街の農薬汚染にもどる
t08407#公共施設での衛生害虫駆除薬剤の散布で町田市が方向転換#98-12
 てんとう虫情報82号で、町内会・自治会へのハエ・カ駆除薬剤散布の廃止について報告しましたが、引き続き行った各公共施設における衛生害虫駆除(館内消毒)の薬剤散布問題について報告します。
 10月14日に提出した要望書に対して11月6日付けで市長より回答文が届きました。薬剤の散布は取りやめるべきではないかとの問に「本庁舎、中町第二庁舎、中町分室のネズミ・昆虫等の点検防除につきましては、生息状況などの点検の結果により、発生が認められない事務室においては、今年度下半期(98年11月実施)から薬剤の散布を中止いたします。」また、「事務室以外でゴキブリ等の生息が認められる場合、ゴキブリホイホイ、ほう酸団子等を使用する物理的駆除方法を併用していきます」という前向きの判断が示されました。
 今回の回答は、96年に各公共施設における薬剤散布の実態と安全性の考え方について市長に質した際の「噴霧後3時間経過すれば無害」「直接飲んだりしなければ人体に影響はありません」「そういったことに詳しいプロの業者に委託している」といった回答から比べれば隔絶の感があり、評価できるものでした。
業者まかせの実態も明らかに その後入手した今年度の「作業報告書(委託業者が月例点検や定期防除を行った際、市側に提出するもの)」によれば、会議室や事務室等だけでなく、倉庫や給湯室・洗面所、排水槽においても、衛生害虫の発生・生息は認められないと報告しながらも、有機リン系殺虫剤で生殖毒性や胎児毒性のあるフェニトロチオン、ジクロルボス、ダイアジノンや、カーバメイト系殺虫剤のプロポキスル、殺鼠剤のクマリン等が使われているのがわかりました。
 これまで、業者任せで行ってきた薬剤散布の実態が改めて明らかになったわけですが、市も職員も薬剤の毒性等についての認識が極めて不十分であったことは否めません。
 さて、こうした町田市の判断を受けて、さらに11月11日付けで要望書を提出。「これらの施設以外の市民センターや学校、図書館等の各施設においては、今後どのような方針をもって臨むのか」「市立保育園や福祉部所管の各施設における薬剤散布の実態は」と市長の見解を求めました。
 11月30日付けの市長名の回答文では「次年度の契約業者が決定しましたら、十分協議し、原則として本庁舎同様の害虫防除を行いたい」としながらも、博物館、国際版画美術館、自由民権資料館については「多くの作品を所蔵しており、現状では即座に中止することはできません。今後、研究がすすみ、代替方法が開発され次第、切り替えたいと思います」と書かれていた。
 ちなみにこれらの施設ではフェニトロチオンの他に、臭化メチルや酸化エチレンの混合剤エキボンが使われています。臭化メチルは輸入農作物や木材のくん蒸、ハウス栽培での土壌くん蒸剤として使用される農薬で、オゾン層破壊ガスとしてモントリオール議定書で2005年に全廃が決まっているものです。主に土壌くん蒸剤が対象になっていますが、このような劇物を自治体が代替がないからといって使い続けていいものではありません。
 また、リサイクル文化センター施設については、「〜ゴミと一緒に持ち込まれる害虫や、場内で繁殖する害虫などが相当数生存していると想定される。そこで、市民が直接来庁する2階フロアーに限り、薬剤散布を中止とし、害虫の発生経過を見ていきたいと思います。工場棟及び1階事務室については、特にダニについての被害もあるので、やむを得ず、継続いたしますが、更に人体への影響が少ない薬剤等を使用し、市民及び職員の健康問題に配慮いたしたい」
 市立中学校については、「次年度の業務委託契約の際に、散布する薬剤をできるだけ害の少ないものに切り替えていくことを検討していきます。」というものでした。
 また、保育園や老人福祉センターなどにおける散布実態も明らかになり、バルサンをはじめ、フェニトロチオンやジクロルボス、環境ホルモンであるフェノトリン、ペルメトリン等が使われていることが判明しました。
薬剤に依存しない方法を 保育園の中でも、ほう酸団子やゴキブリホイホイ等の物理的方法で対処しているところもあります。さらに学童保育クラブやひなた村でも薬剤散布は行われていません。是非、他の施設でもこれを見習って、薬剤に依存しない方法へ転換していってほしいものです。
 薬剤の影響を考える際に問題なのは、ガスとなって室内を漂う薬剤を長期間すったときの影響や、まかれた薬剤が室内でどれくらいの濃度で何日くらい残留するのかといった研究がまだほとんどなされていないことです。言いかえれば、データがない中で人体実験をしているとも言えるわけです。
 労働省によれば、薬剤を売る際、メーカーが作成した製品安全データシート(MSDS=MateralSafetyDataSheets)を渡し、散布作業に当たる作業員の労働環境が守れるように指導(告示)しています。市は先ずそれを委託業者に提供させ、どんな化学物質が撒かれているのかを認識する必要があるでしょう。そして発生抑制や施設改善等を徹底し、防除の基本に立ち返ること、薬剤の安全性について業者任せにせず、市も職員も、もっと勉強することが必要です。それは市民に対する行政の当然の責務ではないでしょうか。
                 卯月(市民アクション町田)

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作成:1999-01-25