室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t08903#連載:反農薬アドバイス@パラジク製トイレボールを撤去させるには#99-05
【質問】
 学校などの公共施設で使用されているパラジクロロベンゼン(以下、パラジク)のトイレボールを撤去してもらいたいのですが、どうしたらいいでしょうか。
【答え】
 まだ、パラジクのトイレボールを使用しているところがあるのですね。東京都では97年の反農薬東京グループの申し入れ以後、学校、病院など都が管理している施設でのパラジクの使用をやめています。また、首都圏の電鉄会社もほとんどやめているはずです。その他、学校では横浜市、横須賀市、桶川市など市民が要望したところでは撤去されています。ですから、まず、やめてくれと声をあげることが大事です。
 それにはトイレボールを使用している施設の管理者に要望書を出すのがいいと思います。学校等の場合は市町村の教育委員会に出すのもいいでしょう。要望書の見本は96年に作ったちょっと古いのがありますので、必要ならば80円切手を貼った返信用封筒を同封して事務局へ申し込んで下さい。パラジクの毒性や規制の経過は以下のようなものです。
 1996年11月、労働省は「酢酸ビニル等4物質にかかるがん原性試験の結果」を発表しました。4物質はそれぞれ動物実験で発ガン性があることがわかりましたが、中でもトイレボールや衣料用防虫剤として身近に大量に使われているパラジクに発ガン性があるという報告は衝撃を与えました。この実験は吸入毒性の実験であり、主に室内の空気を汚染し、野生生物よりも人体汚染が進んでいるパラジクの危険性がクローズアップされたわけです。
 パラジクについては、以前から米国で経口毒性試験で発ガン性が指摘されたり、日本でも88年には国立小児病院の実験で、アレルギー疾患や肝機能障害を起こす可能性が発表されています。その後も、横浜国立大学や北里大学の調べでパラジクは、高濃度で室内空気を汚染していること、低濃度でも化学物質過敏症を起こすことなどが分かっています。
 労働省の発表の後、私たちのパラジクの製造禁止の要望に対して、厚生省は「パラジクロロベンゼンに関する家庭用品専門家会議」を開催し、97年8月にその報告書を発表しました。
 報告書は、まず、労働省の実験でマウスにガンができたのは「マウスの種特異的な高感受性によるものであり、人へのリスク評価に反映させることは困難」として、パラジクの人への発ガン性を否定しました。
 しかし、それではあんまりだと思ったのか、耐用平均気中濃度(「人が生涯その平均濃度のパラジクを吸引し続けても毒性作用が発現しないであろう濃度」と厚生省は説明)を0.1ppm(0.59mg/m3)と設定しました。
 0.1ppmという濃度はパラジクを普通に使用していても室内に存在する濃度です。厚生省の文献調査によっても、居間で平均0.145ppm、寝室が0.332ppm、台所が0.081ppm、トイレが0.609ppmと台所以外は既にこの数値を超えています。つまり、パラジクは使用すれば厚生省の耐用平均気中濃度を超えてしまうわけです。寝室などは最高7.840ppmという濃度が検出されている例があります。おそらく衣料用防虫剤を大量に使っているのでしょう。このような部屋はアレルギーや化学物質過敏症患者は耐えられないものと思われます。
 このような数値を決めておきながら、パラジクの製造・使用規制をしない厚生省は何を考えているのでしょうか。「今後の安全対策に関する提言」として厚生省は「使用状況によっては比較的高い濃度に達することも考えられるので、より安全を期するためにはパラジクの適正使用の推進、より安全性の高い代替品の開発などによって、パラジクの室内濃度の低減化をすすめる必要がある」としています。何故、「使用するな」と言えないのでしょう。
 しかし、まあ、厚生省もパラジクの使用には難色を示しているとも取れますので、要望しても撤去しない施設には、室内濃度が0.1ppm以下であることを確認させましょう。どうしても使用するならば、せめて厚生省の決めた数値を守れ、そのためにはまず分析しろと言えばいいと思います。
 また、家庭で衣料用防虫剤としてのパラジク(パラゾール、ネオパラなどの商品名)を使っていたら、直ちに使用をやめましょう。96年の日本テレビの番組で、使用説明書通りにパラジクを洋服だんすや整理だんすに入れて、室内空気を図ったところ、1ppmを超えていたという報道がありました。厚生省の数値の10倍です。厚生省も寝室の濃度が高いのは衣料用防虫剤が使用されていたものと推測しています。パラジクは独特の臭いがありますからすぐ分かります。
 パラジクを使わないとしたら、どういう防虫剤を使えばいいのかと質問を受けますが、臭いがしないというピレスロイド系の防虫剤も安全性は保証されていません。衣類を食害する虫は日本ではイガ、カツオブシムシなど4種類です。これらの虫は気温が25度以上、湿度60%以上になると活発になります。主にウールなどの自然素材が被害を受けます。ですから、日本では梅雨時以後気をつければいいわけです。時々虫干しするなどして乾燥させ、虫が嫌いなハーブ(ラベンダーやクローブ)を入れて保管すればいいのではないでしょうか。

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作成:1999-6-27