「生活環境で使用する殺虫剤等の規制に関する法律」関係にもどる
t13001#生活環境で使用する殺虫剤等の規制に関する法律(仮称)骨子案2 さらにご意見を募ります#02-07
「生活環境で使用する殺虫剤等の規制に関する法律(仮称)」制定に向けてさまざまな運動を進めてきました。第一回目の骨子案は、てんとう虫情報126号で発表しましたが、その後、法制局との話し合い、東北、関西集会を経て骨子案2をまとめました。
これは6月19日の東京集会で発表しました。集会で行われた植村振作さんの解説とともにお知らせします。この骨子案2は、国会議員や法制局との話し合いを進めながら具体的な法案として煮詰めていく予定です。まだまだ中身は変わってゆきますので皆さまのご意見をお寄せ下さい。
【はじめに】 植村振作
化学物質の規制に関する法律はたくさんありますが、主なものだけを解説しま
す。化審法(化学物質の審査及製造等の規制に関する法律)は、新しくできる化
学物質については、とくに残留性などを問題にしながら規制していますが、既存
の化学物質については規制がかかってないのも同然です。それから、生態系に及
ぼす影響は今まで考えてなかったので、今頃になって審議会で変えていこうとし
ているところです。
農薬取締法は、農作物に使うときだけしか規制がかかりません。この新しい法
律を作ろうと運動を始めた頃、老人福祉施設で農薬を撒いて、第一回目の集会
(2000年10月)の時に問題になりました。農水省は、「老人福祉施設は農地でな
いからどうすることもできない」、厚生省は「それは農薬で、薬事法の医薬品で
ないからどうにもならない」と言ったわけです。それから農薬でもないし、医薬
品でもないような、実際は成分が農薬であるものを、家の中で撒こうが、塗ろう
が何も問題にならないという状態にあるのです。
他にもいろいろありますが、人が直接被害を受けるような薬剤について使用方
法を規制する法律は残念ながら日本にはありません。
その結果、世の中には狭間(はざま)商品がいっぱい出回って健康被害が起こ
っているわけなんです。今あるいろんな法律には全部抜け道が、あるいは抜けて
いるところがある。考え方として不十分なところがあるから、それを全部ひっく
るめてしまって規制できないかと考えました。
例えば、環境関係で言うと、環境基本法とか、放射性物質の場合だったら原子
力基本法なんていうのが個別の法律の上の方にあるわけです。そういう格好で新
しい法律を作ろうかと考えました。いわゆる化学物質基本法ですね。だけど、こ
れをやると、とてつもなく時間がかかるし、現実に被害を受けている人たちもい
るし、一番緊急性のあるものから取り組むことになりました。将来は化学物質基
本法を考えないといけないと思います。それを抜きにして個別的にやっていくと
必ず抜けたところが出てきますから。
今回考えた法の目的は、生活環境で使用する殺虫剤等の製造、使用、廃棄の総
括的な規制です。どの法律を見ても廃棄のことはないんです。私は今田舎に引っ
越していますが、その家では以前ミカンを作っていたのですが、そこには使われ
ない農薬が残っていて行き場がないんです。川に捨てたり、燃やすわけには行か
ないですね。ゴミとして市役所で持っていくかというと行かないんですよ。しょ
うがない、小屋の横の方にビンがおいたままになっています。そのうちにビンの
ラベルがわからなくなってしまう。人によってはもうエーイっと川に捨ててしま
うかもしれない。それが結果的に魚が大量に死ぬなんてことになる。そういうこ
とがないように化学物質の管理を考えた場合は必ず廃棄まで考えないといけない
のです。
規制の範囲を、一般生活環境で使用される殺虫剤等と全てを対象にするので、
今まで問題になっている法律の中身についても影響が出てくる可能性がありま
す。これらについて個別的に話します。
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生活環境で使用する殺虫剤等の規制に関する法律(仮称)骨子案2
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(A)法全体に係る事項
(1)生活環境での殺虫剤等の使用はできるだけ避ける。
(2)生活環境で使用する薬剤は国の許可が必要。(ポジティブリスト)
(3)やむを得ず使用する場合は使用許可が必要。(使用禁止区域の設定、
立入禁止期間の設定など)
(4)生活環境での殺虫剤等の使用者は許可条件を厳守しなければならない。
(5)類似化学構造の殺虫剤の総合規制
個々の化学物質の規制だけでなく、類似の化学構造を有し、その作用機構が
共通の殺虫剤等については、一つの化合物群として規制すべきである。
(6)事前影響評価制度の導入
メーカーは、殺虫剤等の毒性試験や環境影響評価を実施し、すべての試験
報告書を製品の販売前に公開し、パブリックコメントを求める必要がある。
消費者との合意の後に初めて、製造販売できるようにすべきである。
(7)事後影響評価制度の導入
殺虫剤等の使用開始後に生活環境影響評価を行ない、その結果をもとにヒト
の健康への影響を再評価する制度を設ける。
(8)予防原則の導入
ヒトの健康や生態系に被害を及ぼすおそれのある殺虫剤等の影響評価では、
因果関係が科学的に完全に立証されていなくとも予防的措置を講ずるべきで
あるという、いわゆる予防原則を導入すべきである。
(9)総合防除管理(IPM)やオルターナティブの普及
国は殺虫剤等を使用しない代替法の研究、普及をはかる。
(10)情報公開の原則
・殺虫剤等を製造・販売・使用するメーカーは、毒性試験や生活環境影響評価
のデータの文献調査を実施し、その結果を消費者に提供する
・メーカー自ら作成した毒性試験や生活環境影響評価データはすべて公開する
・製品に含有される成分名とその含有量の表示義務
・行政の審議会等で論議された毒性試験や環境影響評価などの審議過程をすべ
て公開する。
・製品の生産・販売量の報告・公表義務
(11)事故対策・被害者の救済
・殺虫剤等による健康被害が発生した場合、直ちに保健所等に届け、原因究明
に当たること。
・国・地方自治体は、被害者の相談(環境分析、法律、医療)窓口を設ける
・殺虫剤等による健康被害者のための医療機関を設ける
(12)宣伝・販売の規制
・殺虫剤等の宣伝をする者はその危険性、使用方法を十分周知する
・殺虫剤等の販売は薬剤師のいる場所でのみ行い、販売者は使用方法を十分に
説明し、危険性について周知する義務を負う
・安全性を強調する宣伝の禁止
(13)表示は毒性情報を強化する
(14)廃・残薬剤はメーカーが回収する義務がある。(個人使用の薬剤も含めて)
(もしくは、清掃法施行令を変更して「特別管理一般廃棄物」に廃・残薬剤を
入れて、化学薬品等の回収処理制度を確立する)
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(B)農薬取締法に係る農薬について
(1)非農耕地用除草剤などは農薬取締法の適用を受ける。
(2)住宅地での農薬使用規制(ガーデニングも含む)
景観のための農薬使用禁止(街路樹、庭木、学校、公園などの樹木、
草花への農薬散布禁止)
(3)住宅地付近にある農用地での農薬使用規制
農薬取締法を改定し、使用規制を強化する。例えば、化学物質過敏症患者の
近く○メートルでは農薬使用を禁止。農薬散布する場合、近隣に日時時間、
薬剤名、注意事項を知らせなければならない、夜の農薬散布禁止など。
*○メートル 例えば、カナダ・ハリファックス市の条例では50メートルと
なっている。この数値は化学物質過敏症の専門医と相談して決めるべき。
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(C)シロアリ防除剤・木材防腐剤について
「建築基準法」や「JAS」や「JIS」に係る薬剤で、現行法での使用規制
はない。
(1)使用薬剤は、国による許可制にする。個別に使用場所、使用方法、使用上の
注意をを明記する。
(2)上記許可に際しては、予防原則を適用する。
(3)使用する薬剤の毒性、残留性、環境での消長等に関する情報はすべて公開す
る。
(4)防除業者は国による資格を得なければならない。
(5)防除剤を使用するときには、(1)の使用方法を守り、使用日時、使用時間、
使用場所、使用薬剤名、使用薬剤の性状(毒性・残留性など)、注意事項等
をあらかじめ近隣に告示しなければならない。
(6)防除業者は近隣から薬剤使用中止の要望があった場合、薬剤散布以外の方法
をとらなければならない。
(7)使用薬剤による健康被害の訴えがあった場合、業者は第三者機関に届けなけ
ればならない。第三者機関は原因究明、補償交渉を支援する。
(8)使用方法を守らない防除業者は許可を取り消される。
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(D)衛生害虫駆除剤
家庭やビル等の建築周辺や内部(電車、バス、船舶、航空機などを含む)で
使用されたり、ペットなどに適用される殺虫剤で、「薬事法」「感染症予防
及び感染症の患者に対する医療に関する法律」「建築物における衛生的環境
の確保に関する法律」「学校保健法」「道路運送法」にもとづく「旅客自動
車運送事業運輸規則第四十四条」「旅客自動車運送事業者は、事業用自動車
を常に清潔に保持するほか、毎月少なくとも一回消毒を実施して、その旨を
車内に表示しなければならない」とある)に係る薬剤で、現行法での、使用
規制はない。
(1)使用薬剤は国の許可を得なければならない。
*薬事法から殺虫剤・動物用殺虫剤を除き、新法で規制する。製造・販売に関
してはシロアリ防除剤に準ずる。
(2)防除業者は薬剤の危険性を認識し、周辺住民等に適切な注意をしなければな
らない。
(3)使用薬剤による健康被害の訴えがあった場合、業者は第三者機関に届けなけ
ればならない。 第三者機関は原因究明、補償交渉を支援する。
(4)使用方法を守らない防除業者は許可を取り消される。
(5)予防的な過度の薬剤使用を規制し、国は害虫等の生態及び代替法の研究、普
及をはかる。
(6)個人が一般住宅で使用する場合でも近隣に被害を与えないよう注意義務を課
する。
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(E)不快害虫用殺虫剤・衣料防虫剤
アリ、ダンゴムシ、ヤスデなど衛生害虫以外の昆虫類を対象とする殺虫剤や
衣料用の防虫剤で、取り締まる法律はない。
(1)薬剤の製造、使用はシロアリ防除剤に準ずる。
(2)薬剤の販売は薬局以外で禁止。薬剤師は毒性情報等を正確に購入者に知らせ
なければならない。
(3)個人で使用する場合、使用方法を厳格に守る。
(4)薬剤使用をあおる宣伝の禁止。
(5)国は不快害虫や衣料害虫の生態及び代替法の研究、普及をはかる。
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(F)その他の製品
建築資材、家具、壁紙、インテリア、畳用防虫紙、電気掃除機紙パック、
塗料・接着剤、文房具、衣料品、トイレ用品、日用品、その他工業製品で
殺虫剤・抗菌剤等を添加した製品。
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」を廃止し、新法で規制
する。
(1)国が認可した成分で、製品毎で決められた適用方法でしか添加できない。
(2)製品毎に成分名、含有量の表示を義務づける。
(3)製品毎に、蒸散などによる生活環境影響評価実施を義務づける。
(G)罰則
これはまだ具体的に検討されていません。
以上
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作成:2002-07-28、更新:2002-09-23