室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t11002#シックハウス検討会がTVOC(総揮発性有機化合物)目標値で新築と中古を区別をなくす#01-01
 2000年12月15日、シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会が開かれ、先に募集されたエチルベンゼン/スチレン/ジブチルフタレート/クロルピリホス/TVOCについてのパプリックコメントに対する見解が示されました。
 受付意見の提出者数は31件(内訳:企業13、事業者団体9、NGO4、個人3、官公庁2)、延べ意見数は142件(内訳:指針値全般15、個別物質25、TVOC71、指針値適用範囲19、その他12)だったということです。
 ここでは、私たちが提出した意見を中心(てんとう虫情報108号参照)に検討会の考え方をみてみましょう。なお、今後の予定として、テトラデカン/ノナナール/DEHP/ダイアジノンについて検討されるとのことですので、注目していきたいと思います。

★エチルベンゼン/スチレン/ジブチルフタレートの個別の数値はそのまま−略−

★シロアリ防除剤の室内汚染はクロルピリホスだけでない
 クロルピリホスの室内汚染実態について調査結果を明らかにしてほしいとの問いは「平成10年の2月〜4月にかけて、試験的に27家屋44検体について防蟻剤の室内空気濃度を調査した結果、6検体からクロルピリホスが検出されましたが、室内濃度の最高値は0.25μg/m3、他は定量限界値未満であり、人の健康影響の面から直ちに問題となる汚染は検出されませんでした。
 また、同年8月〜10月にかけて、同じく試験的に92家屋について調査した結果、33家屋からクロルピリホスが検出されましたが、その濃度範囲は0.023〜0.52μg/m3であり、人の健康影響の面から直ちに問題となる汚染は検出されませんでした。」との答えでした。
 検討会に提出された資料をみるとほかにも以下のような薬剤が検出されていました。

「平成9年度
○検出濃度が高かったのはフェノブカルブで平均濃度は0.64μg/m3であったが、高濃度検出家屋でも1ヵ月後には50〜70%に減衰していた。
○イミダクロピリドは測定対象10軒のうち2軒で検出されたが、いずれも1ヵ月後には検出されなくなった。
○ペルメトリン、ホキシムはいずれの家屋でも検出されなかった。
平成10年度
○フェノブカルブの検出率は12%、濃度敗因は0.0045〜0.059μg/m3であった。
○S−421の検出率は41%で、濃度範囲は0.030〜18μg/m3であった。
○イミダクロピリド、ピリダフェンチオンはすべての家屋で検出されなかった。
○アンケートで健康上の障害があるとの回答が平成10年度に6軒(6.5%)あったが、4軒はいずれの成分も定量限界値未満であった。S−421で突出して濃度が高かった家屋では、頭痛や目、のどの痛みが時々あるという回答であった。」

 上記の実態調査は検体数も少なくシロアリ防除剤の室内汚染の全貌を知るには、まだまだ、不十分です。その中で、S−421の汚染が目立ちつことは、この物質が変異原性を示す有機塩素化合物であり(森康明(神奈川県衛生研究所)ほか:Environ.Mutagen Res.20巻p-29(1998))、母乳中にも見出だされているだけに、特に気懸かりです。

 私たちは、子供の神経系に影響を及ぼすのはクロルピリホスだけではない。同様な作用を示す他の殺虫剤はもちろん、可塑剤や難燃剤を含めた総合的な有機リン系化合物の規制をめざしていく必要があるとの意見を述べましたが、検討会は
 「他の有機リン系殺虫剤が、今後、代替品として使用される可能性は否定できません。実施中の室内空気汚染実態調査の結果も踏まえ、今後必要に応じ、これらの有機リン系殺虫剤の室内濃度指針値の策定を検討していきたいと考えています。」
 「クロルピリホスにおいては、母ラット暴露による新生児への発達の影響、特に、脳の形態学的変化に係る知見を考慮し、小児への影響を考慮したり厳しい指針値設定を行いました。今後も個別物質の指針値策定においては、同様な考え方を適用することにしています。また、他の有機リン系殺虫剤等も指針値策定の対象として検討していきたいと思います。」と述べるに留まり、総合的な有機リン剤規制は視野にないようです。

 また、クロルピリホスの毒性評価を厳しくしたことに応じて、現在の農作物農薬残留基準算定のADIと農作物毎の残留基準を見直すべきである。特に、アメリカと同様、子供が好む果実などの基準を強化すべきであるとの意見を述べましたが、検討会は
「ご指摘の残留農薬基準値については、別途慎重な検討がなされるものと思料致します。」といってくれましたので、今後の食品衛生調査会残留農薬部会の論議に期待しましょう。

★TVOCは中古・新築の区別はなくしたが
 TVOCについて、当初案で中古家屋400μg/m3、新築1000μg/m3の暫定目標値を設定しましたが、中古と新築の区別をなくすべきだとする私たち意見や、新築・中古の区別が明確でないなどの意見が多く、数値の低減化は認められなかったものの、以下のような趣旨説明が追加された上で、TVOCの暫定目標値は400μg/m3に一本化されました。
「この暫定目標値は、竣工後居住を開始してある程度時間が経過した状態における目安であって、竣工後入居してしばらくの間は、暫定目標値を超える場合も予測される。
 また、TVOCに含まれる物質の全てに健康影響が懸念される訳では無いこと、またその中には日常の居住環境で用いられる発生源に由来する物質が含まれることに留意すべきである。従って測定されたTVOC値が暫定目標値を超える結果が得られた場合には、測定時期やその中に含まれる物質の種類や由来を確認した上で、個々の良否の評価を行うべきである。」

 TVOCが400μgに下がるまで入居を待つように告知する義務を建築業者に負わせたら好結果がえられるのではないかという別の意見に対しては、
 「ご指摘の通りだとは思います。2000年10月から住宅品質確保法における住宅性能表示制度が施行されていますが、そのなかには室内空気環境という項目がありますので、建築業者には、積極的に室内空気質の情報を提供することが今後求められてくるものと理解しております。
 また、住宅を購入される方においても、室内空気質の情報には、十分注意して、購入の際の判断材料にすることが必要と思います。本検討会で提示したTVOC暫定目標値は、まだリスク評価に基づいた指針値ではありませんが、現時点では、空気質の汚染の改善促進に利用していただきたいと思います。」と述べています。

★強制力のある法的規制はとらない−先ずは、自主規制から−略−

★情報公開の必要性を認める
 建材等に使用されている化学物質の情報公開を業界に義務付けてほしいという意見に対して、
「建物の生産者又は管理者は、知り得た空気質の情報を開示する必要があると考えています。またそのためには建材や家庭用品等の発生源を生産・供給する業者による情報開示が必要であると思います。継続的なモニタリングは、建物の生産者又は管理者ガ、自ら自主的に又は居住者等その室内空間で生活活動を営む者からの要求によって、定期的に空気質汚染のチェックを行いその情報を開示し、双方で監視をしていくシステムが必要であると考えます。」と、
また、病院・学校・保育園・幼稚園などでの測定とその値の情報公開を義務付けてほしいという別の意見に対しては
「それらは小児が暴露される可能性が高い室内空気空間であることから、より徹底した空気質の管理と継続的なモニタリングを行うべきと考えています。(前述)の回答とも関連しますが、継続的なモニタリングは、建物の生産者又は管理者が、自ら自主的に又は居住者等その室内空間で生活活動を営む者からの要求煮よって、定期的に空気質汚染のチェックを行い、その情報を開示市、双方でモニタリングをしていくシステムが必要であると考えます。この空気質に関する情報開示と継続的なモニタリングのための体制については、今後の検討課題です。」としています。
 情報公開の体制づくりの必要性は検討会を認めているようですので、ぜひ実現したいものです。

 家屋の新築・リフォーム・修理やシロアリ防除処理を実施した場合、業者に室内空気の分析を義務付け、指針値を超えて、健康被害がでた場合は、原状回復の義務を負わせることが必要であるとの意見に対して、
「測定には費用が係り、受益者が負担を求められることと鳴るので、全てを義務付けるのは適当ではなく、むしろ希望に応じて契約時に確認すべきものと考えます。」としか答えてくれませんでした。

 以上、パブリックコメントに対する検討会の見解は、わたしたちにとって、満足のいくものとはいえません。特に、法的規制が欠如していることが問題で、今後、新たに制定をめざしている「生活環境における有害化学物質規制法」の中で、補っていきたいと考えます。
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作成:2001-02-25