改定農薬取締法関係にもどる
t13402#農薬取締法改定に提案−罰則強化の拙速な改定より抜本的改定をめざそう#02-11
10月25日、農薬取締法の一部改正する法律案が閣議決定され、臨時国会に上程されました。この改定案の提出理由は『近年における農薬の流通の多様化の状況等にかんがみ、農薬の品質の適正化その安全かつ適正な使用を図るため、農林水産大臣の登録を受け手いない農薬の製造、加工及び輸入並びに使用を禁止するとともに、輸入媒介を行なう者が農薬の有効成分の含有量等に関して虚偽の宣伝をすることを禁止する等の措置を講ずる必要がある。』とされています。
−中略−
【1】主な改定内容と問題点
−以下の項目毎の解説は略−
(1)あいまいな特定農薬、現行の農薬でも毒性試験を免除されているものがある
(2)防除業者の規制がなくなる
(3)農業現場では、登録農薬と特定農薬しか使用できない
(4)農水省令・環境省令に反した使用は不可/防除員の指導を受ける努力が必要とされる
(5)罰則の強化
★【2】抜本改正が必要だ
今回の無登録農薬対策をめざす政府改定案は、農薬の作物残留を重視するあまり、土壌残留性農薬の規制をはずす/防除業者の規制をはずす/非農耕地用薬剤を規制しない等にみられるように、農薬の自然環境・生活環境汚染防止の観点が軽視されており、ある意味では改悪された法案になっています。
その上、農薬の毒性情報や事故情報を公開することもなく、流通業者、防除業者、生産者などに対する研修制度を整えず、単に罰則強化で販売・使用を規制しようとするやり方では、はたして、ほんとうに農薬の不適切な使用がなくなるのかと疑問が残ります。
また、改定案は、特定農薬の指定/使用基準を示す省令の発布など、早急に決めるにしては、論議の多い内容を含んでいます。
このような実効性の疑わしい生半可な改定案を、拙速に成立させる必然性はどこにもありません。
農水省は、とりあえず、この改定案を成立させ、来年の通常国会で、食品安全基本法(仮称)を作って、農薬取締法・肥料取締法ほかの関係法を整備するとしていますが、これらも、食品をターゲットにしたもので、農薬による環境汚染を防止するものではありません。
農薬は田畑などの開放系で使用され、環境ホルモンの疑い掛けられた化学物質の大半が農薬であることからも理解されるように、農産物汚染だけでなく野生生物への影響が懸念されます。
私たちは、てんとう虫情報132及び133号で、農薬取締法改定案に折り込みたい内容を示してきましたが、今回の政府改定案を踏まえて、あらためて、以下のような抜本改定をめざしたいと思います。
★【3】抜本改定骨子案
*農薬登録と情報公開について
(1)特定農薬
登録を受けなければ、個人でも企業でも農薬の製造/加工/輸入できなくなるとともに、新に「特定農薬」とうものがでてききました。この農薬の定義は、きわめてあいまいな上、何の試験もせずに、農水大臣及び環境大臣が指定できるというのは問題です。だいいち、特定農薬指定についての意見を述べる農業資材審議会でも、何を基準にしてよいか困るでしょう。虚偽の宣伝規制の条文があっても、栄養剤とか活性剤などの農業資材として、農薬成分を含む偽の特定農薬がでてくる恐れもありますから、せめて、薬効、製造方法、成分分析についての提出を義務付け、その生産使用量なども把握しておくべきです。
(2)毒性・残留性試験の強化と情報公開
農薬製剤は、活性成分と補助成分からなっています。補助成分を含む製剤についてはいくつかの試験が必要なものの、補助成分そのものについての毒性試験は不要です。製剤中に含まれている補助成分を明らかにし、慢性毒性試験等を実施すべきです。
農薬は、化審法が適用されませんが、その含有成分で、化審法による既存化学物質番号や新規化学物質番号のあるものは、登録申請時に届出させ、化学物質の一元的管理に役立てるべきですし、PRTR法の指定物質であることの明記も必要です。
水産動植物や野鳥、昆虫、両棲類等の生態系に及ぼす農薬の影響についての試験は、もっと強化すべきです。
農薬登録時に提出される毒性・残留性試験データなどの情報公開は不十分です。製剤成分及び含有される不純物の含有量なども公開すべきです。公開を義務づける条文と公開されたデータの盗用防止の条文が必要です。
また、農薬登録者には、毒性・残留性に関する文献調査結果の提出を義務付け、その内容を公開させることも必要です。
(3)職権による登録取り消しを積極的に
第六条の三(職権による適用病害虫の範囲等の変更の登録及び登録の取消し)の条文の内容には、変更はありません。今回の無登録農薬事件で、この条文の内容が、きちんと実行されていたら、これほどの騒ぎにはならなかったでしょう。
ダイホルタンの発がん性は、登録失効した1989年には、わかっていたことですし、PCNBのダイオキシン含有は、登録失効以前の1997年春には判明していました。登録失効理由を製造上の理由などとあいまいにしないで、それぞれ、その時点で、毒性や有害性に関する事実を周知し、大臣の権限で、登録を取り消し、第九条に従い通り、販売を禁止すればすむことだったのです。
今後、農水大臣は、登録取り消しなど、積極的にその権限を行使すべきです。もし、その職務を怠ったため、環境や人の健康に被害がでた場合はもちろん、農業生産面で風評被害がでた場合も、行政は責任をとるべきです。
(4)農薬登録の失効と公告
いずれの条文も内容的には、現行法とかわりません。登録失効の理由があいまいなこと及び公告が周知徹底されなかったことが、無登録農薬事件の発生の背景にあることを考えれば、再登録しない場合にもその理由を明記した届を提出させ、製造廃止届の提出に際しても理由を記載させることが必要です。
さらに、農薬登録に関する公告が必要なのは、製剤登録時/大臣権限で登録変更・取り消し/製造廃止や成分変更による登録失効/水質汚濁性の指定関連/製造・輸入者の法違反による取り消し、についてですが、再登録しない場合にも公告すべきです。また、失効の場合は、その理由を周知させることも必要です。
(5)容器表示
農薬の包装容器には、登録番号など11項目の表示が義務づけられていますが、これだけでは、十分とえいません。
含有成分の種類及び含有量の表示が必要ですが、補助成分については、溶剤、着色剤など一般名しか記載されていません。化学物質名をきちんと書くべきです。
MSDS(化学物質安全性データシート)は、毒劇農薬については、添付が必要ですが、一般農薬についても、データシートを添付し、中毒時の応急措置、廃棄上の注意、動物実験で発がん性や催奇形性が認められている場合は、その旨の記載などが必要です。また、PRTRの指定物質はその旨表示すべきです。
特定農薬については、他の農業資材と区別するためにも、その旨、表示すべきです。
使用上の注意もあるのですが、同じ製剤でもメーカーによって、その内容にバラツキがあり、あるメーカーのものには、散布後最小限その当日、散布区域に縄囲いの指示があるのに、別のメーカーのものには、そのような記載はないといった具合です。内容を統一すべきです。
*農薬の販売・使用・回収について
(1)販売者には資格許可制度を
改定案では、販売者の事前届出制度がとられ、登録農薬と特定農薬以外販売できなくなりますが、なんの資格もなく販売できるという点で、現行法が踏襲されていることは、納得できません。
「群馬県における農薬の適正な販売、使用及び管理に関する条例」の第7条(群馬県農薬管理指導士の設置)に『販売業者は、その営業所ごとに、農薬に関する専門的な知識を有する者として知事が認定する群馬県農薬管理指導士を置くよう努めるものとする。』という条文を設けられたのは、販売者の責務が重要だと考えられたからです。
毒劇法では、農業用品目販売業は、登録制度をとっており、適切な貯蔵設備をもつこと、資格をもった毒物劇物取扱責任者をおくことが義務付けられています。
毒劇指定の有無に拘わらず、農薬の販売者には、別途、資格許可制度が必要です。
(2)防除業者には資格免許制度を
毒劇法では、毒劇物を散布するしろあり防除業者は業務上取扱者の届けが必要ですが、農薬防除業者を含め、毒劇薬を使用する者はすべて、届出制度にするとともに、農薬取締法では、防除業者を一般使用者と同列に扱うことなく、資格許可制度を導入する必要があります。
広範に飛散する空中散布・無人ヘリによる散布、多数の人が立ち入る街中や学校・公園などでの散布などでは、届出防除業者が従事しても、いままでも、問題が絶えませんでした。
環境汚染につながりやすいゴルフ場での農薬散布などでは、業界が自主的に「緑の安全管理士」のような認定制度をとってもいます。今後、農村の高齢化に伴ない、業者による農薬散布が増えることも予想されますから、一般人よりも多種多量の農薬を取り扱う専門の防除業者は特別な資格許可制度の下で、管轄するのがベストです。
(3)農家・一般の使用者も資格免許制度にする
農薬使用者が、農薬取締法でどのような規制がなされているかも知らずに、農薬を購入し、容器表示の内容を理解せずに、散布することは、自分の身にとっても危険なわけですから、農家や一般の使用者に対して、講習や研修を行い、農薬取り扱いの免許資格を与えるような制度を設けるべきです。
群馬県条例の第五条(農薬使用者の責務)では 『農薬使用者は、安全な農産物の生産を確保するために、農薬に関する知識を自ら修得するとともに、農薬を適正に使用し、及び管理しなければならない。』されていますが、このような、自助努力では、限界があります。きちんとした講習・研修を義務づけた免許資格制度をつくり、ひとりひとりが自動車の運転免許制度でいえば、防除業者は大型免許、一般は小型免許といった具合に、使用免許をとるようにしたらと思います。
また、免許取得にあたっては、使用者に農薬に関する毒性情報等を周知させることも忘れてはなりません。
(4)非農耕地用薬剤に農薬取締法適用
改定案では、非農耕地用薬剤を農耕地に使用することは禁止され、無登録農薬追放のキャンペーン運動をした農薬業界や農業団体の主張は実現しましたが、農薬と同じ成分を含む非農耕地用薬剤(空き地、公園、河川敷、鉄道、その他で散布する除草剤など)の製造・輸入・販売・使用については、何の歯止めもかかりませんでした。
農水省は、いままで、非農耕地用薬剤も農薬登録をとるよう指導してきましたが、その効果はなく、非農耕地用の無登録除草剤等は増える一方でした。現に非農耕地用登録農薬もあるわけですし、農薬取締法で、きちんと農薬登録をとるよう義務付ける必要があります。農薬の定義の中にに、非農耕地における雑草等の防除その他省令で定める場所での農薬類似薬剤の使用においてもこの法律を準用することを明記すれば、いいだけだと思います。
(5)自然環境汚染防止、生態系保護の観点から農薬使用規制を
改定案では、土壌残留性農薬規制に関する条項が除かれ、条文で特記されるのは水質汚濁性農薬だけになってしまいました。
土壌残留性農薬の定義を「農地等の土壌の汚染を生じ、環境に悪影響を与えたり、人畜に被害をおよぼす恐れのある種類の農薬(その代謝分解物を含む)」として、復活させる必要があります。
農薬は自然環境に直接に散布する殺生物剤ですから、昆虫、野鳥をはじめとする動植物など生態系保護のためには、その使用量をできるだけ減らさねばなりません。生態系への影響評価の試験内容を厳しくするだけでなく、減農薬をめざす代替策の推進も農薬取締法に取り入れるべきです。
(6)生活環境での農薬使用規制
農薬を家庭用殺虫剤として使用してもお咎めなしというのが現行法ですが、改定案でも、この点は何らかわっていません。農薬を農薬以外の用途に使用しないという条文を付け加える必要があります。
今夏、埼玉県で、防除業の届出のないシルバー人材センターが、複数の劇物殺虫剤と環境ホルモン作用のある展着剤を混合して公園の樹木に適用するという、でたらめな散布が行なわれました。改定案では、無届け業者が処罰の対象でなくなります。こんな場合の苦情を都道府県の担当部署にもちこむと、きちんと指導してもらえるのでしょうか。
航空機や無人ヘリによる空中散布のような広範な地域を汚染する農薬散布の規制も必要ですし、地上散布でも近隣住民に被害を与える例が絶えません。横浜市では、農薬散布で近隣住民に被害を与えないために、散布の内容を事前する通知するなどのガイドラインを作成中ですが、このような動きを推進する体制を法律でバックアップすべきです。
農薬に反応しやすい化学物質過敏症患者の居住する周辺では、農薬散布そのものを制限する必要があります。市街地や住宅地での生活環境での景観保護のための農薬使用はやめるようにすべきです。
(7)登録失効農薬や期限切れ農薬の販売・使用禁止を
−略−
(8)安全使用基準と適用方法の遵守の義務づけ
改定案では、規定の表示のある農薬と特定農薬以外は使用禁止になるとともに、省令で定めた使用基準違反も規制されることになりますが、どのような省令がでてくるか、監視の眼を光らせていなければなりません。かりに、現在の農薬安全使用基準や登録保留基準がそのまま省令となり、適用外使用も禁止されるようになっても、今のままの体制で、監督指導がきちんとできるかどうかは疑問です。使用者に対する罰則強化にたよらず、上述の免許制度の中で、講習・研修をしっかりしていくことが大切と思います。
現行の安全使用基準は、個々の農薬についてのものであり、複数の農薬を次々使用することや、農薬の混合使用についての基準がないことも問題視すべきです。
花卉や植木は人が食べるわけではないので、登録時に提出すべき試験データも少なくてすみますが、多品種にわたるため、適用外使用も多いのではないかと思われます。今回の農水省調査でも、外国産の無登録農薬がいくつもみつかりました。岩手県や宮城県では、農業高校でも使用されていたくらいです。非食用農作物といえども、散布者自身への影響や環境への影響を考えると、安易な農薬使用は厳禁です。生け花から、農薬が蒸散して、室内を汚染したということがないように、適用外使用規制を強化すべきです。
農薬大気濃度基準は、航空機防除の場合に若干の指針があるだけで、生活環境における農薬大気汚染防止のための規制はなきに等しいのが現状です。
農作物への残留農薬を問題にするだけでなく、自然環境、生態系、生活環境の保護にも視点をおいた省令を作る必要があります。
(9)残・廃農薬の回収義務づけ
−略−
(10)販売・使用・回収をまとめると
てんとう虫情報133号に、農薬の使用禁止・回収についての、私たちの考えを、
一覧表にしましたが、改定案では、どうなっているかをみてみましょう。
私たちの提案が、折り込まれたものには ○、折り込まれなかったものには、×印をつけましたが、○は(a)無登録農薬のみで、あとの殆どは×です。登録失効農薬で、第六条三による取消は、現行法の運用次第ということで、甘くみて△にしました。適用外使用は、安全使用基準も含むの意ですが、△にしました。これは、省令で今後決められる内容次第で○になる可能性もありますが、果たしてどうでしょう。
ということで、表にすると、改定案は、まだまだ、不十分なものであることが一目瞭然です。
農薬の種類 販売業者 使用者 回収義務
(a)無登録農薬
=登録番号のない農薬 ○禁止 ○すべて禁止 ×即回収
(ヤミ農薬/輸入農薬/ ○個人輸入
非農耕地用/他の化学品の転用) も禁止
(b)登録失効農薬
理 毒性・残留性に問題
→第六条三による取消 △禁止 △すべて禁止 ×即回収
由 製造廃止届 ×禁止 ×期限切禁止 ×期限回収
再登録なし ×禁止 ×期限切禁止 ×期限回収
(c)農薬もどきの農業資材=×農薬類似成分を含むものは農薬として扱う
(d)登録農薬
期限切れ ×禁止 ×禁止 ×回収
適用外使用 − △禁止
*その他の事項
(1)帳簿
農薬の不適切な製造・輸入・販売が行なわれていないかをチェックするために、取り扱った数量等を真実かつ完全に記載し、その帳簿を3年間保存することが求められています。これらの数値の一部は、農薬要覧の統計値として、公表されています。一方、毒劇農薬については、毒劇法で、販売者の譲渡書面を5年間保存することになっています。両者の整合性が求められます。
使用についての帳簿は、改定法では、何も触れられていません。
群馬県条例には、第9条(農薬の管理)の2項に『使用した農薬について、購入の状況、使用の時期、希釈倍率、使用量、使用した農産物等を記録し、三年間その記録を保存するよう努めるものとする』とあります。このような使用帳簿は、トレーサビリティ(栽培履歴追跡調査)やPRTR法による有害物質の排出量報告を農家に義務付けることにつながりますから、食の安全や環境保全に有益です。
使用者に農薬購入状況の記録や使用履歴を記載した書類の作成を義務づけることが必要です。
(2)虚偽の宣伝等の禁止
改定案では、無登録、未登録農薬を登録農薬であるかのように宣伝することは禁止され、直接農薬を取り扱わない輸入媒介者も規制の対象になります。文書で、登録を受けていると誤認させるような宣伝は証拠がはっきりしていますが、農薬とは言わずに、肥料だとか活性剤だとか口頭で宣伝する場合は、どのようにして取締るのでしょうか。
てんとう虫情報132号で紹介した除草剤「カラス」のように、登録名以外の別称を併記することも禁止してもらいたいと思います。
FAOの「農薬の流通及び使用に関する行動基準」にみれるように、安全性を強調し、毒性について、誤解をあたえるような文言−普通物とか環境にやさしいなど−を宣伝に使うことも禁止すべきです。
(3)輸出にも農薬取締法の適用を
輸出用農薬については、1951年の法改定で、農薬取締法適用除外となりました。
1974年には、日本で使用禁止されたBHCやDDTが輸出され問題となりましたが、行政指導がなされただけ終りました。1979年に「農薬の輸出入について」(54農蚕第6456号)という通達で、輸出農薬についても、毒性に問題のあるものを規制しようする姿勢がかいま見られ、輸入だけでなく、輸出実績の報告も求められました。翌80年には、投資先で農薬が人や環境に悪影響を与えないよう配慮すべきだという観点から、「農薬製造業の海外投資行動等について」という通達が出されたものの、この指導はいつの間にか、反古になりました。
最近では、この適用除外条項の存在ゆえに、国内生産を自粛した三井化学が、何のおとがめもなく、ダイオキシン含有PCNBの生産を続け、アメリカほかに輸出していました。また、モザンビークでは、ODA援助で輸出された農薬が、未使用のまま放置され、その処理が問題になっています。 これらは、農薬取締法で、輸出農薬についての規制が明確でないことが、一因となっています。
農水省は、通達では輸出についても農薬の種類・数量・相手先の報告を求めているわけですから、輸入と同じように、帳簿の作成を義務づけることは、さしてむづかしいことではありません。
地球規模の環境汚染防止のためにも、海外合弁会社での農薬製造のチェックは必要ですし、輸出相手国で農薬が安全使用がなされているか、健康被害や環境被害はでていないかを確認することも求められます。
国際的には、ロッテルダム条約で、毒性等の事前通報同意制度(PIC制度)がとられていることもあり、国内で使用規制のある農薬(毒劇、水質汚濁性、土壌残留性など)や毒性問題で登録失効した農薬の輸出に際しては、国内法による規制を援用できるよう、適用除外の条項を撤廃すべきです。
(4)マイナー作物への安易な農薬適用拡大は食や環境に有害
改定案で、使用者=農家に対する罰則強化が盛り込まれたのとひきかえにに、農水省は、農家からの要望が強いとて、マイナー作物への農薬登録の促進方針を打ち出しています。このことは、改定案の表てにはでていませんが、省令として出てくる恐れがありますし、今後の改定の目玉にもなるでしょうから、最後に触れておきます。
現行法では、登録に際しては、適用される農作物毎に、薬効・薬害試験や作物残留性試験ほかのデータ提出が義務づけられていますが、これでは、データ作成に金も時間もかかるということで、作物をグループ化し、同じグループにある作物は、メジャー作物で適用が認められていたら、マイナー作物には新たな試験の提出は免除して、登録農薬の適用拡大迅速化を図ろうというのです。
作物のグループ化は、科学的に決めるとしていますが、適用拡大により農薬使用量は確実に増加し、自然環境や生態系への影響も大きくなるという自明のことを一顧だにせず、ただ、ただ、売れる商品が作りたいとする生産者の都合からでた主張にすぎません。
昔から地場にある特産の○○菜の類いはまだしも、山菜・薬用作物、外国産の作物が、売れるとならば、すぐに単作・連作・大規模化という農薬依存型の栽培法−それも、違法な適用外農薬の使用−に走る農家を取締まるどころか、農水省はそれを黙認した上、法やその運用を変えて、違法を合法に変えてしまおうというのですから驚きです。
今夏、水ワサビに同じアブラナ科グループのキャベツに登録のある農薬を適用して問題となった長野県では、水ワサビ病害虫防除対策委員会が作られ、今後の方針のひとつとして、無農薬栽培の栽培技術を確立し、農家に普及させるということが折り込まれました。
食の安全性を最優先にし、生産者に眼を向けた農政から消費者に眼を向けた農政にするとしていた農水省の改革の精神に従えば、マイナー作物を食する消費者がマイナー作物とは何かを決めた上、農薬使用の良し悪しも決定すべきです。有機農業のような脱農薬栽培の手法を取り入れたマイナー作物の生産がまず、目指されるべきで、それがだめならマイナー作物を消費者が拒否することもありうるというのが筋ではないでしょうか。
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農薬取締法政府改定案について、条文毎に当グループからのコメントを改定内容・疑問点・問題点/提案に分け下記HPに示していますので、参考にしてください。
条文別コメント
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作成:2002-11-25