街の農薬汚染にもどる
t08906#アメリカで航空機内の農薬消毒に警告#99-05
 アメリカ・オレゴン州に本拠を置く環境保護運動体NCAP(農薬の代替を求める北西部連合)は、このほど、航空機を利用する人に、機内で散布されている薬剤について警告する報告書「空飛ぶ人は気をつけよう」をまとめましました。
 同報告によれば、航空機では、農薬が貨物室、客室(乗客がいる時にも)、炊事室、操縦室などで使用されているそうです。航空会社が自発的に散布する場合もあれば、アメリカや他の国々の規則に従って散布されることもあります。農薬は、定期的な保守作業の一環として、航空会社の職員や専門業者の手により飛行前、飛行中又は飛行後にしばしば散布されます。
 航空機の客室内は、適切な換気に欠ける上、飛行中の新鮮な空気の取り込みは規制されているため、空気の質はよくないことに注意を払う必要があります。この閉鎖した換気の悪い環境で、わざわざ計画的な毒物を使用することは、すべての飛行客に付加的かつ不必要な健康被害を生み出す恐れがあります。幼児や年少の子供、妊婦、喘息患者、癌患者、薬剤感受性の高い人は、特に危険でしょう。
農薬散布を求めている国は以下のようなところです。

<乗客が着席中の客室への薬剤散布を要求している国>
薬剤散布は、他国の農作物病害虫や病気を媒介する昆虫が、自国にはいってこないようにするために行なわれ、乗客がまだ、着席中にかけられることもあります。
 94年現在で、20以上の国が、乗客への薬剤消毒を求めていましたが、アメリカ運輸省のはたらきかけの結果、98年1月時点では、少なくともトリニダード・トバゴ、グレナダ、マダカスカル、キリバス、インド、ウルグアイの6ヵ国が実施しており、航空機の乗客は、入国に先だって、農薬をかけられます。

<残効性のある殺虫剤による客室処理を要求している国>
 搭乗に先だって農薬散布が実施されている場合もあります。残留性の高い薬剤が客室に散布されるわけですが、その結果、乗客は飛行の間中農薬にさらされます。呼吸による取り込みとともに、シートなどからの肌や衣服への移行も問題となります。
 自国内へのすべての飛行に要求している国は、オーストラリア、ニュージーランド、ジャマイカ、バルバドス、パナマ、フィジーです。
 また、マラリアや黄熱病などの伝染病発生国などからの特定飛行に対して要求している国は、チェコ、グアム、インドネシア、南アフリカ、スイス、イギリスです。
 ペルメトリンの場合、搭乗4〜6時間前に、機内で4〜6週間効力が持続する程度に散布されています。

<アメリカでの国内線における散布>
 アメリカ国内でも、農務省による検疫上の要求として、旅客機、貨物機、軍用機で、乗客がいない時に薬剤消毒が行なわれています。マメコガネ(JapaneseBeetles)の駆除のために、d−フェノトリン、ベンダイオカルブが、ミバエ類には、レスメトリンが、貨物室で散布されます。また、飛行機をオゾン破壊物質である臭化メチルなどでくん蒸処理する場合もあります。
 約300種の農薬製品が、航空機内での場所に応じて使用を登録されています。その活性成分は様々で、有機リン系(ダイアジノン、クロルピリホス)、カーバメート系(ベンダイオカルブ、プロポキシル)、合成ピレスロイド系(シフルトリン、シペルメトリン、d−フェノトリン、レスメトリン、トラロメトリン、ペルメトリン)らが主なもので、前二者は神経毒性がありますし、後者の中には、発癌性や環境ホルモンの疑いのあるものあります。
 機内での農薬成分や製剤中の溶剤成分の空気汚染調査は行なわれていませんが、94年5月現在、環境保護庁に報告された農薬散布の被害者は6人で、症状は頭痛、吐き気からより悪質な発作や記憶喪失などがありました。その他、アレルギー症状が悪化した乗客や協調運動失調の添乗員の例が報告書に挙げられています。
 このような航空機内での農薬の被曝による健康被害を避けるため、NCAPは、航空会社に対して、1.着席中の客室への散布はやめる、2.他の害虫管理方法を推進する、3.少なくとも散布後48時間は換気し、乗客を搭乗させない、4.農薬使用情報を乗客や乗務員へ提供するなどを求めています。
 日本では、果たしてどうなっているのでしょうか。私たちは、今まで、電車やバスの薬剤消毒を問題にしており、一部で改善がなされましたが、航空機についても、今後、調べてみる必要がありそうです。

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作成:1999-06-27