改定農薬取締法関係にもどる
t13903#農水・環境省の2月のパブコメは閣議決定に反する−総務省行政管理局が両省に文書で通知
農水省と環境省は、2月に農薬取締法使用基準に関するパブリックコメント(以下「パブコメ)をしました。意見を述べられた皆さんも多くおられました。
ところが、このパブコメは募集期間が2週間と短い上、まとめを出す前に省令を発表するという、最初から意見など聞く耳を持たないやり方でした。結局、国民の意見を聞いたというアリバイ的にしか使われなかったわけです。
あまりにもひどいやり方だったので、会員からの要望もあり、私たちは4月4日に総務省の行政管理局に以下の内容の苦情を申し立てました。
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総務大臣 片山 虎之助 様
農林水産省及び環境省の両省によるパブリック・コメント「農薬取締法第12条第
1項に係る省令(案)(農薬の使用者が遵守すべき基準等)」の手続きに関する
問題点及び改善の要望
<背景>
農林水産省及び環境省の両省は、平成14年12月に修正された農薬取締法12条1項
の「農薬を使用する者が遵守すべき基準」を定めるに当たって、パブリック・コ
メントを求めた。
<経過>
平成14年12月11日 改定農薬取締法公布
15年 1月 8日 政令で法の3月10日施行を公表
2月10日−2月24日 環境省、省令の考え方についてパブリックコメント
2月12日−2月25日 農水省、省令の考え方についてパブリック・コメント
3月 7日 農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令公布
3月18日 パブリック・コメントに対する「回答」を発表
<問題点>
1、同じ内容のパブリックコメントを環境省は2月10日に募集開始、農水省は2月
12日に募集開始した。農水省が遅らせた合理的理由がない。
2、コメント期間が公表日を入れても14日間しかなく、短期間であった。
閣議決定の「意見・情報の募集期間については、意見・情報の提出に必要と判
断される時間等を勘案し、1か月程度を一つの目安として、案等の公表時に明示
する」という内容から見ても半分程度の期間しかない。ほかの件のパブリック・
コメント募集期間と比較した場合も期間が短い。
・パブリック・コメント期間が短いことは、コメント募集を見逃す危険がある。
・意見を提出しようとした場合、コメントに直接関連する情報以外に、ほかの
情報を収集し、総合的に内容を十分に分析・判断する必要があるが、時間的余
裕を与えなかった。
3、コメントに対して回答する11日間前に、「農薬を使用する者が遵守すべき基準
を定める省令」を定めた。
このことは、本省令を定めるに当たって、平成11年 3月23日に閣議決定された
「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」にそぐわない。その理由は次の通り
である。
4、上記省令を告示する前に、農政局長などに経過措置の手続きを始めるよう通
知を出した。通知には、2月中に3月、4月に使用する農薬について仮申請をする
よう書かれている。
閣議決定では「案等を公表した行政機関は、提出された意見・情報を考慮して
意思決定を行うとともに、これに対する当該行政機関の考え方を取りまとめ、提
出された意見・情報と併せて公表する」ことになっており、「各省庁了解のもの
として、閣議において配布された」考え方では、「公表は、原則として意思表示
の時点までに行う」ことになっている。
<結論>
以上のように、本パブリック・コメントは、国民に周知し考えるための時間を
与えず、「回答」を出す前に決定(省令の公布)をしている。これは国民からの
「多様な意見・情報を考慮して意思決定を行う」というパブリック・コメントの
精神に反し、本パブリック・コメントが有効に機能しなかったことを示している。
又、閣議決定事項であるからパブリック・コメントを形式的に実施したというこ
とであれば、パブリック・コメントの形骸化につながり、制度全体を危うくする。
<要望>
農水省及び環境省に対して、パブリック・コメント制度を適切に運用するこ
と、及びパブリック・コメントを再度実施することを要請していただきたい。
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これに対し、総務省行政管理局企画調整課はすぐ対応し、4月7日に電話で以下のような内容を伝えてきました。農水・環境両省のパブコメのやり方は、閣議決定から照らして問題であるということでした。
1、時期については、一か月が一般的だが、もっと短いものがあり問題ない。
2、パブコメ公表前に省令を出したのは問題なので、両省のパブコメの担当課
に話をした。今後気をつけるということだった。
3、パブコメのやり直しはできない。
上記の内容を口頭で指導したとのことでしたが、4月6日に農水省などとの交渉の席に総務省の担当課も参加してもらい、きちんと文書で指導してほしいと要望しました。その結果、4月11日付けで、総務省は以下のような文書を農水・環境省に送ったと写しを送ってくれました。しかし、以後、気をつけろという内容であり、パブコメのやり直し、省令の作り直しには至りませんでした。
総務省の説明では、いままでのパブコメで、応募期間が7以上-14日未満:10%、14以上-21日未満:24%、21以上-28日未満:22%、28以上-56日未満:44%だったとのことで、今回の14日というのは、短い部類に入ります。また、パブコメ結果が公表される前に、意志決定されたのは、今回が唯一のケースということでした。農薬取締法公布後55年にして、はじめて、農薬使用者に罰則が科せられことになり、その基準を決める重要な省令が、このようなパブコメ運用上の違反の下で決められたことに、あらためて、怒りを覚えました。
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「規制の設定又は改廃に係わる意見提出手続き」の運用について(通知)
農林水産省大臣官房文書課パブリックコメント手続担当官殿
環境省大臣官房総務課パブリックコメント手続担当官殿
総務省行政管理局企画調整課行政手続室
この度、当行政管理局行政相談課から、別添のとおり、改善要望があった旨連
絡を受けました。
当室において、要望内容を精査した結果、貴省において実施した標記手続の一
部については、下記のとおり同手続に係わる閣議決定等に照らして問題と考えら
れる点が認められますので、今後の手続の実施に当たっては、閣議決定等の趣旨
を踏まえ、適切な運用に遺漏なきを期されるようお願いします。
また、貴省関係各課に対し、本件についての周知方併せてお取り計らい願います。
記
(閣議決定等に照らして問題と考えられる点)
閣議決定では、規制の設定又は改廃に係る「案等を公表した行政機関は、提出
された意見・情報を考慮して意志決定を行うとともに、これに対する当該行政機
関の考え方を取りまとめ、提出された意見・情報と併せて公表する」こととさ
れ、また、閣議決定の「考え方」(各省庁了解)では、「公表は、原則として意
思表示の時点までに行う」こととされている。
今回、別添の要望内容を見ると、提出された意見に対する「回答」(平成15
年3月18日)が、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」(平成
15年農林水産省令・環境省令第5号)の公布(平成15年3月7日)後となっ
ている。
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作成:2003-04-25