改定農薬取締法関係にもどる
t13301#無登録農薬・失効農薬の販売・使用禁止を明確にし、回収を義務づけよう#02-10
 去る10月4日、山形県無登録農薬販売事件で、逮捕された業者に対する初公判が、山形地裁で開かれました。検察の冒頭陳述では、犯罪事実についてだけでなく、その背景に関する論述にも時間がかけられ、何度も立入検査しながら、無登録農薬販売を防げなかった山形県の不作為行為と隠蔽工作を行なった体質が厳しく指摘されました(前号で、大阪市からラ・フランスにダイホルタンが残留している旨の報告を受けた山形県が、農家や販売業者にチラシを配るなど一般的指導をしたと、記しましたが、検察の陳述によると、県農業技術課は、生産者保護の意識から、使用が表沙汰にならないように、次に検出されるまでは、公表しないことにしていたそうです)。
 しかし、無登録農薬を長年、見逃してきたのは、何も山形県に限ったことではありません。この2ヵ月あまりの立入検査で、無登録農薬として、登録失効前に購入ストックされていたPCNBやダイホルタン、さらには、日本では聞きなれない名の外国農薬が出回っていたことも判明してきました。全国ほとんどの県で、これら、無登録農薬が使われており、山形県での購入農家数は319戸でワースト4にはいりますが、100戸以上の県は、秋田、新潟、石川、群馬、茨城、千葉、静岡、熊本の9県におよびます。これらの県でも、無登録農薬の販売・使用の取締りが見過ごされてきたわけで、最大の責任は指導官庁である農水省にあるといえます。
 その農水省が、あいもかわらず、自らの責任を回避するような通知をだしていることがわかりました。

★農薬工業会への農水省の通知
 農水省は、都道府県が実施している立入検査において、無登録農薬と登録失効農薬を分けて報告するよう指示していましたが、9月20日には、農薬工業会に「登録失効農薬の扱いについて」という文書通知を出しました。そこでは、「登録失効農薬については、現在問題となっている無登録農薬と異なり、農薬取締法違反として販売禁止を行えるものではないため、これまで行政指導により、その販売及び使用の規制を行っていたところです。これは、農薬取締法の根幹である登録制度を厳格に運用し、法秩序の維持を図ることを目的としてきたものです。
 今後とも登録失効農薬については、従来通りの指導を行ってまいりたいと考えておりますので、引き続き貴会会員への御指導方お願いいたします。」と述べています。
 ここでいう無登録農薬とは、農薬取締法第七条に記載された登録番号など正規の表示のない農薬のことです。また、登録失効農薬とは、かって登録されていたが、現在、登録のない農薬のことです。この通知の意味するところ考えてみましょう。

★問われるのは農水省の不作為行為 −省略−

★農薬対策室長も登録失効農薬の販売はできないとしていたが
 農薬取締法第九条の第一項には「販売業者は、容器又は包装に第七条(−略−)の規定による表示のある農薬でなければこれを販売してはならない。」とあり、農薬販売業者は、無登録農薬を販売することは禁じられています。ダイホルタンやシヘキサチンを販売した業者は、登録番号ほかの表示がなかったため、この条項違反に問われたわけです。
 では、登録失効農薬についてはどうでしょう。実は、販売業者が、登録失効した農薬を販売してはいけないという条文はどこにもないのです。
 常識的に考えれば、販売時点で、登録が失効している農薬は、たとえ最終有効期限内にあっても、その登録番号が存在しないことになり、表示の形式が正規のものであっても販売できない。また、登録農薬であっても、有効期限が過ぎた農薬を販売することはできないということになるでしょう。この解釈は素人の私たちだけでは、ありません。農薬対策室室長ですら、「失効後のものは、現行法においても販売することはできません。」と発言していました(農業経営研究02年10月号、p-23)。
 しかし、農水省は、次のように解釈します。かって登録されていたり、有効期限がすぎた農薬についても、表示はきちんとされており、前記条文に違反しない、従って、農薬取締法では、販売を禁止できない。流通を規制しようと思えば、通知で、業者に販売しないでほしいとお願いするしかない。
 いずれの見解が正しいのかと室長に問い合わせたところ、いとも簡単に先の自分発言は間違いだったと訂正されましたが・・・・。

★回収もお願いするしかない −省略−

★販売・使用の禁止と回収義務の条文化を
 上記のような農薬取締法の不備と法運用の抜け穴をふさがなければ、無登録農薬問題はいつ再発するかわかりません。それでは、具体的に穴を埋めていきましょう。
 農薬の種類毎に、販売業者と使用者にわけて、禁止すべき事項を考えます。
(a)無登録農薬:これには、いくつかのケースがありますが、共通点は、農薬登録番号がない製品です。個人輸入を含め、販売及び使用はすべて禁止とし、即時回収する義務を負わせます。
(b)登録失効農薬:製造販売をやめる理由を明確にすることが前提になります。毒性・残留性を理由に製造廃止又は再登録しない場合は、第六条の三により登録を取消し、販売及び使用の禁止を明確化し、即回収も義務付けます。メーカーの経営上の都合による製造廃止又は再登録なしは、同等に扱い、販売は禁止し、使用については、最終有効期限内は継続使用を認めるが、期限切れになった時点で、使用禁止し、回収義務を負わせます。
(c)農薬もどきの農業資材:肥料・栄養剤や土壌改質剤などと銘うっていても、農薬類似の化学物質を含むものは、農薬として扱います。
(d)登録農薬:使用者に適用病害虫の範囲・使用方法や安全使用基準遵守を義務付け、適用外使用は禁止します。期限切れ農薬については、販売及び使用を禁止し、回収を義務付けます。

 以上をまとめると次の表のようになります。農薬の販売及び使用の禁止を明確に法の条文に組み込むととも回収を義務付けることが主眼です。
 もちろん、これらは、前号で述べた、販売・防除業者を有資格の許可制にする、また、農家・一般使用者を免許制度にした上での話です。
    農薬の種類             販売業者  使用者   回収義務
   (a)無登録農薬
    =登録番号のない農薬         禁止   すべて禁止  即回収
    (ヤミ農薬/輸入農薬/            個人輸入
    非農耕地用/他の化学品の転用)        も禁止

   (b)登録失効農薬
    理 毒性・残留性に問題
       →第六条三による取消      禁止   すべて禁止  即回収
    由 製造廃止届            禁止   期限切禁止  期限切回収
      再登録なし            禁止   期限切禁止  期限切回収

   (c)農薬もどきの農業資材=農薬類似成分を含むものは農薬として扱う

   (d)登録農薬
     期限切れ              禁止   禁止      回収
     適用外使用             −    禁止

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作成:2002-10-25