街の農薬汚染にもどる
t09105#連載:反農薬アドバイスB保育園での農薬散布をやめさせるには#99ー07
【質問】
 保育園で農薬散布をすると言っています。子供が心配ですので何とかやめさせたいのですが。
【答え】
 最近、こうした相談が増えています。幼い子供たちがいる場所であまりにも安易に農薬が使われている状況を何とかしなければなりません。室内に散布する殺虫剤を「農薬」と呼ぶと行政は嫌な顔をして「いや、薬剤だ」といいます。けれども、殺虫成分はほとんどが農薬と同じものです。「薬剤」「消毒」などと呼んで毒性がないと思いこんでいるとしたら、本当に困ったものです。ここでは、農薬登録されていない殺虫剤も含めて「農薬」と呼びます。
 保育園や幼稚園などで農薬を散布する場合は、園の樹木に殺虫剤を散布するものと、室内に散布するものがあります。いずれも、散布された農薬が大気中に漂い、子供たちが吸う可能性があります。まず、室内散布の場合から見てゆきましょう。樹木への散布も大体同じように考えればいいと思います。園から農薬散布のお知らせがきたら、何を対象に、何という農薬を、何のために撒くのか、はっきり聞くべきです。おそらく、最初はきちんとした回答はないでしょう。あるとしても、ゴキブリやダニ退治のためと曖昧な回答がほとんどだと思います。仮にゴキブリやダニを対象にするにしても、実際にどこにどのくらいいるのかという発生状況の調査がなされている例は少ないようです。
 例年やっているからという理由や、あるいは、園が公立だと予算がついているから使わなければなどと、とんでもないことを言う場合もあります。保育園内の農薬散布には法的根拠はありません。無理に法律を探せば「建築物の衛生的環境の確保に関する法律」(ビル管法)があげられます。しかし、この法律で定められているのは床面積3000m2以上の建築物で、学校は8000m2以上となっています。保育園や幼稚園でこの基準にあてはまるところはないと見ていいでしょう。で、行政はそのまま法的根拠にできないので、「準用している」と言います。使用農薬は、ピレスロイド系殺虫剤のペルメトリン、有機リン系殺虫剤のスミチオンなどが一般的ですが、DDVPなどを使うところもあります。園が指示するのではなく、委託業者が決めているようです。
 実際にどのように散布されるかは、「週刊金曜日」98年1月9日号に渡辺由貴さんの「保育園内の殺虫剤散布」という記事に、渡辺さんのお子さんが通っている保育園の例が書かれています。廊下、保育室の壁際、棚や引き出しの中、便器や流しの周り、調理室などにぽたぽたこぼれるように撒き、その後、残留噴霧ということで、室内の空間に散布するのだそうです。日曜日に散布して月曜日に保母さんらが早めにきてふき取り掃除をするとのことですが、子供たちの登園までに全部ができず、1才くらいの子供が裸足で農薬の上を歩いていたということです。
 ゴキブリやダニが大発生していて子供に被害が出ているようならば、まず、発生源対策を取るようにしなければなりません。ゴキブリの場合は、子供たちが食べたりなめたりしないよう十分注意してほう酸団子を使うという手もあります。そもそも、農薬でゴキブリやダニを絶滅させることは不可能です。ですから、農薬散布は効果の点からも疑問があります。さて、大体の情報が集まりましたから、これからどうするかです。できるだけ早く、農薬散布をやめてもらうよう要望しましょう。できれば、一人ではなく何人かの仲間を集めてやるのがいいのですが、集まらない場合は一人でもかまいません。最初、口頭であたってみます。私立の園で話のわかる人が責任者だと案外簡単にやめてもらえるかもしれません。
 公立で頭の固い人が園長や責任者だとすると、少しやっかいです。その場合は、はっきり対決して文書で申し入れ、同時に、管理する市町村長にも文書で申し入れをします。農薬の危険性、自分の子供が健康被害を受ける可能性があること、発生源調査をしているのかどうか不明などわかりやすく書きます。議員で一緒にやってくれる人がいればすぐ連絡します。また、要望書を出す段階でマスコミなどに知らせるのもいいでしょう。
 どうしてもやめない場合は、子供を休ませるしかありません。どのくらいの期間休ませなければならないかと聞かれますが、一概には言えません。ただ、植村先生の調査によりますと、中之島図書館でスミチオンを散布したあと、濃度は薄くなっても70日以上残留していたという例があります。とにかく農薬は撒かれてしまうとなかななかなくなってくれません。

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作成:1999-08-27