改定農薬取締法関係にもどる
t13902#化学合成農薬を使いやすく工夫しました−1:作物のグループ化#03-04

 改正農薬取締法が施行され、規制が厳しくなったかと思いきや、農水省は様々な方法で農薬使用を緩和しています。その一つが、作物のグループ化と称するものです。それにあてはまらないのは、条件を付けて使用してもいいとして「経過措置」を承認し、あの手この手で農薬使用を拡大しています。本号では、「グループ化」を、次号では、「経過措置」を取り上げることにします。

★作物のグループ化で農薬適用拡大  栽培面積が少ない作物は農薬メーカーにとってメリットがないので適用作物として申請されていないのが多い。適用がない作物に農薬を使用すると罰則をかけられるので、これを解消するためにできるだけ適用作物を増やさなければならない。
 というわけで、いままで、個々の作物について、農薬登録をしていたものを、作物をグループにわけ、同じグループに入る作物に農薬の適用拡大をしたわけです。つまり、シシトウやトウガラシを「とうがらし類」として分類し、「とうがらし類で」の登録があればシシトウでもトウガラシでも自由に使えるというわけです。
 グループ化することにより、農薬メーカーは作物残留性試験、薬効・薬害試験の費用を浮かすことができます。(1作物300万円程度と農水省は言っています。)
 省令制定時に農業資材審議会農薬分科会に出された資料によると、農薬適用拡大要望作物数は約300、そのうち出荷量が3万トン以下のマイナー作物は約250作物となっています。

★適用拡大された農薬の問題点
 3月10日の法施行後、4月までに、農水省は3回にわたり、農作物のグループ化による農薬の適用拡大を発表しました。拡大件数は農薬の剤型種類別で191種、製剤数で620件という膨大なものでした。表1に農薬剤型別の適用拡大件数を示しましたが、生物系や天然物系農薬が上位にあります。化学合成農薬で適用拡大をしたものは153種あります。
 D−D剤は、5種で、「ミニトマト」「とうがらし類」「非結球レタス」「はつかだいこん」などに、クロルピクリンくん蒸剤は「ミニトマト」「とうがらし類」「非結球レタス」「わけぎ」「あさつき」などに、ダイアジノン粒剤は「とうがらし類」「はつかだいこん」「わけぎ」「あさつき」などに、チウラム水和剤は「野菜類」などに、有機銅水和剤は「ブロッコリー」や「非結球レタス」に適用拡大されました。チウラムの場合、残留基準はなく、登録保留基準も4種の果実しか決められていませんので、「野菜類」の適用拡大は、種子に限られているようです。
 また、オゾン層破壊ガスとして、2005年までに先進国の生産をゼロにすることが決められている臭化メチルくん蒸剤が「ミニトマト」や「とうがらし類」に適用拡大されています。後、2年使いまくろうとでもいうのでしょうか。

表1 剤型別の適用拡大件数 −略−

★適用拡大された作物の問題点
 適用拡大件数が10件以上ある農作物を表2に示しました。
 今回、農水省は残留性に違いがあるので分離して登録する必要がある作物として、以下の作物をあげています。
     トマトとミニトマト、
     ピーマンとシシトウ、
     結球レタスと非結球レタス、
     ねぎとわけぎ・あさつき、
     だいこんとはつかだいこん
 そのためか、表2をみると、これらのペアで後者にあたる農作物が多く挙げられています。ミニトマトで、使用可になった農薬は95件ありました。従来はトマトに適用のある農薬を使っていたということでしょうか。同じように分離する必要があるとされているハツカダイコンは28件、わけぎが44件、アサツキは42件となっています。
 グループ化して一挙に適用拡大したのが非結球レタスが49件、非結球あぶらな科葉菜類が9件、うり類(漬物用)が18件、なばな類が9件あります。野菜類として野菜なら何でも使えるのが65件、樹木類が17件、花き類は49件あります。どのような残留データ、薬害、薬効データを援用して適用拡大が認められたか不明です。
 「野菜類」として適用拡大された農薬の多くは、BT剤や天敵や天然物系ですが、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル乳剤、脂肪酸グリセリド乳剤、フルトラニル水和剤、メタラキシル水和剤、キャプタン水和剤、チウラム水和剤、メプロニル水和剤、オレイン酸ナトリウム液剤の8種の化学合成農薬があります。フルトラニルの場合、野菜系の14作物について残留基準が2ppmから5ppmとなっているだけで、登録保留基準は野菜にはありません。いったい、作物名が挙がっていない野菜の残留基準はどうなるのでしょう。
4月にはいってからも、グループ化による適用拡大がつづいています。消費者が知らないうちに、といっても、現状追認しているだけかも知れませんが、農薬使用が拡大されていくことに、なんとか歯止めをかけたいものです。
     表2 農作物別の適用拡大件数

  農作物名        件数       農作物名        件数
  ミニトマト                     94       樹木類(木本植物)        16
  野菜類                    65       果樹類                    15
  非結球レタス                 49       にがうり                  15
  わけぎ                    44       いちご                    13
  花き類(草本植物)                 非結球あぶらな科葉菜類    13
      ・観葉植物      42       かんきつ                  11
  あさつき                  40       ぶどう                    11
  とうがらし類              36       アスパラガス                  11
  はつかだいこん            28       きく                      10
  豆類(種実)              22       カーネーション                  10
  うり類(漬物用)          19 
   【参考】3月5日変更登録 3月7日変更登録 3月20日変更登録
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作成:2003-09-26