室内汚染・シロアリ防除剤にもどる
t12504#アセトアルデヒドとBPMCの室内指針値が提案通り決まる#02-02
 1月22日にシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会が開催され、パブリックコメントを踏まえて、昨年10月に提案された溶剤アセトアルデヒドと殺虫剤BPMC(フェノブカルブ)の室内濃度指針値の検討が行なわれました。その結果、提案通りの指針値(それぞれ48μg/m3、33μg/m3)が決まりました。
 パブリックコメントの提出者数は14件(内訳:企業6、事業者団体3、NGO1、個人3、官公庁1)、延べ意見数は34件(内訳:指針値全般3、アセトアルデヒド12、BPMC12、測定法4、その他3件)だったということです。
 わたしたちは、てんとう虫情報122号に掲載した記事の趣旨に沿ったパブリックコメントを提出していましたが、検討会の回答は以下のようでした。

【質問1】アセトアルデヒドは悪臭防止法による特定悪臭物質であるが、ヒトの検知濃度のレベルにはどの程度の幅があるか。
【回答】ヒトの感受性には個体間差があるため、指針値策定では、不確実係数を用いて補正している。

【質問2】室内を汚染しているアセトアルデヒドの発生源は何と考えるか。
【回答】合成樹脂や接着剤、防腐剤、香料などはいずれも発生源となり得る。エタノールの酸化により発生するので、アルコールの酸化による二次的な暴露や飲酒や喫煙も発生源となる。
【コメント】より具体的な製品名を求めていたのですが、答えはありませんでした。

【他者の意見】アセトアルデヒドがシックハウスの原因とする根拠が不明。
【回答】室内空気中に存在する化学物質は全て多かれ少なかれヒトに何らかの影響を及ぼす可能性がある。公衆衛生の観点から不必要な化学物質の暴露を低減させるために、個別物質につて対策の基準となる客観的な評価を行ってきている。

【質問3】97年に環境庁は航空防除農薬に係る気中濃度評価値を30μg/m3としている。貴検討会でも、この時の資料を入手して、毒性評価の参考にしたと思われるが、その資料ではADIの数値はどのような試験を根拠に、いくらに設定されていたか。
【回答】前略−ADIの算出は行っていない。

【質問4】フェノブカルブの毒性データを評価する際に、農薬登録又は再登録時にメーカーが農水省に提出した毒性データを入手し、検討したか。したならば、その結果は、今回の論議でどのように反映されたか。もし、していないならば、その理由は何か。
【回答】現時点で広く入手可能な科学的知見を元に、ガイドラインの考え方に従って設定している。

【質問5】検討会が、経口毒性試験から得たADI0.041mg/kg体重/日は、農作物の残留基準を決められた際のADI0.012mg/kg体重/日と異なるが、その理由なにか。
【回答】入手したし毒性に係る知見より、設定の根拠となった試験の詳細が公表されているもののうち、最も安全側にたった数値が得られるデータを採用した。
【コメント】公表されていない、農薬登録時に提出されたデータは参考にしていないということでしょうか。同じ厚生省が決める残留農薬基準を決める際に、根拠としたADIをなぜ使わないのか答えていません。

【質問6】指針値は、空中散布後の水田付近と同じ濃度のBPMCを含む空気を一生涯吸いながら生活することを認めるということであるが、委員の先生方はこのことをどうお考えか。
【回答】−前略− ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても、健康へ有害な影響は受けないであろうと判断される数値である。今後、集積される新たな知見などに伴い、将来必要あれば、変更されます。
【コメント】あなたは、一生涯にわたり、毎日農薬空中散布している場所でで暮らすことができますか。

【質問7】今回のADIは、健康な成年男子に適用されるものとして設定されていると考えてよいか。
【回答】不確実係数として、感受性の個体間差×10を加味していることから、この値は、健康な成年男子を含む一般的な全国民を対象としたものです。
【コメント】信じられない答えです。残留農薬基準を決める際のADIは、国際的にも、健康な成年男子を標準においているのに、肝臓病気のある人や妊婦、子ども、老人、その他農薬弱者などを含め、本当に個体間差が×10の範囲に収まるのでしょうか。

【意見8】いずれの物質の濃度指針値も、環境汚染実態を考慮し、より低い値に設定すべきである。
【回答】指針値策定の際には、信頼できる毒性知見のうち最も低い値を与える知見を採用するなど、十分に安全側にたったやり方で従っていると考えている。指針値はこの値までは、良いという意味ではなく、指針値以下であることがより望ましいという意味である。
【コメント】室内汚染物質は、ヒトの健康に悪い影響を及ぼす恐れのある物質であることは確かです。しかし、厚生労働省の指針値は、多くの仮定にもとずいて毒性試験データから算出したもので、指針値以下で、すべてのヒトに悪影響がでないとはいえず、指針値以上ですべてのヒトに悪影響がでるとはいえない、という程度のものでしかありません。それならば、仮に指針値をつくる場合、汚染実態と毒性の両面から算出して、低い方をとるとした方がよほど合理的だと思うのですが。

【他者の質問】今回の2物質について、いわゆるシックハウス症候群としての健康被害報告がありましたらご教授を。
【回答】前略−現状の研究では、指針値が策定された物質と「シックハウス症候群」による体調不良との間に明確な1対1の関係は明らかになっていない。これらについてのは今後の研究、調査が必要とされるが、これらが明確になる前であっても、現時点で入手可能な毒性に関わる知見から、これらの物質の指針値を定め、普及啓発することで、指針値を満足するような建材等の使用、換気、住宅や建物の提供や情報提供、並びに指針値を満足するような住まい方が普及し、多くの人たちが健康悪化を来さないようにすることが期待できると考える。

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作成:2002-08-25