空中散布・松枯れにもどる
t10902#久喜市(埼玉県)で農薬空中散布中止−長年の反対運動の結果と農家自身が望んでいないことが明らか#00-12
 私は久喜市の市会議員をやっていますが、10年前から「農薬を考える市民の会・久喜」と連携して空中散布反対運動を続けてきました。久喜市内の空中散布の規模を大幅に縮小させ、隣町の宮代町、白岡町など近隣自治体での反対運動に参加し、中止させてきました。そして2000年、ついに久喜市の空中散布も中止になりました。
 市は毎年のように規模を縮小しながらも、今年も“何が何でも空散を続ける”方針でしたが、6月の「広報くき」で、今年の空中散布は中止と発表しました。
 昨年行われた農業者への農薬空中散布に関するアンケート結果も中止につながったと思います。農業者自体が農薬空中散布の必要性を認めていないという内容で、全国各地で空中散布を実施している自治体でも、このようなアンケート調査を行えば、「農家の要望でやっている」という農水省の言い訳も木っ端みじんになるでしょう。

★アンケート結果
 久喜市病害虫防除協議会は1999年12月に市内の全農家を対象にアンケートをとり、その結果を明らかにしました。その内容は
   アンケート対象者   1139件(全農家)
   回答数              980件(回収率 86.04%)。
   空散対象農家      448件(45.7%)
    「必要ない」と回答  224件(50.0%)
    「必要である」と回答 210件(46.9%)
  【空中散布が必要であると答えた理由】
   個人防除を行う人手がない       51.0%
   個人防除よりも農薬代が安い     13.8%
   広域防除が必要                 76.2%
 となっています。農家が兼業化・高齢化していて、労力がないために空散に頼らざるをえない現実がある一方、「広域防除が有効だ」という《幻想》にいまだに惑わされている農業者が多いこともわかりました。10年前までであれば、地域全体がいっせい防除を行えば、病害虫を全滅させられるという理論・宣伝が幅をきかせていましたが、今は空散を行う農地の方が少ないのですから、いっせい防除・広域防除の理論そのものが崩れているのです。
  【農薬空散を必要としない理由】
   薬剤効果に疑問          25.9%
   散布料金が高い          20.5%
   空散をしなくても収量に変化がない 44.6%
   個人防除で対応可能        28.6%
   周辺市町が中止している      24.6%
    周辺への影響がある                32.6%
 多くの農家は、空散対象地域内と外にも農地を持っています。そうした農家は、実際に空散をしなくても収量に変化はない、薬剤効果に疑問ということを、経験で知っているわけです。

★個人防除を行っていない農家が40%も
 空散対象区域外の農家でも、薬剤散布(個人防除)を行っていない農家が40%もありました。
 
  個人防除している        43.2%
    していない                      40.2%
  【個人防除を行っている理由】                  
   稲の状況を見て、必要に応じた防除が行える  50.5%
   空散対象区域外のため 37.5%
   個人防除を行わないと、病害虫の被害を受ける  41.7%
  【個人防除を行わない理由】
   人手がない        21.8%
   農薬代が高い        6.1%
    個人防除を行わなくても収量に変化がない 25.1%
    周辺への影響がある        18.4%
    有機栽培を行っている       6.7%
 個人防除を行っている農家では、年1回が37.4%、2回が52.3%となっています。
 また、対象区域内で、空中散布が必要と答えた210人に、空中散布をやめた場合の防除方法をたずねると、無人ヘリによる散布を希望する人が42.4%、個人防除を行うと回答した人が30.5%となっています。まだまだ農薬信仰が根強いことがわかります。
 それでも個人防除を行うと回答した人の理由では、「稲の状況を見て必要に応じた防除が行える」という回答が40.6%あって、現在のいっせい広域防除が現実に合っていないことがわかります。
                   猪俣和雄(久喜市)
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作成:2001-01-20