街の農薬汚染にもどる
〜厚労省の殺虫剤主体のウエストナイル熱対策批判〜

緊急出版「脱農薬Ж蚊対策のすすめ」


t14101#厚生労働省の西ナイル熱対策ガイドラインに抗議〜蚊対策として薬剤散布を奨励・空中散布まで検討#03-06

 6月2日付けの読売新聞に衝撃的な記事が載りました。厚労省が西ナイル熱対策として蚊駆除を徹底するというガイドラインを策定したというのです。患者発生時やカラスなどからウイルスを検出時は、まず10キロ四方を目安として下水管や木の茂みなどに殺虫剤を撒き成虫を駆除。空中散布も検討するというものです。
 この指針を6月13日までに都道府県に配布するということだったので、化学物質過敏症患者や、生活環境での殺虫剤の規制を求めている団体などが仰天して、直ちに情報収集に当たり、賛同団体を集めて厚労省に要望することにしました。

★殺虫剤の人への有害性について記載のないガイドライン
 このガイドラインを作成したのは、国立感染症研究所研究員が7人、日本ペストコントロール協会(PCO=散布業者の団体)1人、日本環境衛生センター(PCOなどの指導研究組織)3人、大学名誉教授が一人の計12人です。感染症研究所と薬剤散布業者の団体が作ったガイドラインだと言えます。
 そのためか、「蚊防除の役割分担」という項で、散布業者を「現在、わが国には蚊に対する防除技術と機材・薬剤等を備え、対応可能な組織はPCOなど少数しか存在しない」と持ち上げ、市町村は蚊防除を害虫防除業者(PCO等)に委託しろと書かれています。PCO業者がいかにでたらめな散布をしてきたかは、北海道静内の特別養護老人ホームでの散布が典型的です。防除業者には殺虫剤の危険性に関する知識はありません。こんな団体に我が物顔で街中の殺虫剤散布をやられたのでは化学物質弱者にとっては、生死に関わってきます。
 ガイドラインでは、西ナイル熱対策は蚊対策が重要(実際には「媒介蚊の防除及び蚊に対する個人的な防御はウエストナイル熱の感染を防ぐ唯一の方法である」と書かれている。)とされています。
 媒介蚊防除法の基本として、第一ステップ=環境改善によって幼虫発生源をなくす。第二ステップ=発生した蚊は殺虫剤を用いて殺す。薬剤による防除は緊急時には不可欠。第三ステップ=成虫による刺咬を防ぐ。忌避剤のDEETが期待できるなど。とあり、とってつけたように「環境に配慮した防除戦略」なるものがありますが、ここには「殺虫剤は生物全般に対する生理活性が高く、無配慮な使用は環境に対して負の影響を与える。しかし、殺虫剤を使用しないで防除効果を上げることは、特に緊急時の対策では極めて困難である。防除効果と環境保全、すなわち、利便性とリスクのバランスを正しく判断して使用すべきである」とあります。
 しかし、22頁に渡るガイドラインの中に、殺虫剤が人間に及ぼす悪影響は一言も書かれていません。化学物質過敏症やアレルギーなどがこれほど社会的問題になっている時に、厚労省のガイドラインで、一言も健康被害について触れられていないのは信じがたいことです。
 また、空中散布に関しては「緊急時にはヘリコプター等を用いた航空機散布が検討の対象になる。」とはっきり書かれています。

★緊急に厚労省への要望
 時間がさしせまっているため10日に、厚労省へともかくガイドラインの都道府県への配布を延期し、ガイドラインを作り直せと要望しました。要望書と話し合いの内容は以下の通りです。(要望書6・13緊急要請

★厚労省との話し合い報告−略−

  下記の関連HPの谷議員のHP参照

★厚労省がガイドラインを「参考文献」として配布
 厚労省結核感染症課は、ウエストナイル熱媒介蚊対策に関するガイドラインを厚労省の文書としてではなく、研究報告として参考のために出す、その際、課長通知を付け、化学物質濫用にならないよう注意を促すと約束していました。出す前に6月10日の要望団体へ相談するという話でしたが、6月18日、一方的に配布したと連絡がきました。
 ガイドラインの表紙から「厚生労働省結核感染症課」という名前は消え、あくまで参考文書であるとしています。しかし、通知の内容も殺虫剤散布が前提になっており、効果と健康被害や環境影響を十分に比較検討して対策を講じることと書いてあります。有機リン系殺虫剤を並べ立て、これを使えとしているガイドラインを勉強したら、自治体関係者がウイルスが検出されたら直ちに殺虫剤散布に走るのは眼に見えています。
 厚労省はガイドラインそのものを見直すべきでした。(ガイドラインと課長通知は下記の関連HP参照)

★西ナイル熱について−略−

★その後の要望等 7・1都道府県への要望 7・7検疫関連要請

★関連HP
 *記事t11107
 *「ウエストナイル熱の媒介蚊対策のガイドライン作成に関する研究」は、子どもの健康と環境を守る会HP又は日本医師会HP
 *国会質疑と課長通知は、谷参議院議員のHPにある国会活動報告
 *渡部さんのHPにあるWNV対策と問題点
 *アメリカのCDC
 *国立感染性症研究所のWNV(CDC作成のCD-ROMをダウンロードできます)
 *厚生労働省WNV(2002/10/23)
 *厚生労働省ウエストナイル熱の流行地域より入国し、当該疾病への感染が疑われる患者の診療・入院に関する対応要領の周知とウエストナイル熱対策啓発用CD-ROMの配布について (2004/06/10)
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作成:2003-06-25 、更新:2004-07-10