根拠の確度に基づく分類化を要望しているとのことです。
 貴会は、農薬は、登録時に種々の毒性試験の結果を提出するから毒性評価がなされていると主張していますが、安全とされてきた農薬の規制が続発していることからでも、毒性評価が不十分であることは明らかです。問題はそのデータが公表されないことです。わずかに簡単な概要が発表されるだけです。
 近年では除草剤CNPが胆のうガンの原因ではないかと指摘され、専門家が改めて検討した結果、疑いを捨て切れないとの判断がなされました。これを受けて製造メーカーが自主的に生産を中止し、回収したことはお忘れではないと思います。CNPの毒性試験の概要は貴会の機関誌に掲載されましたが、専門家が生データを再検討した結果、胆のうガンとの関連を否定できなかったわけです。
 また、環境庁の調査によりはじめて、有害なダイオキシン類の混入が確認されたPCNBや毒性試験の不足をWHO/FAOで指摘された空中散布用NACをメーカーが製造中止していることは、現行の登録制度での毒性試験が不十分であることを証明しています。
 貴会は、環境庁に抗議する前に、登録時に提出した毒性試験の生データの公開及び毒性に関する文献調査結果の公表を傘下の会員会社にすすめるべきですし、メーカーが農水省に提出している農薬製剤の成分組成や不純物の含有量を公表させることも必要です。
 情報公開はまず、内分泌撹乱農薬と名指しされた農薬のメーカーがやらなければならないと思います。そのうえで、農薬に内分泌撹乱作用があるのかどうか、検討すればよろしいでしょう。それまでは、農薬は環境ホルモンとして疑われ続けるでしょう。一刻も早い情報公開を要望します。
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作成:1998-10-28