室内汚染・シロアリ駆除剤にもどる
t11901#ビル管法のこん虫等の駆除規定は薬剤散布が前提ではない−厚労省が静内事件に関連して通知#01-09
 厚生労働省は8月22日付けで、「建築物におけるねずみ、こん虫等の防除における安全管理について」という健康局長、医薬局長の通知を出しました。これは、本誌でも度々取り上げている北海道静内町の特別養護老人ホームで室内に農薬を散布して45人が健康被害を受けたことに関して、民主党の金田誠一議員が質問主意書をだしたことに関連して出されたものです(質問主意書と答弁、それに対する反農薬東京グループのコメントは、機関誌に掲載しています。必要な方は119号をお求めください)。
 政府は、こうした事故を防止したり、規制したりする政令はないとにべもない答弁をしていますが、さすがにこれではまずいと思ったのか、事故が起こってから1年3ヶ月もたった今年の8月になってから局長通知を出すことでごまかそうとしています。しかし、通知などという行政指導で全国各地で起こっている健康被害を防ぐことはできません。きちんとした法律が必要です。
 この通知では、まず、室内への薬剤散布の根拠とされている「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法)施行令」に定められているねずみ、こん虫等の駆除は、薬剤の使用を必須の前提としたものではないと述べています。この点は、私たちが以前から主張していることですが、ようやく、政府も言わざるを得なくなったと考えられます。これを大いに利用して、保育園、学校、病院その他の建物での薬剤散布をなくしましょう。
 次ぎに、薬剤を使用する場合に留意することとして3点あげています。
 まず、使用薬剤は薬事法上の承認を受けた医薬品又は医薬部外品を用いることとあります。農薬を使用するなどとんでもないことですが、使用したからといって罰則はありません。また、医薬品、医薬部外品なら使用してもいいという根拠は何でしょうか。薬事法で承認された殺虫剤は室内で使用して安全だというデータはありません。そもそも、ほとんどが農薬と同じ成分です。
 2番目に容器などに記載された「用法・用量」、「使用上の注意」を遵守することと当たり前のことが書かれていますが、違反したからといって罰則はありません。
 3番目に、作業終了後の換気や清掃で屋内に残留した薬剤を除去するとありますが、そもそも、薬剤が残留することによって効果がある残留噴霧などの使用法のものはどうするのでしょうか。また、除去したかどうか、室内の薬剤濃度の測定もしないでどうしてわかるのでしょうか。厚労省の無責任ぶりが現れています。
 通知は最後に、医薬品を販売する者は適切な使用量及び使用方法等について情報提供を行うよう努めることとあります。医薬品を販売する許可を受けた者は薬剤師などですが、果たして、提供する情報を知っているのか疑問です。幼稚園、保育園、学校などでの薬剤散布に反対する薬剤師がいるとは聞いたことがありません。生物を殺す目的で開発された薬剤(私たちは「殺生物剤」と呼んでいます)の危険性はまず、薬剤師が正しい知識を持つべきで、そのための研修などを厚労省が行うべきです。
 以下、通知の全文を掲載します。
      *******************
                         健発第855号
                         医薬発第909号
                         平成13年8月22日

   各 都道府県知事
     政令市市長
     特別区区長
  
                     厚生労働省健康局長
                     厚生労働省医薬局長

   建築物におけるねずみ、こん虫の防除における安全管理について

    建築物衛生行政及び薬事行政については、日頃より御理解と御協力を頂き暑く
   御礼申し上げます。
    さて、先般、ねずみ、こん虫等の防除作業の実施後に、建築物の使用者が咳、
   発熱等の症状を訴えた事例が報告されました。その原因は特定されていないもの
   の、薬事法上の承認を受けていない農薬が防除作業に使用されており、この防除
   作業が健康に影響を及ぼした疑いがあるとの指摘がされました。
    このような事態の再発を防止するため、特定建築物維持管理権限者、建築物ね
   ずみこん虫等防除業者、薬局開設者及び医薬品の販売業の許可を受けた者等に対
   し、下記事項に留意し、適切な指導をされるよう願います。

             記

   1,建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令(昭和45年政令第3
    04号)第2条第3号ロに規定するねずみ、こん虫等の発生及び侵入の防止並
   に駆除は、殺そ殺虫剤の使用を必須の前提としたものではなく、ねずみ、こん虫
   等の生息、活動状況、建築物の使用者又は利用者への影響等を総合的に検討した
   上で、適切な方法により実施すること。

   2,多数のものが使用し又は利用する建築物におけるねずみ、こん虫等の防除作
   業に際し、殺そ殺虫剤を使用する場合には、以下の点に留意すること。
    (1)薬事法上の承認を受けた医薬品又は医薬部外品を用いること。
    (2)医薬品又は医薬部外品の容器、被包等に記載された「用法・用量」及び
     「使用上の注意」を遵守すること。
    (3)作業終了後は、必要に応じ強制換気や清掃等を行うことにより、屋内に
      残留した薬剤を除去し、建築物の使用者又は利用者の安全確保の徹底を
           図ること。
   3,薬局開設者及び医薬品の販売業の許可を受けた者がねずみ、こん虫等の防除
   を目的とした医薬品等を販売する際には、適切な使用量及び使用方法等について
   情報提供を行うよう努めること。

   (参考)
    本件に関する質問主意書及び閣議(平成13年7月31日)を経た答弁書を添
    付したので、参照されたい。

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作成:2001-09-27