改定農薬取締法関係にもどる
t13802#改正農薬取締法に関する都道府県知事へのアンケート結果#03-03

 1月30日に省令案が発表された後、反農薬東京グループは都道府県知事に対して,改正農薬取締法に関するアンケート調査をしました。
 アンケート表は、2月3日付けでメール、郵送で送りました。2月28日までに、回答を拒否した栃木県、福岡県の2県を除く45県から回答がありました(回収率96%)。

 回答を整理してみて驚いたことは、特定農薬に関して「省令案通りでよし」とするのが24%しかなかったことです。「指定は拙速」と回答した県より少なく、この制度がいかに唐突であるかを示しています。中には滋賀県のように国に要望書を提出した県もありました。
 また、主に生活環境で農薬散布をする一般防除業者の届け出制度がなくなりましたが、「従来どおり都道府県がとりしまるべき」と回答した県が33%、「もっと厳しく取り締まるべき」との回答が4%あり、「区別して取り締まる必要がない」とする27%を上回っていることは、県レベルでも、生活環境での農薬散布による健康被害防止への認識が高まりつつあることを示しています。

 以下、質問と回答の概要及びコメントを報告します(回答都道府県を「県」と統一する。%は小数点以下四捨五入)。 なお、アンケート回答全文(送料共500円)を必要とされる方は、事務局までお申し込みください。
 
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           改正農薬取締法アンケート概要
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 【1】特定農薬について
  改正農薬取締法で新設された「特定農薬」は、農水・環境省令案では、(1)食酢、
  (2)重曹、(3)使用される場所の周辺で採取された天敵の3種の資材が指定され
  ました。
  しかし、その他情報提供された資材の多くは判断が保留され、販売は規制される
  ものの、農家の自己責任で使用が認められることになりました。
  「特定農薬¥」については、その名称を含め指定の基準や手続きなど、制度的な
  基礎が整備されておらず、このまま拙速な指定が進めば、生産者や消費者に混乱
  を招くことは必至です。
  「特定農薬」の指定はただちに中止し、アメリカやドイツのように、有機農業資材
  として使用されるものは、農薬取締法の適用を除外すべきと考えます。

 質問1:貴県は特定農薬について、どのようにお考えですか。(複数回答あり)
  1:省令案に示されたままでよい。=11県(24%)
  2:特定農薬の名称がよくない。=13県(29%)
  3:特定農薬とその運用内容がわかりにくく、指定は拙速である。=12県(27%)
  4:法律改定で、有機農業資材は適用除外にすべきである。=2県(4%)
  5:検討中である。=8県(16%)
  その他=4県(8%)

 【コメント】───────────────────────────────
  特定農薬の制度をそのまま是認しているのは、指定の速やかな拡大をのぞむ
    ものを含め11県です。
  名称がよくない/内容がわかりにくい/有機資材を除外するなど、批判的な
    のは過半数を超える23県です。農水省は、法律条文で「特定農薬」という
    語句をそのままにして、通称を「特定防除資材」とすることを考えるとして
    いますが、これは、農水省の面子の問題です。言葉の遊びでなく、滋賀県と
    鳥取県のいうように農薬取締法の適用除外にすべきというのが正論でしょう。
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 【2】防除業者について
  改正法では、防除業者の都道府県等への届出制度が廃止されました。省令では、
  くん蒸業者、航空機で散布する業者、ゴルフ場での散布業者は農薬の使用計画
  の事前届けが義務付けられましたが、学校、公園、街路樹など身近な場所で散
  布する一般散布業者は届出の義務もなくなりました。防除業者は取り扱う農薬
  の数量も多く、農家や一般の使用者とは立場が異なります。
  自然環境や生活環境汚染を防止するには、届出制度にかわり、免許制度をとる
  べきと考えています。

 質問2:貴県は防除業者の届出制度廃止に関して、どのようにお考えですか。
  1:改定法どおり、防除業者を区別して取締まる必要はない。=12県(27%)
  2:届出制度で、都道府県が取締まるべきである。=15県(33%)
  3:従来の届出制度よりも厳しくすべきである。=2県(4%)
  4:検討中である。=12県(27%) 
  その他=4県(9%)

 【コメント】───────────────────────────────
  改正法で防除業者の届出制度が廃止され、くん蒸剤使用/航空機散布/ゴル
  フ場散布業者以外が、一般使用者と同じ扱いになったことに対して、17の
  県で、届出制度またはより厳しく取り締まるべきだと考えが示されており、
  12県でどうするか検討中となっています。改正法どおりでよいとしたとこ
  ろでも、意見をみると2県が一般使用者とは同一視していないことがわかり
  ます。多くの県で、防除業者の扱い方が、今後問題になってくるでしょう。
  農水省は、条例で防除業者を取り締まるようにすればよいと主張をしていま
  すが、やはり、多種多量の農薬を使用する業者に対しては、農薬取締法で、
  一般使用者よりも厳しく規制していくことが必要で、より高度な農薬につい
  ての知識と経験を必要とする許可免許制度が望まれます。
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 質問3:届出制度が廃止される3月10日以降、防除業者の把握が困難になり、
     講習会等の参集や指導などの効率的な実施が困難になることが予想さ
     れますが、貴県ではどう対応されますか。
  1:対応予定はない。=2県(4%)
  2:国に対応を要望した。または、する予定。=1県(2%)
  3:独自に対応方法を設けることを検討中。=6県(13%)
  4:対応方法を今後、検討する。=33県(73%)
  その他=3県(7%)

 【コメント】──────────────────────────────
  業者への研修・指導について、特に対応を考えていないとするのは2県のみ
  で、何らかの対応の必要性を考えているところが、大部分です。既に国へ
  対応法を求めたり、独自対応方法を考えているところが6県あります。
  大分県のように条例を検討しているところもあります。いくつかの県で
  は、業者団体を通じての指導も考えられています。やはり、届出制度を止
  め、一般使用者と同列にしことに、問題があるようです。
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 【3】農薬使用基準省令について
  改正法に基づき、使用者に対して、罰則が科せられる遵守義務は食用作物・飼料
  作物に ついての適用外使用に限られました。しかし、非食用作物(森林、芝、
  街路樹、庭木、花卉ほか)についても遵守義務が必要と思います。また、省令案
  では、努力規程になっている「空中散布」や「住宅地での散布上の注意」及び
  「使用履歴の記載」等、さらには、容器ラベルにある「安全使用上の注意事項」
  も遵守義務にすべきだと考えます。

 質問4:貴県は使用基準に非食用作物についての基準がないことを
     どうお考えですか。
  1:省令案通りで十分である。=30県(67%)
  2:非食用作物についても基準を設定すべきである。=9県(20%)
  3:検討していない。=3県(7%)
  その他=3県(7%)

 【コメント────────────────────────────────
  三分の二の30県が、非食用作物については、規制が緩いままでよいと考えて
  おり、この件に関する問題意識が少ないのは残念ですが、 五分の一の9県が
  基準を設定すべきとしていることは、勇気づけられます。
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 質問5:住宅地周辺での散布の基準について、どうお考えですか。
  1:省令案通りで十分である=35県(78%)
  2:省令案は、厳しすぎる。=0
  3:もっと厳しくすべきである。=3県(7%)
  4:検討していない。=5県(11%)
  その他=2県(4%)

 【コメント────────────────────────────────
  35県が、省令通りの努力規定でよいとしています。もっと厳しくすべきとし
  ているのは、3県で、滋賀県が、空中散布など大規模散布については、義務
  化すべきとしている点は注目されます。また、北海道は、使用に際しては、
  容器ラベル表示事項を守るよう指導するとしている点も望ましい方向です。
  既に、横浜市は、住宅地周辺での農薬使用についてのガイドラインを出して
  おり、このような流れが、全国化するよう運動が必要です。
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 質問6:農薬使用履歴記載の基準について、どうお考えですか。
  1:省令案通りで十分である=39県(87%)
  2:省令案は厳しすぎる=0県
  3:もっと厳しくすべきである。=2県(4%)
  4:検討していない。=1県(2%)
  その他=3県(7%)

 【コメント────────────────────────────────
  39県が省令通りの努力規定で十分だと考えています。
  滋賀県と京都府が義務化すべきとしているのは評価できます。
  ──────────────────────────────────── 

 【4】マイナー作物等の経過措置について
  使用基準についての省令案では、適用外使用には罰則が科せられますが、農薬登
  録のないか少ないマイナー作物について、都道府県知事が農水大臣に申請する等
  の条件付きで、適用外使用を認め、罰則を科さないという経過措置が設定されて
  います。
  このような適用外使用を容認する省令は、農薬取締法の登録制度を崩すもので、
  大いに問題があると思い、今回のような拙速な罰則強化よりも、使用者免許制度
  の導入による抜本的な法改定を求めたいと考えています。

 質問7:貴県は、省令案にあるような経過措置についてどうお考えですか。
  1:省令案通りの条件付きで、適用外使用を認めるのがよい。=38県(84%)
  2:適用外使用を認めるが、条件をかえるべきである。=3県(7%)
  3:適用外使用を認めるのはよくないが、罰則適用を猶予すべきである。=2県(4%)
  4:適用外使用を認めず、罰則を科するべきである。=0
  5:検討していない。1県(2%)
  その他=1県(2%)

 【コメント────────────────────────────────
  38県が経過措置に賛成しています。この措置は、マイナー作物の生産者へ
  の罰則適用を猶予するためのものですから、うらを返せば、現状でも、全
  国各地で、違法な適用外使用が行われていることを示唆するものです。
  経過措置の条件について、滋賀県が「農薬登録の促進は農薬メーカーの責務
  で対応し安全性のチェックは生産者団体が確認するべきと考えます。県とし
  ては、農薬を削減する方法や栽培方法の研究開発などの面で貢献したい」と
  している点や島根県が「残留農薬検査の義務づけ、情報開示の義務づけ」を
  いっているのは評価できます。
  ──────────────────────────────────── 

 質問8:貴県は、マイナー作物についての経過措置を申請する積もりですか。
  1:申請しない=0
  2:申請する=27県(60%)
  3:検討中である=18県(40%)

 【コメント】─────────────────────────────── 
  申請しないとする県は ひとつもありません。申請すると決めたのが27県、
  検討中であるとするのが18県です。なかで、滋賀県が、食品安全だけでな
  く、環境汚染も視野にいれて申請しようとしているのは、ひとつの見識と
  して評価できます。
  ──────────────────────────────────── 

 質問9:貴県が、もし、経過措置を申請、承認を受けた場合、貴県
     が掌握することになる農薬とその適用作物名、残留分析結果、出荷先、危険
     性等の情報を公開しますか。
  1:はい=11県(24%)
  2:いいえ=0
  3:どちらとも言えない=3県(7%)
  4:検討中である。=30県(67%)
  その他=1県(2%)

 【コメント】─────────────────────────────── 
  適用外使用の違反の実態を公開すると決めているのは11県で、検討中であ
  るというのが三分の二の30県です。態度を決めかねているのは、農水省の
  意向や他県の様子をみようというわけでしょうか。情報公開のためには、消
  費者がもっと声を挙げねばならないでしょう。
  ──────────────────────────────────── 

 質問10:貴県は、該当する農作物の栽培に関して、農薬を使用し
     ない方法の開発を推進しますか。
  1:はい=21県(47%)
  2:いいえ=0
  3:どちらとも言えない=6県(13%)
  4:検討中=18県(40%)

 【コメント────────────────────────────────
  昨年夏、水ワサビ栽培で適用外農薬使用が問題となった長野県では、生産者
  による「水ワサビ病害虫防除対策委員会」が、水の噴霧や粘着テープなどの
  物理的防除法による害虫防除を検討しています。21県が、このような、農薬
  を使用しない栽培法を推進するとしています。さすが、農薬使用一辺倒の県
  はなく、どうするか検討中とするのが18県あります。
  ──────────────────────────────────── 

【5】農・林業に関する下記条例等(指針、規則、要綱、計画を含む)の有無について

 質問11:貴県には、農薬の適正使用をめざす条例等がありますか。
  1:ある=25県(56%)
  2:ない=17県(38%)
  3:今後検討したい=2県(4%)
  4:その他=1県(2%)

 【コメント────────────────────────────────
  25県が農薬使用基準についての何らかの条例等があり、17県がないとしています。
  あるとする県も、その内容はまちまちで、従来の農薬取締法に基づく「農薬安全
  使用基準」の遵守を求めるもの、空中散布に関するもの、ゴルフ場に関するもの
  ほかで、条例、要綱、要領、指針などのかたちで農業現場の指導がなされている
  ようです。中には、たいていの県にある防除基準を挙げたところもありました。
   無登録農薬事件を契機に昨年制定された「群馬県における農薬の適正な販売・
  使用及び管理に関する条例」や横浜市の「住宅地周辺での農薬散布に関する指針」、
  埼玉県の「県有施設・樹木の消毒等に関する取り組み方針」(できるだけ農薬を
  使用しない管理方針への転換をめざしている)に類するものなどが、もっとでて
  きてもよいように思います。
  ──────────────────────────────────── 

 質問12:貴県には、農薬の使用削減(環境保全型農業の推進も含む)
     をめざす条例等がありますか。
  1:ある=33県(73%)
  2:ない=11県(24%)
  3:今後検討したい=1県(2%)

 【コメント────────────────────────────────
  33県で、条例、要綱、指針、方針、計画などで環境保全型農業がめざされてい
  ます。それぞれの内容がどのようなものか、農薬使用削減をいうならば、きち
  んとした数値目標があるか、また、推進のための予算がどの程度のものかを知
  る必要があります。
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作成:2003-03-22