改定農薬取締法関係にもどる
t13502#農薬取締法省令に私たちの主張を−農水省に質問・意見書を提出#02-12
 12月11日公布された改定農薬取締法には、私たちが示した抜本改定の内容の多くは盛り込まれることはありませんでした。自然環境や生活環境における農薬汚染防止に関する規制強化がないことについては、国会審議の中でも問題となりましたが、農水省は、省令で決める使用基準で対応したいとの考えを示しました。
 巻頭記事のように、12月10日に開催された農業資材審議会農薬分科会では、特定農薬と農薬使用基準に関する各小委員会が設置され、省令内容を決めるよう諮問がなされました。
 そこで、私たちは、農薬使用基準などの省令に、いままでの主張を折り込んでもらうべく、以下のような趣旨の質問・意見書を農水省に送りました。

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★第一条の三関連:含有を許される有害成分の最大量に関する公定規格として
 『「農薬の登録申請等に添付する資料について」の運用について』(平成14年1月10日付け13生産第3988号農林水産省生産局生産資材課課長通知)で不純物として分析するよう求めているDDT類、HCB、ベンゾ(a)ピレン、イソマラソン、ヒドラジン、β−ナフトール、1、2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、エチレンチオウレア、重金属類(セレン、カドミウム、クロム、鉛、水銀及び砒素)の含有濃度基準を公定規格として決められたい。
 さらに、MBC(カルベンダゾール)、カルボフラン、テトラクロロアゾベンゼン、ニトロソ化合物類、有機リン剤においては、それぞれのオキソン体の含有濃度基準を公定規格として決められたい。
【理由】−省略−

★第二条関連:特定農薬について
すでに公募により、約2900の情報が集っており、その中には、牛乳や食酢、砂糖、焼酎などの食品や、合鴨、カエルなどの生き物もあり、農薬と定義してよいかどうか疑わしいものもあります。そこで、質問として、
(1)特定農薬とする基準はなにか。
(2)特定農薬は、人畜及び水産動植物に害を及ぼす恐れがないことが明かなものとされるが、その判断基準はなにか。
(3)現在の登録農薬で、さまざま試験が免除されているが、個々の登録農薬ついて詳細は不明である。特定農薬との整合性をはかるためにも、該当する農薬について、試験提出免除内容と免除理由をすべて明かにしてほしい。
(4)登録農薬の範疇に入る生物農薬や天敵農薬との整合性はどうなるか。
(5)外国では、特定農薬にあたるものはどうなっているか。
(6)特定農薬の製造・販売・使用について、表示ラべリングはどうなるか。
   製品への特定農薬の表示、使用した農産物への表示は? 
(7)有機農産物のJAS規格との関連はどうなるか。
(8)自家製造自家使用の農業資材の場合、特定農薬リストにないものは、使用できなくなるのか。

★第九条関連:販売禁止農薬について
 販売を禁止すべき農薬成分として、記事t13501に示したように、あらたに、11種が追加提案されました。
 わたし達は、さらに、登録失効した有効成分であって、以下に該当する農薬について、その毒性を明かにした上で販売禁止にするよう求めます。
(1)化審法による特定化学物質及び指定化学物質
(2)環境汚染の著しいもの
(3)作物残留性農薬、水質汚濁性農薬、土壌残留性農薬の指定のあったもの
(4)急性毒性の強いもの
(5)発癌性、催奇形性、神経毒性、生殖毒性のあるもの
(6)残留基準がNDであるもの

具体例として、アンツー、オキサジアゾン、オルソジクロロベンゼン、カルベンダゾール、キナルホス、グリセオフルビン、クレオソート、クロメトキシニル、クロラムフェニコール、クロルフェナミジン、クロルベンジレート、フェンチンアセトート、サリチオン、酸化トリブチルスズ、ジアリホール、ジクロゾリン、シュラーダン、水酸化トリフェニルスズ、チオファネート、ナフタリン、バミドチオン、ビンクロゾリン、ファーバム、フォルペット、プロパジン、ホルムアルデヒド、メチラム、メトキシクロル、モノフルオル酢酸アミド、有機砒素化合物、ATA(アミトロール)、CPMC、CYP、DNBP、DNBPA、DBCP、DSMA、EDB、EDC、MBCP、MBPMC、MCC、MNFA、MPMC、MTMC、NIP、PMP、TCA

★第十一条関連:使用禁止の例外規定について
省令による使用禁止の例外規定とは、どんなものを想定しているかをお知らせ下さい。

★第十二条関連:農薬の使用の規制について
 改定農薬取締法では、自然環境や生活環境における農薬汚染防止を目的とする条文強化はなく、農薬使用基準の省令の中に、折り込んで規制する必要があります。
 そこで、次のような対応を求めていきたいと思います。
(1)適用外使用してはならない(登録申請され、ラベル表示にある、適用病害虫、適用作物、適用方法以外の使用をいう)
  【理由】−省略−

(2)目的外使用してはならない(農薬を鳥獣退治に用いたり、室内での殺虫剤として使用することなど)
  【理由】−省略−

(3)ラベルに非農耕地適用記載のある農薬以外を非農耕地で使用してはならない。
  【理由】−省略−

(4)ラベルにある使用上の注意、毒劇農薬については、添付されるMSDSの諸注意を守ることを省令で義務づける。
 動物実験で発ガン性・催奇形性・生殖毒性等が認められたものはその旨記載し、注意を促す。
 農薬のラベルには、使用上の注意があるが、現状では、同種の製剤でもその内容はメーカーによってまちまちである。これを、統一した注意書きにあらためる。
 保護具の着用、散布の事前事後通知の実施、夜間や降雨時又は降雨が予測されるときの散布禁止、周辺への飛散防止対策、散布後の立入制限期間、縄囲いなどによる立入制限、残液や廃容器の処理方法、を含めたラベル表示をし、省令として義務づけるべきである。
  【理由】−省略−

(5)空中散布・地上散布の別なく有機圃場への農薬飛散防止に関する通知等を省令化する
(6)空中散布による水源地、その他生活環境への飛散防止に関する通知等を省令化する
  【理由】−省略−

(7)生活環境汚染防止のため住宅地周辺での農薬散布については、住民との話し合いを義務づけ、住民への散布告知などのガイドラインを作り、省令化する。
 生活環境で使用できる農薬の種類を規制する。
 景観保持を目的とした農薬は使用できなくする。
 農薬に過敏な人に対する保護措置を講ずる。

  【理由】−省略−

(8)農薬による水・空気・土壌など自然環境汚染防止についても、環境省の登録保留基準を強化し、安全使用基準として省令化する
  【理由】−省略−

(9)非食用作物(樹木、花卉、芝、ほか)については、残留基準がないため適用がルーズになりがちである。使用基準遵守の徹底を促すべきである
  【理由】−省略−

(10)個々の農薬使用基準を遵守するだけでなく、多種類の農薬を個別に順次使用することを規制する
  【理由】−省略−

(11)農薬の混合については、容器表示にその可否を記載して、勝手な自家混合は禁止する

(12)農薬は、病害虫の発生状況を調べた上で、使用するよう義務づける。

(13)省令を使用者に周知徹底する体制を確立する。

  【理由】@農家だけでなく一般使用者にも、マスメディア、自治体広報、農薬販売店や農薬容器包装等で省令違反が罰則を伴うこと周知させる必要があります。
      A現在届けのある散布業者は、監督者である都道府県が別途、文書や講習会等で法施行前に罰則化を周知させるべきです。

(14)都道府県が作成する防除基準や農協等が作成する防除暦に省令違反がないようチェック体制を確立する。
  【理由】旧総務庁の行政監察では、農家が頼りにしている防除基準や防除暦に農薬安全使用基準に不適合なものが、みつかっています。

(15)省令についての疑義や省令違反の相談窓口を作る
  【理由】自治体ごとに窓口を設け、疑義の相談や違反事例の報告、農薬飛散による健康被害や環境分析についての相談も受け付けるべきです。

★マイナー作物のグループ化と農薬適用拡大について
 農水省は、12月3日の参議院農林水産委員会でのマイナー農作物に関する質疑の中で「現在、約三百作物の適用拡大要望が出ております。これを私どもはできるだけ早く、十二月中にデータに基づく農薬適用作物のグループ化等の検討をしたい、そして来年の一月中には登録の変更の申請の受付を開始したいということで、改正法の施行に向けて農薬の適用拡大促進というのを努めていきたいというふうに考えておるところでございます。」と述べています。
 同省は、食の安全・安心をめざす中で、いままでの生産者に眼を向けた農政から、消費者に眼を向けた農政にするとしていますが、マイナー作物のグループ化と適用拡大問題は、生産者からでてきたものであり、残留農薬を摂取する消費者および農薬を被曝する散布地周辺の住民に対しては、何の説明もなされていません。
 農水省は、消費者・住民に対し、十分に説明する責任があるのではないかと思い、次の質問をしました。

(1)約三百のマイナー作物とはなにですか。
 品名と生産量をリストでお示しください。
(2)それらのマイナー作物は、いままで、どのような栽培方法がとられてきましたか。
 農薬を使用していたとすれば、どのような農薬が使用されていましたか。
 その中で適用外使用は、どれですか。
 マイナー作物それぞれについて、適用外使用の実態を、一覧表(作物名/適用農薬名/適用外使用農薬名/無農薬栽培の場合はその旨記載)のかたちで、明かにしてください。
(3)農薬適用拡大するには、個々の農作物についての薬効・薬害・残留性試験などが必要です。経営上の都合でメーカー単独で出来ない場合、生産者・農薬メーカー・流通業者などで、会社をつくり、登録拡大の申請もできたはずですし、いままでも、農水省や地方自治体により、個々の農作物についてきちんとしたデータを作成して、適用拡大の申請をはかるよう支援策がとられてきたと聞いてもいます。
 適用外使用に罰則が科せられる段階になって、急に約三百もの農作物について、いっきに、あらたな農薬適用拡大をはからねばならない理由はなにですか。
(4)マイナー作物について、いままで農薬を使用しない栽培方法がどの程度検討されてきましたか。
 作物毎に、それが困難である理由を明かにした上、どのような対策のために、どのような農薬が必要かを具体的に説明してください。
(5)いままで適用のための試験がなされた結果、薬害や残留性に問題があり、適用拡大にいたらなかった農薬についてのネガティブデータがあるはずです。これらの情報をデータベース化して、使用してならない例として公表してください。
(6)作物をグループ化する場合、薬効・薬害・残留性などが、グループ内で同等であるとする科学的根拠を消費者に示して、納得を得ることが必要と思いますが、いかがお考えですか。使用基準の省令の策定に際して、グループ化の根拠となるデータを示して、消費者の意見を聞いてください。
(7)農作物をグループ化した場合、農作物毎に設定されている食品衛生法による残留基準との整合性については、どうお考えですか。
(8)マイナー作物への農薬適用拡大が実施された場合、農薬使用量はどの程度増加すると考えられますか。
(9)外国では、作物のグループ化と農薬適用の関係はどうなっているかを教えてください。
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作成:2002-12-25