改定農薬取締法関係にもどる
t13602#農薬使用基準省令素案は、農薬取締法違反!?−問題続出、これでは農薬使用のすすめ#03-01
 改定農薬取締法の施行に伴い、農薬使用基準が省令として決められることになりますが、12月26日、農水省と環境省の合同検討会で提案論議された「農薬使用基準の考え方(素案)」なるものは、私たちの考えと程遠いものでした(記事t13502参照)。
 以下に述べるように、農薬使用者への罰則強化を伴う拙速な法改定で、「特定農薬」だけでなく、使用基準についても、ぼろがでてきて、まさに、無法基準になろうとしています。

★素案の考え方の問題点
 検討された使用基準の考え方は、次のようなものです。
@遵守義務と努力規定にわけ、前者に罰則を科するが、後者には科さない。
A農作物への残留問題を重視し、罰則適用を食用/非食用に分けており、散布者への影響、自然環境・生態系への影響、生活環境・散布地周辺住民への影響を軽視している。
B適用外作物への使用禁止を明記すべきなのに、法的根拠の疑わしい経過措置を設けている。
C非農耕地や室内などでの農薬の目的外使用の禁止は触れられていない。
 とても、農薬の安全かつ適正な使用を確保するものとして満足いくものではありません。農薬を毒性物質と認識した上、その使用の低減をめざすことが最も重要なことであり、この観点から、使用基準を見直すことが求められます。
 ここでは、紙面の都合上、いくつかのポイントとなる点を挙げるにとどめます。

★遵守義務に一本化すべき
 使用基準は、罰則の伴う遵守義務と罰則を科さない努力規定にわけられました。両者の線引き基準として、農作物へ残留するかどうかが重視されています。
 農薬の登録申請時の提出され、ラベル表示にある適用作物や適用病害虫の範囲、使用方法等(使用回数を含む)はすべて、遵守義務とされましたが、対象は食用作物に対するものに限定されており、その上、後述のような問題のある経過措置が設定されています。
 同じラベル表示にある安全使用上の注意には、散布する人や散布地周辺の人の健康、環境への影響を防止するために不可欠な事項が記載されています。これは、努力規定となっていますが、遵守義務とすべきです。
 空中散布の場合、農薬の使用をあらかじめ掲示等の広報を行うことが義務づけられますが、同様の事前散布通知の実施は、住宅地周辺や街路樹など人の生活環境での農薬散布でも、遵守を義務付けられる必要があります。対象作物以外への飛散、大気汚染、水質汚染防止も義務づけるべきです。
 また、法の帳簿の条項にありませんでしたが、努力規定として、農薬使用者に、適用作物名、使用した農薬の種類や濃度等の農薬使用履歴をその都度記載することが求められることになります。使用基準の省令でなく、条文できちんと義務づけるべきです。

★防除業者は法条文で取り締まるべき
 改定法では、防除業者を規制する条文はなくなりましたが、省令では、くん蒸処理業者と航空機による散布業者、ゴルフ場の散布者については、農水省への使用農薬の届出を義務付け、違反者には罰則が科せられことのなりました。いずれも、農薬を大量に使用したり、広範に農薬散布するため、国が確認する必要があるというのが、その理由です。
 しかし、大型散布機や無人ヘリで散布したり、街路樹・公園・学校など生活環境で散布する防除業者は、従来法以上に監督を強化すべきなのに、一般使用者と同じレベルにあるとして、届出する必要がなくなったのは問題です。
 防除業者は、資格免許制度のもとで、きちんと監督すべきです。

★経過措置で違法を容認するとは
 従来法でも、使用者が遵守すべき農薬安全使用基準があり、適用外使用は不適切とされ、不十分ながらも行政指導されてきました。しかし、これらを守らなくても、処罰を受けることはありませんでした。
 改定法では、罰則が科せらることになるため、農水省が調べたところ、約300の農作物について、いままでの農薬使用では、処罰を受ける恐れがでてきました。同省は、作物のグループ化で、個々の農作物の残留性試験を実施しなくとも、適用拡大が出来るようにとの方針をたて、要望があがってきた約300作物を4つの条件(植物学的に類似性が高い/作物としての利用部分(分析部位)が同一/作物の形状・表面の状況及び重量が大きく異ならない/栽培方法・生育時期・生育状態等が大きく異ならない)をもとに11グループに分けようとしました。しかし、この中に分類できるのは、せいぜい90余りの作物で、多くのマイナー作物については、合法的に農薬使用ができないことになってしまうということです。
 そこで、苦肉の策が経過措置というごまかしです。一定期間、適用外農作物であっても農薬使用を認めようというのです。いくつかの条件(都道府県知事が申請する/同一区分の作物に登録保留基準がある/農薬の残留度合い等を検査/危険性が判明したら出荷停止/都道府県は登録拡大に必要な残留データ作成に協力)を設定するものの、グループ化できない農作物について、本来違法であっても、経過措置で、適用を認めようというのですから驚きです。
 だいいち、この経過措置は、農薬使用が前提になっています。農薬を使用しない農法の検討を奨励もせず、これからでてくる新たな農薬や農作物に対する歯止めもありません。公定分析法も確立していない農薬についても使用が認められる恐れもあります。農薬の使用履歴をつけられませんから、消費者には、その農作物が違法栽培であるかどうかの判断もつきません。
 適用外使用はあくまで違法であり、使用者も違法であることを認識すべきです。素案の経過措置は、違法であれば、罰則を科せられることからきています。そのことを理由に、適用外使用を認めるように使用基準を捻じ曲げることは、まさに農薬取締法違反です。使用基準は厳格にし、罰則適用は法改定で対処すべきだと、私たちは考えます。
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作成:2003-01-25