室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t10403#建設省が発注する施設でVOC対策を通達−シロアリ対策は非有機リン系薬剤使用など自分たちだけ安全に#00-07
 建設省の建設大臣官房官庁営繕部建築課は、6月7日に、各地方建設局営繕部ら宛に「室内空気汚染(揮発性有機化合物)対策について(通知)」(建設省営建発第39号)という通達とその運用についての事務連絡をだしました。
 営繕部というのは建設省が関係する施設の建設や管理などを担当するところです。この通達では、建設省が発注したり、建設省の責任でリフォームなどする場合に、VOC(揮発性有機化合物)等による入居者や施工者の健康被害を防ぐために、例えば、木材保存剤は非有機リン系とするなど、とるべき対策をまとめています。
 建設省がこのような問題意識を持って、設計、建設、管理、利用などする建物を安全にしたいという気持ちはわからないではありませんが、一方で、同じ建設省の住宅局建築指導課は、一般の住宅に対してアメリカで使用禁止になった有機リン系薬剤のクロルピリホスの使用禁止措置すらとろうとしていません。
 建設省は自分だけ安全な建物を作ろうとしていると言われても反論できないでしょう。少なくとも、シックハウス対策として営繕部が出したくらいの施策をすべての住宅に適用すべきです。
 担当課に、なぜ防蟻剤として有機リン系薬剤を使用しないのか問い合わせてみましたが、答えは思った通り「安全を考えて」とのことでした。その際、反農薬東京グループのホームページも参照にしたとのことでした。ただ、あまりにも反響が多いので事務連絡の部分に関しては変更する可能性があるとのことです。このような通達を出す時には、あらゆる批判に耐えられる周到な準備が必要ではないかと思います。
 今回の通知は、建設省が実施する工事に関するものですが、地方自治体や民間の施設・住宅・商用ビル等の建築物についても、適用させてもらいたい内容を含んでいますので、通知の要点を以下に記します。

1:対象室等
 新築及び改修工事において、合板類、フローリング、壁紙等の内装材料等を多量に使用する室が対象となっています。
 運用に際しては、通達の日以降に新たに契約される工事を適用対象にするだけでなく、契約済みの工事についても、変更で対応するよう努めることとなっています。

2:対象物質
 当面の間、、VOCのうちホルムアルデヒド、トルエン、キシレン及び可塑剤を対象とすることに加え、木構造建築物については、木材保存剤(防腐剤、防蟻処理剤)も対象とされます。

3:使用材料の選定
 建材・施工材の選定においては、対象物質を放散しないか、少ない日本農林規格(JAS)又は日本工業規格(JIS)を参考に適切に選択するとされています。

4:換気計画
 設計においては、自然換気・機械換気などで、換気計画を十分配慮することになっています。

5:施工中の対策
 接着剤、塗料等の塗布に際しては、使用方法・塗布量を十分管理し、適切な乾燥時間をとり、施工中・施工後の通風・換気を十分することがうたわれています。

6:施工完了後の測定及び対策
 施工完了〜引き渡しまでの間、必要に応じて、対象物質の室内濃度を測定し、厚生省の定める指針値を上回った場合は、換気のくり返し等による放散やベークアウト等で、濃度の低下に努め、指針値以下として引き渡すことになっています。

7:引き渡し時の保全指導
 引き渡し時に、施設管理者に対して、室内空気汚染源となる材料の使用状況について示し、対策に関する配慮事項について指導を行なうとされています。

★仕様書では木材保存剤は非有機リン系となっているが・・・
 さらに、運用についての事務連絡別紙1にある、特記仕様書等のへの記載内容は、以下のように具体的な指示が書かれています。

(1)内装仕上げ材に用いる、合板類、複合フローリング等はホルムアルデヒドの放散量がJASで定めるF1等級のものとし、ミディアム・デンシティ・ファイバーボード及びパーティクルボードはホルムアルデヒドの放出量がJISで定めるE0又はE1等級のものとする。通気性がある畳・カーペットなどの下地板も同様とする。

(2)収納・収納家具及び建具類の心材として用いる合板類はホルムアルデヒドの放散量がJASで定めるF1等級のものとし、ミディアム・デンシティ・ファイバーボード及びパーティクルボードはホルムアルデヒドの放出量がJISで定めるE0又はE1等級のものとする。

(3)壁紙は、ホルムルデヒドの放散量等がISM(生活環境の安全に配慮したインテリア材料に関するガイドライン)あるいはそれと同等の基準、性能に適合するものとする。

(4)壁紙、ビニル床タイル、ビニル床シート、幅木等の施工時に使用する接着剤は、ホルマリン不検出のものとし、トルエンやキシレンの発生の原因となる有機溶剤の含有の少ないものとする。

(5)塗料は、ホルマリン不検出のものとし、トルエンやキシレンの発生の原因となる有機溶剤の含有の少ないものとする。

(6)壁紙、木工用接着剤等に含まれる可塑剤は、難揮発性のものとする。

(7)木材保存剤(木材の防腐・防蟻処理)は、非有機リン系とし、工場において加圧式防腐・防蟻処理等を行なうものとし、十分に乾燥した後に搬入し、現場における塗布又は吹き付けは、現場において加工した個所のみとする。

(8)VOCの室内濃度の測定は、検知紙法、検知管法、定電位電解法、吸光光度法の簡易測定法等の中から選択し、測定結果が厚生省の定めるVOCの室内濃度の指針値以下であることを確認する。

★まだまだ残る問題点
 営繕部の通達は、まだまだ不完全なもので、私たちは以下のことを目指す必要があります。
@ホルムアルデヒド含有製品は使うべきでない
 仕様書(1)〜(5)項では、ホルムアルデヒド(=ホルマリン)の低減がめざされていますが、JASやJISの規格にこの発癌性有害物質を含むことを認めていること自体が問題ですし、室内濃度を厚生省の指針値以下にすれば安全かといえば、とんでもありません。なぜなら、これは、アレルギーの人や化学物質過敏症の人を守るための指針ではないからです。
 結局、ホルマリンを使用しない製品を使うことが唯一の対策です。でも、代替のノンホルマリン製品だからといって安心はできません。接着剤や塗料に抗菌剤としてTPNやジクロフルアニドなど農薬の活性成分そのものも使われていますし、他の薬剤でも毒性試験が十分行われているとは言い難いものもありますから、心配の種はつきません。

AVOC汚染の規制はやっとはじまったばかり
 仕様書(4)と(5)項であがっているVOCは、トルエンとキシレンだけです。厚生省の指針値もこれにホルムアルデヒドを加えた3化合物についてしかありません。同省は個々のVOC化合物の指針値のほかに、TVOCとして、総量規制をする方針を打ち出しましたので、この通達の対象物質も今後、拡大していくことでしょう。

B塩ビ製品は使わないように
 塩ビ壁紙の難燃性可塑剤TCEPによる室内汚染は、私たちの調査で初めてみつけたもので(てんとう虫情報27号)、住宅室内汚染を社会問題化させ、建設省を動かす端緒となりました。
 塩ビ製品特に軟質の壁紙や床材には可塑剤が多く含まれ、その中のフタル酸エステル系物質には内分泌系撹乱作用の疑われるものがいくつもあります。室内大気には、蒸気圧の高いDEHPやDBPが見出されていますが、仕様書(6)項で、建設省は蒸気圧の低いDINPの使用を勧めています。
 可塑剤の室内汚染を低減させても、塩ビ系材料の建築物での使用にはもうひとつの問題点があります。それは、火災によるダイオキシン発生の危険性です。ダイオキシン生成の塩素源としての塩ビは出来るだけ使用を減らすべきで、公共の建物での使用をやめたドイツの都市の例を見習う必要があります。
 塩ビ製品の使用を減らせば、ダイオキシン汚染も可塑剤汚染も確実に減らせます。
 もうひとつ、忘れてならないことは、塩ビ製品だけでなく、リン系、塩素系や臭素系難燃剤を配合した建材・施工材が多く使用されていることにも注意を払うべきだということです。

C木材保存は薬剤にたよらない
 仕様書(7)項では、木材保存(防腐・防蟻)には、非有機リン系を使うようにと記るされており、どうやら、私たちのしつこい運動により、行政も有機リン剤が有害であることはわかってきたようですが、かわりに、「木酢液やヒノキチオール等を使用し、ピレスロイド系又はカーバメート系の殺虫剤をやむをえず使用する場合には、局部的に使用するものとする」との付記がありますし、工場で加圧処理したもの(有機リン剤やCCA=クロム−銅−砒素剤、クレオソート油などで処理される)の使用を認めていますから、やはり、薬剤にたよることが念頭にあるのは間違いありません。設計の段階から、風通しがよく、木材腐朽菌やシロアリの繁殖しにくい建物作りを心掛けるべきでしょう。
 防虫加工の合板にも有機リン剤(接着剤に含まれる)が使用されていますし、大部分の畳には有機リン剤を含む防虫紙や防虫畳糸が用いられていることも忘れてはなりません。 さらに、上記の製品がJAS又はJISで規格化されていることも問題にしていかねばなりません。

D建材メーカーに情報公開を求めよう
 今回の建設省通達は、安全な住まいをつくるためのほんの序の口にすぎません。建材・施工材については、どんな商品にどのような化学物質がどの程度含まれているかを知ることが一番重要なことです。製造メーカーにこれらの情報を公開させることを義務づけるのが本筋で、有害物質を含まない製品を使わないようになれば、引き渡し時に何度も室内空気を分析する必要もなくなるわけですし、建設廃材も安心してリサイクルにまわせるというものです。
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作成:2000-07-25