空中散布・松枯れにもどる
t08701#松枯れ農薬空中散布、将来は中止をと公害等調停委員会−林野庁、島根県、山口県等、行政が拒否#99-03
 96年に島根県と山口県の県境の2市町の住民が、松枯れ空散中止を求めて公害調停を申請しました。この場合、公害に係わる被害の生じた場所が2以上の都道府県の区域内に係わるため、総理府に設置された公害等調整委員会が調停を行ってきました。
 公害等調整委員会は、99年1月にようやく調停案を示しました。その内容は、申請人に対して、空散の代替法が確立されるまで、やむを得ない方法であると理解すること、被申請人に対しては、農薬空中散布は将来的に中止、それまでの間は、当然の安全対策を取るというものでした。申請人は、空散に理解を示すことはできないが、将来的に空散を中止することを評価し、百歩譲って調停案を受諾しました。しかし、林野庁、島根県、山口県、島根県益田市、山口県田万川町は拒否したと報道されました。
 国の第三者機関である公害調停委員会が、双方の意見を聞いた上で、妥協案としてだしてきたこの調停案を国や自治体が拒否するなど許されることではありません。松枯れ農薬空中散布は直ちに中止すべきものです。直ちに中止できないのならば、少なくとも、調停案の内容を実施すべきです。農薬空中散布反対全国ネットワークは、林野庁に対して、なぜ、調停を拒否したのか理由を明らかにするよう求めると共に、厳重に抗議することにしました。
 次号で、申請人の益田市の石川美智さんに詳しい経過を書いていただく予定ですが、今号では調停案の内容を紹介します。農薬空中散布に反対して運動しているグループの参考になると思います。

★調停案の概要
<被申請人(地域住民)に対して>
 代替法が確立されるまで、やむを得ない方法であると理解する。
<実施団体である益田市・田万川町に対して>
 1、将来的に特別防除の必要性がなくなることを目指す
 2、特別防除にあたっては国の基準以外に
  @保安距離を通常は200m、病院・学校・水源等からは500m離す
  A5日間は散布地域への立入を禁止。松林の全ての入口に看板を設置
  B気中濃度調査、水質調査を複数の地点で行い公表する
  C医療機関を指定し、対処する
  D地域住民に農薬の特性、上記の実施方法を漏れなく広報する
<島根県・山口県に対して>
  益田市・田万川町が2の実施に関し地域住民の理解の下安全に実施するよう適切な指導・助言を行う。
<林野庁に対して>
  益田市・田万川町、島根県・山口県に適切な指導・助言を行う。
  被申請人の求めに応じ、その安全性等に関する資料を提示する。

★林野庁への抗議文と質問状
 3月20日付けの朝日新聞によると、林野庁は公害等調整委員会の「松枯れ対策農薬空中散布大気汚染被害等調停申請事件調停案」を拒否したとのことです。公害等調整委員会は準司法的機能を持つ行政委員会であり、法律により、その中立性、独立性の確保が図られています。公害等調整委員会の調停は、紛争の当事者の意見を聞き、現地調査等を行うなどして調停委員が積極的に介入して調整し、当事者間の互譲に基づく紛争の解決を図るもので、あっせんよりも公権的な色彩が強いものとされています。
 このような機関が3年にわたって調査し、結論として出した調停案を国が拒否するなどは常識で考えられないことです。国が不利な調停を全部蹴ってしまうのなら、何のために国の公害調停機関があるのかという重大な疑問が浮上します。
 松枯れ対策としての農薬空中散布は長年に渡って続けられてきましたが、97年に「松くい虫被害対策特別措置法」が「森林病害虫等防除法」に吸収されたときに、松林保全対策懇談会の報告で「特別防除は将来的に実施する必要がなくなるよう条件整備を図っていくことが重要」とされ、また、法改定時の付帯決議にも「将来的に被害水準がさらに低下するなど、特別防除を実施する必要がなくなるような条件を整備しつつ、伐倒駆除、樹種転換等の方法を可能な限り選択するとともに、松林の健全化のため適切な森林施業を併せて推進すること」とあります。
 公害等調整委員会の調停案はこの方向での解決を目指したものであり、林野庁が当然行っていなければならない条件整備を示したものです。林野庁がこの調停案を拒否したことは、自分たちの責務を放棄していることを自ら認めたものと言わざるをえません。
 私たちはこれに厳重に抗議するとともに、以下の質問に回答するよう要求します。
1、調停案を拒否した理由
2、将来的に特別防除をなくすためになすべき条件整備
3、特別防除の中止時期
以上、早急な回答を求めます。

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作成:1999-03-28