街の農薬汚染にもどる
t08304#報告2 埼玉県新座市:学校での農薬散布をやめて5年 南雲(子供の健康を守る会)#98-11
 埼玉県の新座市は小中学校あわせて24校あるんですが、89年まで小中学校の校庭樹木に毛虫防除という形で、農薬散布が年4回、業者によって行われていました。ひどいときは、業者の無料のサービスということで、年間に6回、7回と、ここが教育現場かと疑いたくなるほどものすごい量の農薬が散布されていました。
 私たちの会は、農薬散布を何がなんでも廃止してもらおうと、市役所、教育委員会に要望したり、交渉を何度も何度も繰り返しました。そうしましたところ、教育委員会は、90年に「学校農薬散布の研究の年にします」といいました。
 別にそのために予算をとっているわけでもなくて、プログラムも何もないような状況でしたので、「では、私たちが農薬の毒性について詳しい先生を知っていますので、そういった先生を呼んだりして一緒に勉強しましょう」ということで、90年から合同研究会が行われるようになりました。
 年間に6回、7回の合同研究会なんですが、研究の内容は、農薬の毒性に始まって、生態系について、小中学校の校庭を観察して、植樹されている樹木につく虫を観察して、一年間を通してその虫の生態について研究したり、虫が発生したときに農薬に代わる防除法で虫を捕らえる等、実践をしてきました。
 もちろん、行政は研究会などというのは全くしたくはなかったわけなんですよ。研究した結果「やっぱり農薬は必要ですね」という結論につなげたかったんでしょうけれども、毎年、毎年、虫の観察をして防除の方法をデータとしてまとめていったんですね。
 そうすると、農薬を使用していても毛虫は発生しますし、樹木は丸坊主になっていたんですけども、逆に、虫の生態を知ることによって、初期に燃やしたりとか、越冬する頃にコモでとったりとか。木に毛虫が発生しちゃうと取るのが大変なんですが、かたまっているうちですと、一本の木から何千匹という毛虫がほんとに簡単にとれちゃうんです。
 そういった記録を毎年毎年とって行きました。また、「もし学校のほうで農薬を散布したいとか、毛虫の防除に困った場合には、一言、教育委員会を通して子供の健康を守る会の方に連絡ください」というふうにしておいて、とりあえず、いきなり学校から防除業者に連絡して農薬を散布するというのを食い止めて、学校から連絡があったときに私たちが出向いて各学校の樹木の毛虫の発生状況をチェックしていったんです。
 そうしたら、一匹、二匹の毛虫を見ただけで、「早く農薬散布をしてください、校庭中毛虫だらけだから、早く早くきてください」と、もう本当に次から次へと夏の間中ありました。教育委員会から「南雲さん、今日は3校ありますよ」なんて。一日に3校くらい巡回するんですよ。
 そんなにひどい状況かな、校庭中毛虫だらけなんて見てみたいねなんていくと、なんのことはなくて、ほんと、数本の木に毛虫が発生していて、それが地面におりていて、這っているという状況なんですね。
 その状況を見て、その管理者は顔を真っ赤にして大変だ、校庭中毛虫だらけになっちゃうから早くどうにかしてくれっていうんですけども、「先生、この毛虫、これからどうなるかわかりますか」って聞くと、「これから校庭に広がっていく」って言うんですよ。「校庭に広がるんじゃなくて、この毛虫はこれからさなぎになるために土の中にもぐっていくんですよ。このままほっといても、一週間くらいで姿がなくなっちゃうんですよ」って言うんですが、「いやそれにしたって、毛虫が気持ち悪い」って言うんですね。
 毛虫が気持ち悪いんだったら、一週間の辛抱ができないんだったら、じゃあ、簡単ですよね、農薬なんか使わないで、箒とちりとりではきましょうってなるんです。大抵、車の中に箒とちりとりを積んでいますので、ぱっぱっぱと掃いちゃうんです。そのまま毛虫なんていなくなっちゃうんです。
 学校の先生の中には、びっくりするんですけど、ほとんど70%くらいの先生が毛虫は毛虫のまま一生を終えるというふうに思っていらっしゃったんです。話していて、なんかこうおかしいなと思っていたんですよね。「これからさなぎになってとか、成虫が」とかいう話をすると、えっという顔をするんですよ。「毛虫は毛虫ですよね」「蛾の幼虫が毛虫ですよ」って言うと、はああと、しまったみたいな顔される先生がすごく多かったんです。
 校庭を観察しているうちに、日本には何千種類って毛虫がいるかもしれないけれども、学校で注意しなきゃいけないのは4種類だけということがわかって、その4種類の生態だけは管理するうえで知っておかないきゃならないので説明しています。ほとんどの毛虫は放っておいてもいいのです。
 人々が毛虫に対して恐怖感をもっている、それが農薬散布を止めるにあたって一番のネックでした。私たちの会では93年に、「虫は友だち−校庭は僕らのワンダーランド」という子供むけの漫画の冊子を作りました。それと毛虫も同じ生き物として認めてあげようよということで、毎年、ポスターを作成して、学校の廊下とか公民館の施設に張っています。ちょっとグロテスクなんですがもう5枚目ができています。新しいポスターのいいキャッチコピーがありましたら、教えて頂ければと思います。

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作成:1998-12-25