空中散布・松枯れにもどる
t09701#農水省、安全の根拠なしに無人ヘリ増加推進−飛散調査も気中濃度のデータもない#99-12
 12月3日、農薬空中散布反対千葉県ネットワークと反農薬東京グループは無人ヘリ(ラジコンヘリ)による農薬空中散布が増加しているにもかかわらず、その安全対策が野放しの状態にあるため、農水省に具体的な規制を求める要望書を手渡し、農水省の見解を質しました。
 農水省は植物防疫課農薬航空班高島課長補佐と、堀田技官が対応しましたが、話し合いの中で農水省が何らデータも持たずに、無人ヘリは地上散布と同じと判断していることがわかりました。また、農薬空中散布によって「特段の配慮」が求められている家屋、学校、水道、水源等に空中散布による農薬が飛散してもいいのかどうかという質問に、係官は答えることができませんでした。あまりの無責任さに交渉参加者は驚くばかりでした。

★急速に増える無人ヘリ散布
 農水省によると、無人ヘリ、有人ヘリによる農薬空中散布の面積は、以下のようになっています。
     無人ヘリ(全体)      有人ヘリ(水田)
 95年度 11万1千ha          132万8千ha
 96年度 14万7千ha          120万2千ha
  97年度 18万9千ha          112万9千ha
  98年度 22万6千ha           94万2千ha
                (延べ面積)
 無人ヘリは、実に、4年間で倍以上の増え方です。有人ヘリによる空中散布は約38万ヘクタール減っていますが、その理由について農水省は、水稲の作付け面積や散布回数が減っていることが主な理由だとしています。無人ヘリに移行した面積も多いはずですが、調べてないのでわからないとのことでした。
 農水省は91年に農蚕園芸局長通達の「無人ヘリコプター利用技術指導指針」(以下「指針」)を出し、97年までに14回、適用作物と農薬の増加を認め、そのたびに指針の改定をしています。指針には「趣旨」として「航空機を用いた空中からの薬剤散布が適当でない地域等において、人畜、農作物、周辺環境等に対する安全性を確保しつつ、無人ヘリコプターによる適正な空中散布等の実施に資するため、この指針を定める」となっています。
 日本の農地で「航空機を用いた空中からの薬剤散布が適当」な地域などどこにあるのかという疑問はさておき、この趣旨からは今まで有人ヘリで行っていた地域を無人ヘリで実施するのはおかしいことになります。
 また、無人ヘリによる空中散布に関して、指針では実施団体が記録をとっておき、市町村や関係機関から求めがあった場合は提出することとありますが、例えば、私たちが求めても出す必要はないとのことでした。有人ヘリの場合は市町村別の空散計画を国に提出することになっていますが、無人ヘリの場合はどこへも届ける必要がなく、実施団体や個人が記録さえとっておればいいということです。国も県も無人ヘリによる空中散布は面積すら把握する必要がないとのことです。
 では、どこから上記の数字が出てきたのかというと、農薬空中散布推進母体である農林水産航空協会にお願いして集計してもらった数字だというのです。
 こういう指針まで作っておきながら、何故、国が把握しないのかという問には、「有人へりは広範囲で実施され、しかも機体が限られているので計画が必要だ。無人ヘリの場合は個人でやる場合もあり、地上防除と同等のものなので、計画を把握する必要はない」という回答でした。

★まさか、データもなしに同等だとは
【農水省】地上防除においてきちんと農薬の使い方を守って農業者が作物を作っていると思う。それと同じレベルで無人ヘリを考えているので、それ以上の措置が必要であるとは考えていない。
【反農薬東京グループ】何故、地上防除と同じだと判断したのか。その根拠は何か。また、地上防除と同じなら、何故、このような指針を作ったのか。
【農水省】私どもは航空防除と地上防除の区別をしている。地上防除には指針はない。無人ヘリは個人で小規模にやる場合もあるので、地上防除と同等と考えている。指針があるのは、無人ヘリは操作が難しく、安易にやられては困るので適正に行われるようにしていただきたいためと、使用者の研修などもするために作った。
【反農薬】そうすると、無人ヘリと地上防除が同じだとするきちんとした根拠はないのか。
【農水省】だから県によって判断がぶれることもある。飛行技術が難しいのでしっかり定めた。
【千葉ネット】機械を安全に操作するなどは前提だ。農薬による周辺住民への危被害が問題だ。安全性はヘリが落ちるかどうかだけではない。
【反農薬】無人ヘリが地上防除と同じだというのなら、無人ヘリによる飛散調査をちゃんとしているのか。そのうえで、地上散布と同等だと言っているのか。
【農水省】有人へりだと10メートルくらいの高さを飛ぶ。無人は低空で飛ぶので、このへんが違うと思う。
【反農薬】そんなことではなく、実際に無人でやった場合のデータがあるのではないか。
【農水省】そういう形の調査はない。
【反農薬】それでどうして有人より安全だ、地上防除と同等だと言えるのか。−中略−

★指針の見直しが必要だ
【反農薬】指針には組織で無人ヘリ散布の場合、学校、病院、居住者に連絡することとなっているが、個人も知らせなければいけないのか。
【農水省】個人は知らせる必要はない。狭い範囲でやっているので。
【反農薬】どこに根拠があるのか。個人でも広範囲にやる場合があるだろう。
【農水省】その場合は知らせてほしいと思う。
【反農薬】この指針は矛盾がある。
【千葉ネット】実施団体にまかせきりになっている。きちんと守られているかどうか検証する手段も機関もない。
【農水省】概ねの農業者は真面目にやっていると思う。
【反農薬】それもデータなしに言うわけだ。そう思いたいというだけではないか。
【千葉ネット】千葉で空散110番をやったが、予定が変更されたのに知らせがなかった例が多い。多少落ちこぼれはしかたがないと思っているのか。記録を作り、それを公開すればいいかげんなことはできないはずだ。記録すら持ってないというのが実施団体の大多数だ。指針を実効あらしめる手だてが必要だ。
【反農薬】指針から言えば、市町村か関係指導機関の求めがあった場合、記録を見せるとある。私たちには見せないのか。
【農水省】もし、どうしても見る必要があれば話をして。
【反農薬】様式を見ると、記録には危被害防止に何をしたかも書く必要がない。こんな記録では本当に役に立たない。
【千葉ネット】手抜きがでることは明らかだ。無人ヘリは高濃度の農薬を撒く。その分、飛散を受ければ影響は大きい。無人ヘリは拡散が少なくて被害が少ないだろうと指針に書かれているように思われるが、決してそんなことはない。国の見解はどうか。
【農水省】無人ヘリに登録されている農薬と使用方法を守り、オペレーターも十分な研修を受けているので、安全性は確保されると考えている。
【千葉ネット】しかし、指針を実行させる抑えがない。実施団体にすべてまかされている。
【反農薬】この指針に違反した場合どうなるのか。
【農水省】関係指導機関を通じて守ってもらうように指導する。
【千葉ネット】実効あらしめるには情報公開しかない。
【反農薬】千葉県は関知しないと言っているが、それでいいのか。
【農水省】通達は県の担当部局にいっているので、当然、県が一体となって守っていく責任がある。
【千葉ネット】責任とはどういう責任か。国だってたいした責任を持っていないのに、県がどこまで責任を持てるのか。−中略−

★飛散していいかどうか答えられない
【千葉ネット】空散除外区域を具体的な数字で示せないか。
【農水省】地域により地形的要因も異なるので、国として具体的な距離を示すことはできない。県に対しては都市化が進んでいるところでの散布には特に注意するよう指導している。
【反農薬】除外区域に飛散した場合、少しくらいの飛散ならいいと考えているのか。例えば、学校とか病院とか、無人ヘリ散布を知らせなければならないところがある。こういうところに飛散した場合、よくないと考えるか。
【農水省】・・・ 飛散といってもレベルがあるので、環境庁の示すものよりも超えたものであれば。
【反農薬】環境庁に飛散の基準はない。気中濃度だけだ。飛散のことを聞いている。少しくらいなら飛散してもかまわないという考えか。
【農水省】被害が出るとか。
【反農薬】レベルの問題ではない。飛散があってもいいかどうか聞いている。
【農水省】どのくらいの量が飛んでいくかという問題がある。
【反農薬】何ppm以下なら飛散してもかまわないと言っているのか。それとも学校などに飛散しちゃいけないと考えているのか。公衆衛生関係で特段の注意をしなければいけない場所があると書いてある。そういうところに飛散してもいいのかと聞いている。
【農水省】安全性の上で健康に問題がないということが確保される必要がある。
【反農薬】だから、飛散してもいいのかどうかを聞いている。
【農水省】安全であるという量が飛散する場合には問題があるとは言えない。
【反農薬】安全であるという量があるかどうかは別として、それ以下なら飛散してもいいということか。要するに少しぐらいなら飛散してもいいということか。
【千葉ネット】そこのところを決めてもらわないと実施する人も困るんじゃないか。学校に飛散するなんて絶対に避けなければいけない問題だ。指針には何も書かれていない。学校や病院から何メートル離せと示さなければならない。
−中略−
【農水省】・・・この場では答えられない。
【千葉ネット】やはり答えをいただきたいので、次回を約束していただきたい。それまでに回答を準備しておいてほしい。

 わざわざ特段の配慮をする場所を決めておきながら、そこに飛散してもいいのかどうかが答えられないというのは全く、信じられない話です。また、無人ヘリが地上防除と同等だなどと根拠もなしに判断している点も問題です。今後、これらの点を詰めていく必要があります。

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作成:1999-12-21