空中散布・松枯れにもどる
t13101#全松枯れ空散面積を1万4千ヘクタールも少なく発表−農水省生産局長通知のお粗末#02-08
 農水省植物防疫課は、8月12日付のプレスリリースで、6月11日に公表した平成14年度農林水産航空事業の実施計画を修正しました。修正された数字はなんと松枯れ空散面積が13,952ヘクタールも増えています。こんないい加減な数字を発表するとは信じられません。
6月11日報道発表 8月12日報道発表 都道府県別散布面積は行政からの通知や報告の備考欄(GIFファイル)をみてください。

 そもそも、ことの発端は、反農薬東京グループ、日本有機農業研究会などが農林水産航空協会による空散の調停は独占禁止法に触れるのではないかと指摘したことに始まります。公正取引委員会も勧告したため、農水省は昨年10月、1962年の空散根拠通知「農林水産航空事業促進要項」「農林水産航空実施指導要領」を改定し、「農林航空事業の実施について」という通知を出しました。しかし、この事実を指摘した私たちには一言も知らせませんでした。ようやく隠しきれなくなって出してきたのが今年の3月でした。(詳細はてんとう虫情報127号)

 この新しい通知では、農水省生産局長が「毎年事業開始前に全国の当該事業に関する計画を取りまとめ、公表するものとする」となっています。昨年まではこの仕事は農林水産航空協会がやっていました。それが調整行為に当たるとされたのかどうか不明ですが、農水省は各県の数字を取りまとめ、県別市町村別に実施日、空散面積、散布薬剤などを作成し、合計の数字のみをホームページに発表しました。植物防疫課に行けば市町村別の細かい内容を閲覧できるというのです。これでは、公表とは言えません。希望者には郵送すべきです。
 当グループはその閲覧用資料を手に入れ、当時、空散中止運動の相談を受けていた長野県の状況を調べました。そこで、他の県では空散面積は延べ面積になっているのに、長野県の実施面積の数字が実面積になっていることに気がつきました。松枯れの空散は通常、年2回です。ですから長野県はその半分の数字を報告していたわけです。
 実面積と延べ面積が入り交じっていたのでは統計の意味をなしません。林野庁と植物防疫課に連絡をすると、植物防疫課は長野県からの訂正のメモを送ってきました。しかし、その訂正もまた国有林と民有林がごっちゃになっていて、国有林がダブルカウントされていました。担当者にきちんと調査して早急に訂正するよう求めましたが、埒があかないので7月8日付けで植物防疫課長宛に、質問状を出しました。

★訂正内容に仰天
 8月13日に、植物防疫課からファックスで回答があり、その中身をみて仰天しました。なんと、松枯れ空散面積が1万4千ヘクタールも増えていたのです。実面積で報告していたのが長野県(+987h)ばかりでなく、鳥取県(+5148h)、広島県(+3095h)、山口県(+1703h)、大分県(+71h)とそれぞれ半分に報告していました。さらに、福井県は数値そのものがどこかに紛失していて(植物防疫課の話)ゼロになっていました。おまけに、島根県は集計ミスとやらで合計数値を1734ヘクタール少なくしていたのです。結局、民有林の合計面積は77,109ヘクタールで、実に10,866ヘクタールも少なく報告していたのです。
 驚くべきことはこればかりでなく、国有林の面積はすべて実面積(+3086h)で報告され、半分になっていました。この数字を出したのは林野庁です。これらを全部合わせると、松枯れ空散面積は13,952ヘクタール増え、合計で83,281ヘクタールになったのです。訂正する前の数字は69,329ヘクタールだったので、ずいぶん減ったと思っていたのですが、昨年の数字が88,820ヘクタールですから、ほとんど減っていないということがわかりました。
 黙っていたらこの数字が公式の空散面積として歴史に残ったでしょう。こんないい加減な仕事をして税金で給料をもらっている公務員に腹が立ちます。8月12日付の農水省のホームページでは「下記のとおり一部修正したのでお知らせする」とあるだけで、生産局長通知が何故このように修正しなければならなかったのか、どう対応するのか一言も書かれていません。間違ったことに対するお詫びもありません。
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作成:2002-08-25