室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t10304#住宅品質確保法で「シロアリ薬剤防除の義務づけはしない」と建設省#00-06
今年4月に「住宅性能表示基準等に関する法律」が施行されました。この法律は1.新築住宅の基本構造部分の10年保証、2.住宅性能表示制度、3.住宅専門の紛争処理機関の設立が柱になっています。
新築住宅の基本構造部分の10年保障というのは、2000年4月1日以降契約された新築住宅に適用されます。基礎、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材などの基本構造部分に欠陥があったりした場合、10年間は売り主に修復責任等が義務づけられるというものです。従来は2年が普通だったとのことですから、住宅の買い主にとっては少し安心できるわけです。これはすべての住宅に適用されます。
2.の住宅性能表示制度というのは、少しわかりにくいのですが、要するに住宅をいくつかの評価基準に従って評価し、等級を決めるというものです。これは等級を決めてほしいと要請のあった住宅についてだけです。付加価値にお墨付きを与えるようなものと言えましょう。当然のことながら、等級が上になれば価格もあがるということになります。
問題なのは、どのような評価基準に従って等級を決めるのかということです。法律では「日本住宅性能表示基準」と「評価方法基準」の二つを決めることになっています。建設省はその案を2月に提示して意見募集をしていました。この案の中に、薬剤によるシロアリ防除を義務づけるかのような表現があり、問題にしていたわけです。
★それも「誤解だ」と
反農薬東京グループは、4月に岡崎トミ子参議院議員と共に建設省に説明を求めました。「薬剤によるシロアリ防除が義務づけられているという見方があるが、どうか」との質問に対して、住宅生産課の真鍋課長補佐は「誤解だ」として、以下のような説明をしました。(それにしても、93年に住宅金融公庫の仕様書改訂を求めたときも、建設省は最初に「誤解だ」と弁解していましたが、(てんとう虫情報19号に詳細)自分で原因を作っておきながら、指摘されると「誤解だ」と逃げるのは担当者が変わっても変わっても建設省の伝統のように続いていることは困ったものです)
真鍋課長補佐は「2月10日にこの案を公開した。3月10日までに1057の意見を頂いた。そのうち、(防蟻などの)劣化対策に関する意見が4分の1を占めていた。関心の強いところだ。長持ちする樹種の太いのを使えば防蟻処理はいらない、また、工法上の工夫も大きい。そのことが基準を作っているときにはわからなかった。確かに今までの流れとして長持ちさせるために薬剤で防蟻・防腐処理をするのが前面にでていたが、現在、書き直しているところなのでもう少し待っていただきたい」という趣旨の説明をしました。
★薬剤処理よりも樹種・工法に効果と答弁
6月6日の参議院国土環境委員会で岡崎議員が質問しました。岡崎議員が「それでは、シロアリ防除剤の使用を義務づけているということはないんですね。住宅性能表示法では規定していないというふうに確認してよろしいでしょうか」と迫ると、建設省は「新しい住宅品質確保法におきます表示基準等におきましても、防蟻剤、薬剤を使用しなければならないというような考え方は盛り込むつもりはございません」と言い切りました。
ここで注意しておかないといけないのは、建設省は薬剤による防蟻措置を義務づけることはしないが、重要な防蟻措置の一つとして残しておくということです。薬剤処理を禁止しているわけではありません。
また、今まで建築基準法を持ち出して、地上から1mの部分は防腐・防蟻措置をしなければならないとしてきましたが、最近、その解釈を改めて、元々建築基準法には「必要に応じ」とあるので義務づけではないと言い出しました。まあ、一歩前進ではありますが、従来、この規定を盾にとって防腐防蟻処理をしなければならないと頑なに言われ続けた私たちとしては、正直、「よく言うよ」という感じがします。
★新法のもう一つの問題点
ところで、この法律は既に成立していますが、その具体的な評価基準の中身について現在、検討中となっています。建設省は2月10日に素案を発表し、3月10日まで意見公募していましたが、6月19日に公聴会を開くとしています。シロアリ防除以外のこの基準案の問題点をあげておきます。これは当グル−プが、公聴会の公述人の申し込みとして出したものです。
1.室内空気中には100を超える化学物質が検出されている。これらによるシックハウス症候群は深刻なものであり、重大な社会的関心を集めている。厚生省は室内汚染の実態調査、指針値設定を進め、最近、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンに関する指針値を提案した。また、シロアリ防除剤による室内空気汚染も実態調査が進んでいる。
しかし、性能基準案の中では、「空気環境に関すること」の中で汚染物質としてホルムアルデヒドしかあがっておらず、ホルムアルデヒドの発生さえ少なければ評価が上がることになっている。厚生省が指針値を定めた物質で建材から発生する可能性のある物質は、ホルムアルデヒド同様、評価すべきである。さらに、同じ基準案の「劣化の軽減に関すること」、あるいは、評価方法基準の中で、防蟻剤の使用を推奨している以上、当然、防蟻剤による空気環境も評価すべきである。
シックハウス症候群を発症するとその住宅に住めなくなる。各種性能というよりは重要な住宅の瑕疵に相当する。
2.評価方法基準の中で、「地盤」に関して「a有効な土壌処理を施したもの」という項目があり、「次のものが想定される」として、日本しろあり協会(ママ)、日本木材保存協会の土壌処理基準をあげているが、これらは薬剤処理であり揮発した成分によってシックハウス症候群が発症する可能性がある。また、このような例示は薬剤処理を義務づけているように受け取られ、性能評価の等級をあげるためには薬剤処理が必要とされる可能性がある。このような例示はやめるべきである。
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作成:2000-07-25