街の農薬汚染にもどる
t09503#連載:反農薬アドバイスD頭ジラミ退治は薬剤に頼らずに#99-10
【質問】
 学校でアタマジラミが流行っているということで、退治するのにスミスリンパウダーという薬を使うように指示されましたが、こどもの体に影響はないのでしょうか。

【答え】
 アタマジラミの流行の話はよく耳にします。アタマジラミは頭髪にいて、時々吸血しかゆみを起します。東京都では1976年に流行しはじめ、全国的にも学童・園児の間に拡がっているということです。
 アタマジラミは接触の機会があれば誰にでも寄生します。流行したときは毎日シャンプーするのが効果的な予防法です。
 しかし、学校などで流行すると、たいていの場合、スミスリンパウダーを使うよう指導されます。スミスリンパウダーは商品名で、フェノトリンという有効成分が使われています。フェノトリンはピレスロイド系の殺虫剤です。住友化学が製造しています。
 以前、埼玉県のある市のお母さんから、「学校からアタマジラミ退治にスミチオンを使えと書かれたチラシがきたんですが」という電話をいただいて仰天したことがあります。ご存じのように、スミチオンは有機リン系の農薬です。
 「スミスリンの間違いじゃありませんか」「いえ、スミチオンと書いてあります」「それは絶対おかしいから学校に言ってください。農薬を頭につけるなんてとんでもない話です」というわけで、このお母さんは学校にかけあって、スミチオンを使うのをやめさせた経緯があります。
 じゃあ、フェノトリンなら安心かというと決してそんなことはありません。
 フェノトリンを用いたハイチ難民の男性に乳房がふくらむという現象がみられたという報告がありました。この薬剤が男性ホルモンであるアンドロジェンの受容体に作用し、アンドロジェンが結合するのを妨害したためと考えられています。つまり、環境ホルモン作用があるということです。

★イギリスでも同じ
 イギリスでも、事情は同じで、アタマジラミの成虫や卵退治に、薬剤が使用されていることが問題となっています。フェノトリン以外に、日本では使われないNACやマラチオン、ペルメトリンが使われているそうです。
 これに対して、衛生問題コミュニティー(CHC)という団体は、薬剤を使用しないシラミ退治法としてシラミのライフサイクルを絶つ湿式髪すき方法を推奨しています。
 これは、通常のシャンプーとコンディショニングで髪とシラミを十分湿めらした後、髪すきによりシラミの成虫を取り除く方法で、以下の手順が基本になっています。
@コンディショナーを用い、予備的に幅広の目の細かい櫛で、髪のもつれをほぐし、伸ばすようにすく。
Aそれから、頭全体に対し、目の細かい櫛で、髪の付け根から先に向かって、余すところなく髪すきを行ない、孵化したシラミをとりのぞく。櫛に捕らえられたシラミは、次の櫛けずりの前に、ふきとるか洗い落とす。
Bコンディショナーを洗いおとし、湿っている状態で、再び髪をすく。
 この方法は、卵が孵化して成虫となるシラミのライフサイクルを考慮して、4日毎に、2週間つづける必要があります。

 同じような方法は日本でも昔から行われてきました。シラミ取り専門の細い竹の櫛もあります。アタマシラミは毎日シャンプーすることだけでも結構いなくなるものです。薬剤を使う必要はありません。

★BHCを使っている?
 日本では、シラミに耐性ができてスミスリンが効かないとして、かって農薬として多用され製造販売が禁止となった有機塩素系のBHCを、一部の医師が処方しているという話も聞きます。戦後、アメリカ進駐軍により学童のシラミ退治につかわれた薬剤がまたぞろ姿を表わしたわけです。
 BHCは発癌性と内分泌系撹乱用がある上、難分解性で残留性の大きな物質で、地球規模の環境汚染がおこっていますが、農薬取締法で販売禁止されているだけで、DDTやクロルデンのように化審法の規制を受けていませんから、要注意です。
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作成:1999-11-30