街の農薬汚染にもどる
t11102#埼玉県が定期的な薬剤定期散布(県有施設・樹木)を中止−人体への影響・自然環境への負荷を抑えるため#01-02
埼玉県に対して薬剤散布の見直しを求め「生態系を生かした樹木管理を考える市民の会」(代表・西田隆彦さん)が交渉を進めてきましたが(本誌104号、110号掲載)、2月8日、埼玉県は「埼玉県における県有施設・樹木の消毒等に関する取り組み方針(以下方針)」を発表し、今年4月から県有施設・樹木については定期的な散布をやめ、できるだけ農薬を使用しない管理方針に転換することを明らかにしました。
方針では、県有施設・樹木管理に関して、ともに、定期的な散布は止める。発生が確認された場合、物理的な方法により駆除する。薬剤使用の必要がある場合、散布以外の方法を検討し、やむを得ず散布する場合でも必要最小限にとどめる。内分泌攪乱物質(環境ホルモン)が疑われる物質を含む薬剤は使用しない。などが書かれています。
県レベルで定期散布をやめるとはっきり方針が示されたのはおそらく初めてではないでしょうか。大変、結構なことだと思います。
★県交渉の中身
2月9日、生態系を生かした樹木管理を考える市民の会をはじめとする市民グループと埼玉県との話し合いがもたれました。実はこの話し合いがあるために、県は急遽、前日の8日に上記方針を記者発表したものです。話し合いには県から管財課、ダイオキシン対策室、生活衛生課、薬務課、農業経営課、道路環境課、公園課、住宅管理課、教育局財務課、教育局健康教育課が出席し、県会議員はあゆみの会・民主議員団の4人が出席しました。
方針はなかなか立派なものですが、実際にそれを実行する担当部局はまだよくわかっていないようで、具体的な実施方法を聞くと、農薬使用を前提に回答してきました。
たとえば、この方針の県の窓口を努めるダイオキシン対策室は、「方針を徹底するために手引き書を作りたいが、その内容は環境ホルモン農薬の提示、希釈倍率の徹底などを考えている」と回答しました。
また、「散布後、公園の立入禁止は難しいので、散布したことを明示する(公園課)、「チャバネゴキブリの退治は物理的には難しい(生活衛生課)」「防護服の着用を徹底させる(管財課)」など、農薬使用をやめるのではなく、使用方法の適正化をはかる内容でした。しかし、県立高校の教室内での散布に関しては、今年度はいったん予算をつけないことが明らかになりました。
教室にゴキブリがいるのかという質問には「調査したところ、少々いる」という回答で、密室状態の教室に殺虫剤を散布する危険性については考えられていないようでした。
これでは心許なく、市民側は既に無農薬樹木管理の実践を積んでおり、そのノウハウを教えるから、手引き書作成に反映してほしいと要望しました。しっかり監視していかないと何も変わらない可能性もあります。こうした話し合いは今後も続けられる予定です。
【資料:埼玉県における県有施設・樹木の消毒等に関する取組方針について】
平成13年2月8日
1 趣旨
近年、日常生活のさまざまな場面で化学物質に接する機会が増えたことから、内
分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)やダイオキシン類などに対する県民
の健康や生態系への影響が懸念されている。
県においては、消毒や害虫駆除用の薬剤が多くの機関で使用されているところで
あるが、散布される薬剤によっては、内分泌かく乱作用が疑われる物質が含まれる
場合もあり、これらの化学物質に対する県民の関心が高まってきている。
これまで県では、県自らが率先して環境への負荷を出来る限り低減するとともに、
豊かな自然環境の保全・創造に努めるための総合的、具体的な方針である「埼玉県
環境配慮方針」を平成9年9月に策定し、その取組の一つとして農薬使用の自粛等
に取り組んできたところである。
このような取組の一層の推進を図り、化学物質の人体への影響の可能性や、自然
環境への負荷を極力抑えるため、県有施設及び樹木、植栽等への薬剤散布に関する
取組方針を定めるものである。
2 県有施設(県庁舎、県立学校等)の消毒等についての取組方針
(1) 県有施設において、病害虫等の発生の有無等を確認せずに定期的に薬剤散布
を行うことは、これを行わず、次の方法によるものとする。
ア 定期的な生息状況調査等により、害虫等の発生状況を把握し、発生が確認さ
れた場合は、基本的に罠などのしかけ等による捕殺など物理的な方法により
駆除するものとする。
イ アの方法によらず、薬剤使用の必要がある場合には、まず散布以外の餌によ
る誘殺、塗布等の方法を検討し、やむを得ず散布による方法をとる場合には、
使用する薬剤量を必要最少限にとどめるものとする。この場合、容器等に記
載されている使用上の注意事項等を確実に遵守するほか、散布に当たって必
要な安全確保に十分努めるものとする。
特に、内分泌かく乱作用が疑われる物質を含む薬剤は、その作用が明確にな
るまで当面は使用しないこととする。
(2) ごみを放置しない、清掃を徹底するなど、施設の管理面からも、ねずみ、害
虫等の発生防止に努めるものとする。
3 樹木の消毒等についての取組方針
(1) 樹木の消毒等において、病害虫の発生の有無等を確認せずに、定期的に農薬
の散布を行うことは、これを行わず、次の方法によるものとする。
ア 病害虫やこれらによる被害発生を見た場合は、被害を受けた部分をせん定等
により除去するものとする。
せん定枝はチップ化して堆肥化・被覆材利用をする、あるいは適正な焼却に
より処分するなど、二次的な環境汚染を起こさないよう配慮する。
イ アの方法によらず、やむを得ず農薬の散布を行う場合は、使用する薬剤量、
散布範囲等を必要最少限にとどめるものとし、特に、内分泌かく乱作用が疑
われる物質を含む農薬は、その作用が明確になるまで当面は使用しないこと
とする。
農薬を使用する場合は、次のとおりとする。
(ア) 農薬取締法に基づき農林水産大臣の登録を受けた農薬を使用する。
(イ) 容器等に記載された適用病害虫、希釈倍数等定められた使用方法を必ず
遵守する。
(ウ) 防護用具の着用等を徹底する。
(エ) 散布に当たっては、必要に応じて、周辺住民等の関係者への連絡や立札
の設置を行うなど、安全確保に十分努めるものとする。
(2) 薬剤散布に替わる防除方法の研究開発動向等に注視し、今後も幅広い視野で
検討を行っていくものとする。
4 取組方針の適用
この方針は、平成13年4月1日から適用する。
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作成:2001-03-23