街の農薬汚染にもどる
t08203#「前文」でお茶を濁し、感染症予防法成立−成立前に厚生省交渉#98-10
「感染症の予防及び感染症患者に対する医療に関する法律」は、前文をつけるなど若干の訂正の上、9月24日に参議院国民福祉委員会で成立しました。この法律は患者の人権を無視しているばかりか、不必要な平常時での衛生害虫駆除を継続するなど、100年前の伝染病予防法とあまり変わっていません。私たちは「龍平君を支える会」などと共に、この法案に反対して運動してきましたが、8月10日に厚生省に質問状を出し、9月10日に、参議院議員会館で回答を聞く会を持ちました。この会には岡崎トミ子・櫻井充・竹村泰子参議院議員が参加しました。
 質問は法案全体にわたっていますが、ここではハエ・カ(衛生害虫)の駆除に関する部分の回答と問題点を紹介します。厚生省の問題意識がいかにいいかげんかよくわかります。今後、厚生省に対しては大臣が定めるという「基本指針」に、平常時での衛生害虫駆除の項目を入れないよう要望してゆきたいと思います。
……………………………………………………………
★質問1:平常時の衛生害虫駆除に関しては、厚生大臣が定める「指針」で明記し、都道府県が責任をもって行うとのことですが、衛生状態が明治時代より明らかに向上している現在において、平常時での自治体による衛生害虫駆除は必要ないと思います。何故、このような規定をするのですか。
[回答]新法においては、平常時の対策は全国一律に行う必要はないので、消毒、その他の措置については各都道府県が地域の実情を踏まえて、基本指針に従って予防計画に則りつつ適切に実施されるものと考えている。
−やりとり省略−
 <コメント>
以上のように、らちが明かない議論になりましたが、厚生省も平常時でのハエ・カ駆除の義務付けははっきりしません。感染症が発生していないときに害虫が大発生したらその時に対応すればいいのであって、むやみに殺虫剤散布をさせるような規定はするべきではありません。この点についてはこれから何度も申し入れしていくつもりです。

★質問2:伝染病予防法では、市町村が設備すべき器具、薬品(防疫用薬剤)などを定めていますが、新法でもそのようにする予定ですか。薬品を定める基準はどのようなものですか。
[回答]現在の伝染病予防法の規定では非常に詳細に渡っているが、こうした規定が法律の規範として必要かどうかについては慎重に検討する必要があるのではないかと考えている。但し、腸管出血性大腸菌感染症の指定伝染病指定に当たっての省令では薬品に関する規定も持っており、従来、こうした規定が一定の役割を果たしてきたということについてはあると考えている。公衆衛生審議会の意見を聞く必要があるので、現時点で言うのは難しいが、仮に法律等に薬品を定める場合については、現在の科学的知見を中心に検討を行う必要がある。

★質問3:伝染病予防法で定められている防疫用薬剤の中に環境ホルモンと名指されている薬剤がありますが、これに関してどのように対処するつもりですか。
[回答]いずれの薬剤が環境ホルモンと名指されているか情報の収集に務めたい。仮に法律、政省令に規定する場合においても、環境ホルモンに限らず、より安全なものを用いていくということが大切じゃないかと考えている。

★質問4:新法案では、感染症が発生した場合の駆除に関する費用は市町村が負担すると第57条に規定され、さらに、63条で、当該患者か保護者、場所の管理者、もしくはその代理人から徴収できるとなっていますが、どのような論理でこの案を決めたのですか。感染症は本人の落ち度でかかると思っているのですか。
[回答]本人から徴収という場合、周囲への感染源になることを自らが知って、かつそういった発生及びまん延防止のために必要な消毒を行う能力を持っていながら、行政に撒かせるという方からの費用を徴収するための規定である。感染症にかかるのは本人の落ち度かという質問があるが、もちろん、そういった考え方から設けた規定ではない。
−やりとり省略−
<コメント>
感染症が発生したとき、消毒や害虫駆除に要した費用を患者やその保護者などから徴収できるという63条をめぐって延々やりとりが続きました。厚生省の主張は確かにおかしい。個人からは徴収しないというのであれば、63条はいらないはずです。厚生省が想定しているという工場やお金持ちの個人から徴収するというのも、いまひとつ実態がつかめない。一体、どのような場面を想定しているのか、何か、私たちが思いつかない事態を想定しているのか、とにかく、この話し合いではさっぱりわかりませんでした。
 いずれにしろ、衛生害虫駆除に関しては、その後、国会でも争点にならず、このまま成立してしまいました。今後、それぞれの地域で反対運動をすすめると同時に、基本指針に盛り込まさせない要望をしていかなければならないと思います。
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:1998-11-30