街の農薬汚染にもどる
t09008#連載:反農薬アドバイスA団地の農薬をやめさせるには#99-06
【質問】
広い庭には芝生が青々として、樹木も多い。子供(幼稚園児)を育てるには絶好の環境。そう思って移り住んだ団地ですが、いざ、住んでみると、芝生や樹木の管理にたびたび農薬が散布されています。何とかこれをやめさせたいのですが、どうしたらよいでしょうか。
【答え】
10年ほど前に、ゴルフ場で使われる農薬が周辺の環境を汚染していると大きな社会問題となったことがありましたが、団地でも、芝生や樹木の管理という点で、ゴルフ場と同種の農薬が使われています。
ここで、どんな農薬が使われているか、団地での農薬散布にいち早く反対運動が起こった横浜市にある左近山団地を例にとってみてみましょう。まず、芝生に撒かれる除草剤としては、シマジン、ア−ジラン、バナフィン、MCPPがあります。中でも一番多く使われていたのがシマジン(CAT)です。シマジンは「低毒性で安全」とされていたため、散布後の立入禁止措置もなく、ゴルフ場の2倍もの量が使用されていました。
横浜国大環境科学研究センタ−が88年に左近山団地で行った除草剤散布による大気汚染調査では、「ヘリコプタ−で水田などに空中散布した時と同程度の汚染」にあることも明らかとなりました。94年、このシマジンが人体に慢性的な悪影響を及ぼしかねないとして、政府は、水質汚濁性農薬に指定しました。今まで「政府が許可しているから安全」と言い続けてきた住都公団も、ようやく使用を中止しました。そして今、シマジンは環境ホルモン物質のリストにも挙がっています。
樹木に使われる殺虫剤には、ディプテレックス、スプラサイド、DDVPなど、劇物に指定された有機リン系の殺虫剤があります。有機リン系殺虫剤は、もともとはナチスが毒ガス兵器として開発したもので、サリンなどはこれにあたり、この毒性を弱めて殺虫剤に開発したものが、有機リン系殺虫剤です。有機リン系中毒になると「地下鉄サリン事件」でみられたような、頭痛、めまい、吐き気、視野狭窄などさまざまな症状を起こします。
それではこのように危険な団地の農薬散布をやめさせるためには、どうしたら良いのでしょうか。住都公団の場合は、散布は公団が決定し、下請け業者によって作業が行われます。住都公団は、90年に行なわた団地の農薬に反対する住民との交渉の中で、住民の総意があれば散布を中止する、との姿勢を明らかにしました。自治会を通じて、散布を中止するように申し入れるのが一番の近道でしょう。分譲住宅の場合は、管理組合が散布を決定しているので、管理組合への働きかけが必要となります。
自治会も、管理組合も、どちらも住民の組織なので簡単に聞いてもらえそうな気がしますが、現実には、頭の硬直した男性が長年役員をやっていて、住民の意見をなかなか聞いてもらえないケ−スも多いようです。自治会、管理組合に積極的に参加していき、民主的に運営されるよう変えていく努力も必要となってきます。農薬散布推進側は、除草剤をやめたら共有財産である芝生が草ボ−ボ−になる、毛虫で樹木が丸裸になると脅します。しかし、除草剤さえ撒けば芝生以外の雑草を根絶できるかというと、芝生と同じイネ科の植物や多年草の植物には効力はなく、また、長年使用していると、雑草に抵抗性が発現して効力もなくなります。そもそも団地の庭に、草1本ないゴルフ場のような芝生が必要でしょうか。観賞用のきれいな芝生より、自然な草地の方がどれだけ子供達には良いことでしょう。
除草剤散布をやめた左近山団地では、その浮いた費用で芝刈り作業を年2回から3回に増やした上で、毎年10月にクリ−ンデ−と称して、草取りを行っています。毎年参加者も増え、住民同士の貴重なコミュニティの場になりつつあります。
次に毛虫対策ですが、代表的なものに、桜の木につくモンクロシャチホコ、アメリカシロヒトリ、つばき、さざんかなどにつくチャドクカがいます。モンクロシャチホコとアメリカシロヒトリは人畜無害です。また、桜の木がこれに喰われたからといって桜が全滅したという話も聞きません。チャドクガは触れるとかゆみを伴う炎症を起こしますので注意が必要です。毛虫の発生初期には一か所に固まっているので、その部分の枝を切り落としたり、竿の先に布きれを撒いて、灯油であぶって落とすなどの方法があります。
いずれにしろ、草が生えて、虫がいて、ヒトも生きていることを忘れないようにしたいものです。
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作成:1999-7-30