空中散布・松枯れにもどる
t12301#農水大臣、農薬空中散布は迷惑だろうと答弁−衆議院農水委員会で山口議員の質問に#01-12
 農薬空中散布に反対してさまざまな活動を続けておりますが、少しずつ改善される方向に進んでいます。10月31日には社民党の山口わか子衆議院議員が農林水産委員会で質問しました。武部農水大臣は「有機農業をやっている人々にとっては本当に迷惑なお話であろう、かように思います。」と述べ、「この問題についてもう一度、どうあるべきかということも含めて検討させていただくと同時に、適切な空中散布を行うような指導ということもぜひ必要であるというふうに感じた次第でございます」と答弁しました。農薬空中散布に関して根本的に考え直す時期がきたと思われます。
 以下、議事録から該当する部分を紹介します。
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衆議院農林水産委員会議事録第三号 平成13年10月31日

【山口わか子委員】(要旨)
 農薬の空中散布の問題を質問したい。この空中散布というのは、昭和37年6月21日付で農林水産航空事業促進要項があって、40年もやっているというので、実は非常にびっくりした。空中散布というのは非常に問題がある。もちろん農産物に与える農薬についても心配があるが、この40年間に農地が変わってきている。例えば、住宅団地が混在するところも出てきたし、特に、田んぼの中に学校を建てるところも出てきた。空中散布について非常に住民の間から不安や不満がでてきており、もうやめるべきじゃないかという声が大分出ていると思う。
 これからもまだ空中散布は続けるつもりがあるのかどうかということが一つ。もう一つは、もしやるとしても、例えば有人ヘリの場合はどのくらい飛散があるのか、あるいは、今、有人ヘリをやめても無人ヘリで散布をしているわけだから、無人ヘリの場合はどのくらいの飛散距離があるのか、そのことを調査しているかどうか、調査していたら、その結果かをお聞かせいただきたい。

  【小林政府参考人】(要旨)
 航空防除の必要性は我が国の温暖湿潤な気候の中で、いもち病等が発生したときに非常に大きな影響が出る。この防除をやっていく上で航空防除が求められている。
 ただ、一方では非常に広範囲に農薬の散布を伴うことから、その散布周辺地域の環境を十分勘案して適切に散布してもらうとか、実施体制の整備なり、あるいは安全な散布装置の開発とか、いろいろな対策を講じている。
 特に有機認証制度との関係が一つの課題になっておる。従来から危被害防止対策を徹底しているが、あわせて、特に有機農産物の認証制度が今年の四月からスタートしたということもあり、改めて平成一三年度農林水産航空事業の推進方針というのを提示して指導を行ってきている。
 具体的には、航空防除の事業の実施主体と有機農産物の生産を希望する農家のみなさん、関係者の間で十分連携強化をして、散布区域なり、あるいは散布の除外区域、方法等につきまして十分検討してもらう。それから農薬の飛来による危被害防止措置を徹底する。散布地図とか、散布の作業記録を整備してもらうということを徹底して、その地域にあった形で適切な空中散布が行われるように指導の徹底を図っている。

  【山口委員】
 答弁ないですけれども。空中ヘリの飛散問題。

【小林政府参考人】(要旨)
 その点は現場の状況を今捕捉していないので、改めて、整理した上でご説明申し上げたい。

【武部国務大臣】(全文)
 ただいま山口委員のお話を聞いていまして、空中散布について、私もなるほどなということを感じながら承っておりました。委員ご指摘のように、航空機を用いた農薬の空中散布は、担い手農家等の大規模経営体の病害虫防除コストの低減、労働力の軽減、また、急激に蔓延する稲のいもち病等の病害虫を地域全体で一斉に防除するためには極めて有効な手段であろうということで始められたのでありますけれども、しかし、有機農業をやっている人々にとっては本当に迷惑なお話であろう、かように思います。
 散布周辺地域等の環境を勘案した適切な散布ということが、仮にやる場合でもこれはぜひ必要なことだと思いますし、実施体制の整備、安全な散布装置の開発等に対する指導、支援により安全かつ効率的な航空防除に万全を期していくことが必要ではないか。かように感じて、今お話を聞かせていただいた次第でございます。
 いずれにいたしましても、今後とも、この問題についてもう一度どうあるべきかということも含めて検討させていただくと同時に適切な空中散布を行うような指導ということもがぜひ必要であろうというふうに感じた次第でございます。

【山口委員】(要旨)
 先ほど質問した有人ヘリコプターと無人ヘリコプターの飛散距離について、その結果を私の方へ資料として提出していただきたい。 

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 政府委員の答弁が今までの繰り返しであったのに比較して、大臣の答弁は一歩踏み込んでいます。(第一、大臣に答弁が求められているわけではない場面で、いわば割り込む形で述べている点が面白いですね。官僚とは違う意見だということを示したかったのでしょうか)。

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★空散農薬の飛散調査はどうなったか−農水省と交渉
 この答弁の後、11月22日、反農薬東京グループ、日本有機農業研究会、食農ネットの3団体は農水省植物防疫課と交渉しました。この交渉には山口わか子議員と菅野哲雄議員が同席しました。要望内容と回答は以下の通りでした。なお、各項目とも、行政とのやりとりは、省略しました。

【要望1】
 有人・無人ヘリによる空中散布で農薬の飛散距離と数値。また、農水省は、来年度以降、緩衝地帯の具体的な幅について、どのような指導を図るのか。
【回答】
 今年の8月から9月に農林水産航空協会が有人及び無人ヘリの飛散に関する予備的な調査を実施した。現在、それを解析しており、年明けには結果がまとまる予定。趣旨は、周辺への影響を考慮しつつ航空防除の精密な散布技術を確立するということで、そのための予備調査である。実際の散布現場を対象とて、散布区域内にゼロメートルから100メートルまで、無人ヘリコプターは50メートルまで濾紙を置き調査を行うということで、予備的なので単純な設計になっている。
 この調査は本格的な調査のための予備的な調査だが、有機農業、有機農産物の認定にかかる案件については、具体的にどういう方法ですればいいかという参考にしてもらうようにデータがでたら品質課にも伝えたいと思っている。

【要望2】
 無人ヘリも有人ヘリと同じ取扱いになるとの見解だが、それの都道府県及び実施団体等への周知、緩衝地帯の具体的な幅の指導基準を示す必要性があることを考えると、新たな生産局長通達を出す必要があるが、そのような準備を進めているか。
【回答】
 無人ヘリによる農薬の空中散布も有人と同じ扱いになるということについては、先般、私から申し上げた。基本的な通知をずっと出している。無人ヘリコプターについて、運用場面で毎年推進方針を通知しており、その中に盛り込むことはできないかということを含めて、検討していきたい。

【要望3】
 農林水産航空協会の安全対策の手引きも、改定する必要があるが、そのような準備をするよう指導する予定か。
【回答】
 有人ヘリコプターについては改正をした。安全対策の手引きそのものは民間団体のものだが、そういう情報があれば、今回、私どもで取り組もうとしている調査結果も踏まえて、必要が出てくれば、協会に伝えていきたいと考えている。

【要望4】
 千葉県佐倉市では、空中散布において、有機農家側が緩衝地帯を自己の有機圃場の内側に設けるよう求められていると聞くが、そのような実態があるのか。

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作成:2001-12-25