空中散布・松枯れにもどる
t08702#松枯れ農薬空中散布をいつ止めるか明らかにすべき#99-03
★法改定後も減少率はわずか
松枯れ対策と称して行われている農薬空中散布は、97年に「松くい虫被害対策特別措置法」が「森林病害虫等防除法」に吸収された後も続けられています。全額、国や県、市町村などの補助金です。私たちは、百害あって一利なしの松林への空散に反対して長年反対運動を続けてきました。もう、そろそろ林野庁も県も、いつ頃、空散を中止するのか明らかにしてもいい時期です。
下表は、法律改定後の97年、98年に国が松林への農薬空中散布に出した補助金とその面積です。32県で実施され、97年度は4万1900ヘクタールに補助金を9億9900万円出しています。98年度になると面積が3万9千ヘクタール、補助金が9億3900万円となっています。これは国の補助金に関わるものだけですから、他に県独自の空散や国有林での空散が加わります。
94年度は6万5900ヘクタールに15億6200万円を投入していましたから、少し減っていることは事実です。しかし、法改定時の附帯決議の「将来的に被害水準がさらに低下するなど、特別防除を実施する必要がなくなるような条件を整備しつつ、伐倒駆除、樹種転換等の方法を可能な限り選択するとともに、松林の健全化のため適切な森林施業を合わせて推進すること」を考えると、林野庁や実施県の努力はあまりにも少ないと言わざるをえません。どうやって空中散布をなくしていくのか、林野庁は本気で考えないと大きなしっぺ返しを食うでしょう。
★協議会に反対派を入れているというが
また、空散を実施するにあたって、地域住民の理解と協力を得るということが防除基準にうたわれていますが、そのために森林病害虫等防除連絡協議会に空散反対派を参加させることになっています。平成9年4月7付けの林野庁長官から都道府県知事への通達「森林病害虫等防除に係わる連絡協議会等の設置要領例について」には、委員になるべき人として6番目のカに「森林病害虫等の防除に関心を有する団体等の代表」というのが入っています。これは空散反対派という意味です。
ところが、昨年、千葉県で「空散反対千葉県ネットワーク」が協議会に代表を参加させるよう要望したところ、千葉県農林課は拒否しました。これは明らかに通達違反ですが、林野庁は千葉県を呼んで口頭で注意したのみでした。千葉県は1年ほったらかしにした上で、ようやく今年の3月に千葉県のネットワークに参加するよう伝えてきました。
こうした状況の中で、全国の空散実施県で反対派を入れているところがどのくらいあるか調査してもらいました。林野庁によると、下表に○印にあるような27県が反対派の委員を入れていると回答したということです。こんなにあるはずがありません。やはり、この通達がでた時に私たちが懸念したように、「防除に関心を有する団体」を空散反対派と解釈しないということになっているのでしょう。○印のついている県は、一体、どこの反対派が委員になっているか調査していただきたいと思います。
★国会での質疑
さて、3月11日に行われた参議院国土環境委員会で岡崎トミ子議員が松枯れ空散に関する質問をしました。岡崎議員は以前から農薬空中散布について何度も質問をしています。
まず、96年まで松枯れ空散に大量に使用されていたNAC(セビモール)に関して、97年から、突然、使用されなくなった理由と、中止までにどれくらい使用されたのか質問しました。農水省の大森審議官は、FAO/WHOの合同専門家会議(JMPR)の毒性再評価によってより厳しい評価が出され、国内のメーカーが自主的に製造をやめたと従来と同じの回答をしました。つまり、今まで安全だといって空中散布させてきたのに本当は危険だったということでしょう。こんなことをすべてメーカー任せにしている農水省の無責任さには呆れるばかりです。
林野庁は、使用量についてきちんと回答せずに、85年の4万8千ヘクタールをピークに96年度は1万6千ヘクタールまで減っていたと言うのみでした。岡崎議員はもっときちんとデータを出すよう要求しました。
NACは環境ホルモン農薬として国際的に認められた農薬です。環境庁のSPEED98のリストにも上がっています。内分泌撹乱物質作用のある農薬を長い間空中散布してきた責任は誰がとるのでしょう。岡崎議員は、取り返しのつかなくなる前に、現在、使用されているスミチオン(スミパイン)が環境ホルモンかどうかきちんと調査すべきだと要求しましたが、環境庁も農水省もスミチオンがSPEED98のリストにないので調査する必要はないと答弁しました。スミチオンの精子形成異常を示す論文については知らないと平然としていました。
★環境ホルモンの補助成分は知らないと
また、APE系界面活性剤は分解して環境ホルモンのノニルフェノールになることが知られていますが、農薬にも使用されています。たとえ、内分泌撹乱物質として名前が上がっていない農薬であっても、APE系界面活性剤を使用していればその農薬は環境ホルモン農薬になります。有効成分よりも界面活性剤のほうが濃度が高い場合もあります。APE系界面活性剤がどの農薬にどれくらい使用されているのかという質問に対して、環境庁は展着剤として40種類が登録されているが、水和剤、乳剤の補助成分としてどれくらい使用されているかは把握していないと答弁しました。農水省の答弁は、界面活性剤のシェアは農薬は1.8%しかないので問題はないとのことでした。環境ホルモンは微量で作用するということは頭にないようです。
松枯れ空散は全体に減っているがその理由は何かという質問に、林野庁は松枯れの被害面積が減っているからだと答弁し、効果がないということを絶対に認めようとしません。もう空散はやめるべきではないかと再度の質問に、林野庁は、「松枯れ被害量はまだ80万立方メートルあり、現時点で空散は有効な手段だ。しかし、将来については伐倒駆除、樹種転換、松林の健全化を総合的に実施し、空散が必要でなくなるような条件整備が必要と認識し、努力してゆきたい」と述べ、いつ頃止めるのか明らかにしませんでした。
これらの答弁を聞いていて、もはや、農薬空中散布によって松枯れを予防できるなどとは誰も考えていないことを感じました。一日も早く空散が中止できるよう圧力を強めることが大事と思います。
表 97年度、98年度に松枯れ農薬空中散布を行った県とその面積、国の補助金
(単位 面積=千ha 補助金=百万円)
97年度 98年度
都道府県 面積 国庫補助金 面積 国庫補助金 反対派の委員
岩手 0.1 4 0.1 4 ○
宮城 0.4 10 0.4 8 ○
秋田 0.0 3 0.0 3 ○
福島 2.6 87 2.6 87 ×
茨城 0.9 25 0.8 24 ○
栃木 0.2 12 0.2 11 ○
群馬 0.1 4 0.1 3 ○
千葉 0.6 16 0.6 15 ○
新潟 0.7 31 0.6 29 ×
石川 1.6 43 1.6 42 ○
福井 0.9 24 0.8 21 ○
長野 0.4 14 0.6 17 ×
静岡 0.9 26 0.9 26 ○
愛知 0.3 10 0.3 9 ○
兵庫 4.3 81 3.7 73 ▲
奈良 0.1 2 0.1 2 ○
和歌山 0.2 4 0.2 4 ○
鳥取 4.9 101 4.8 100 ○
島根 3.5 68 3.3 65 ○
岡山 6.1 114 5.6 106 ○
広島 4.1 85 3.7 77 ○
山口 2.6 71 2.1 59 ○
徳島 0.0 1 0.0 1 ○
香川 1.1 31 1.0 29 ○
愛媛 0.6 17 0.4 12 ○
福岡 0.1 2 0.0 1 ○
佐賀 0.0 1 0.0 1 ×
長崎 0.6 16 0.6 16 ○
熊本 0.3 5 0.3 5 ○
大分 0.5 17 0.4 13 ○
宮崎 1.1 26 1.1 26 ○
鹿児島 2.1 50 2.1 48 ○
計 41.9 999 39.0 939 27
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作成:1999-05-27