街の農薬汚染にもどる
t10706#浜松市:公共施設内での薬剤散布見直し#00-10
ビルや住宅内で使われる殺虫剤などが問題になるなか、静岡県浜松市では、公共施設で続いているねずみ・害虫の薬剤駆除が、9月の市議会質疑をきっかけに来年度から全面的に見直されることになった。
市会でこの問題を取り上げた小沢明美市議(社民)は、7月に議会事務局へ「市の全施設で使われる薬剤の使用実態を1997-99年度分について調べるよう」求めたところ、昨年度に全284施設の90%にあたる256の施設で、樹木や室内の害虫駆除を目的として何らかの薬剤が使われていたことがわかった。
この調査結果をもとに小沢市議は、9月の定例会で「害虫のいることを確認しないで漫然と薬剤をまくのは、効果がないばかりか有害で税金の無駄使い」と指摘した。市はこれを受けて10月4日、「薬剤ではなく物理的な駆除を基本とするよう」公共施設の施設長あてに通知した。(下記参考資料)
★初の屋内外同時調査
今回の調査は室内の薬剤だけでなく、施設の植栽に使われた農薬も含めたのが特徴で、屋外では樹木などに農薬をまいた施設は63.7%にあたる181ヶ所にのぼることがわかった。
このうち、全国的に問題となった、殺虫剤ディプテレックスを規定量で希釈せず高濃度でまくといった使用基準違反が浜松市でも行なわれていたことがわかり、害虫名を特定せずに回答した施設を含めると、不適切使用の疑いがあるところは、施設の10.0%にあたる29ヶ所あることがわかった。
一方、屋内の害虫駆除で薬剤散布を行ったのは全施設の71.4%にあたる203施設で、このうち劇物相当の毒性を持つ薬剤を使うところが45.0%にあたる158施設もあった。
また、内分泌撹乱作用(=環境ホルモン)が疑われるとして環境庁がリストアップした化学物質のひとつである、殺虫剤のペルメトリンなども室内で多用されていることもわかり、これらを含む薬剤の大分類名だけを回答した施設も入れると、13.7%にあたる39施設でこうした薬剤が使われていた。
★危ない、病院や保育所への散布
特に問題なのは医療機関での散布だ。リハビリ病院では院内全域にクロルピリホスメチルをゴキブリ駆除として4.8リットル散布しているほか、保健所母子保健センター・口腔保健センターでは害虫駆除として劇物相当の毒性を持つプロペタンホス32リットルをまいていた。
こうした有機りん系殺虫剤で汚染された空気を吸わざるを得ない患者は、抵抗力が下がっているため、すでに様々な症状が起きている可能性がある。
また、県西部浜松医療センターでは外回りに「ムカデ防除」としてクロルピリホスメチルを年2回まくなど、疾病と関係のない殺虫剤もまかていた。
一方、薬剤に弱いのは子どもも同様で、市内18の保育園では、ゴキブリ駆除を目的として年3回、スミチオン・DDVP油剤19-49リットルが保育室などにまかれていた。
★ビル管理法を誤解
浜松市が誤解していたのは、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(=ビル管理法)」の「6ヶ月以内ごとに1回定期的に防除する」という部分で、「防除」を「薬剤駆除」と考えていたことだった。同法では、防除を人がよく出入りする床面積3000?以上の大きい建物については「法定義務」、それ以外のものは「努力義務」となっているのだが、この「防除」は必ずしも薬剤を使うことではなく、東京都をはじめ神奈川県や静岡県ではビル管理者への指導としてこのことは周知されていた。同法について県と同格の指導権限を持つ浜松市は、今回市の公共施設から薬剤の使用を見直すことになったが、健康影響が指摘されている室内の薬剤散布について、今後民間のビル管理者にどう指導していくのかといった課題が残されている。(新巻圭)
【参考資料】
浜 財 管 号 外(平成12年10月4日)
公共施設における,ねずみ・害虫等の防除について(お願い)
公共施設における,ネズミ・害虫などの防除については,「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」通称「ビル衛生管理法」によって,特定建築物(延べ面積3,000?以上,学校にあっては8,000?以上)は,ねずみ・害虫等の防除が義務付けられており,また,特定建築物以外の建築物で多数の者が使用し又は利用する建築物についても,同様に防除が努力義務とされております。
従って,各施設では,薬剤散布等などの方法により年2回程度実施しているのが現状であると思いますが,ここでいう「防除」とは必ずしも薬剤散布のことではありません。
今後の取扱は,効果的な方法による防除とし,次ぎのとおりといたします。
1,漫然とした定期的な薬剤散布については見直し,他の方法による防除について検討すること。
2,点検業務(生息調査等)を定期的に行い,害虫等の駆除については,基本的に物理的な方法による駆除を基本とすること。
3,駆除の方法として物理的なしかけ以外に,薬剤散布の必要がある場合には,毒性の強い薬剤の使用禁止,散布後の一定期間の施設の使用禁止等,薬剤の種類,散布の方法,施行時における職員の立会等の業務管理のあり方についても十分検討すること。
4,施設により他の法令等により駆除業務が義務付けられている場合でも,薬剤散布以外の方法も検討し,見直しをはかること。
5,施設管理のありかたについても,見直すとともに日常清掃の徹底,ごみ放置の禁止,不要文書の破棄等について検討し,ねずみ・害虫等の侵入や発生のしにくい施設とするよう努めること。
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作成:2000-11-28