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t14102#農薬剤抜きの松枯れ対策を林野庁に要望〜空散は減らす方向で指導すると回答#03-06
 5月30日、薬剤による松枯れ対策の中止を求めて林野庁と話し合いを持ちました。現在、松枯れ対策として薬剤を使用しているのは、空中散布、地上散布、伐倒駆除、樹幹注入などがありますが、これらの濫用によって周辺住民が健康被害を訴えています。(記事t14002参照)
 話し合いは、農薬空中散布反対全国ネットワークのメンバーが参加しました。代表の植村振作さんも天草から駆け付けていただきました。林野庁からは、森林保護対策室井上室長、佐藤補佐、岡技官の3名でした。

 まず、ネットワークから各地の今年の薬剤散布による問題点を指摘した後、真鶴半島・湘南海岸での散布状況をビデオでみました。特に夜間に散布する場面では、その不気味さもさることながら、ホームレスの人のテントに農薬がかかっていること、松林に棲む小動物が薬剤の中を歩いているところなどが映され、あ然とさせられました。また、真鶴半島では途中でホースが折れて、そこから農薬が勢いよく噴出していた跡が映っていました。
主な話し合いの内容を報告します。(Qが空散反対ネットワーク、Aが林野庁の 回答)
★夜間散布について
  Q:夜間散布が最近流行ってきている。夜間にやると農薬がどっちに飛んでいく
    か分からない。天候の急変も気がつきにくい。夜間に撒くことについて林野庁
    として安全性の面からどう考えるか。どこに撒かれたかわからないから効果も
    確認できない。
  Q:農薬登録要件の中に夜間散布があるのか。安全を確保するためには昼間しかな
    いはずだ。
  A:登録上は夜間の規制はない。入っていないということは、逆にいうと、使って
    もいいのではないか。
  Q:どう安全確保をするのか。
  A:確認を取ってみる。
  Q:登録上の条件は別として夜間散布について、林野庁としてはどう考えているか。
  A:監視員を立てるとか、いろいろ措置を講ずることはできるんじゃないかと思う。
  Q:夜どうやって確認するのか。さっきの映像でもパイプの折れたのがそのままだっ
    たではないか。
  A:ああいうのは困る。
  Q:安全確保できる自然条件の時にやるべきだ。
  A:実施者が夜間の方がいいとその選択をしているのだと思う。その辺のところは
    実質どのようなメリットデメリットがあるのか聞いてみないと、実施者の方の
    考え方もあると思う。とにかく、農水省に確認を取る。
   (後日、林野庁からきた回答:「松くい虫防除用地上散布薬剤は、スミパイン乳剤、
    スミパインMC、ソビーT-7.5、マツグリーン液剤、T-7.5スミグリーン乳剤、
        T-7.5プロチオン乳剤及びファインケムB乳剤ですが、いずれの薬剤について
        も、農薬登録上、夜間散布に関する規制はありません」とあり、今後も夜間散
        布を認めていく方針のようです)

★夜300mも離れたところで・・・・・−略−


★要望への回答
  【要望1】特別防除の廃止期日の具体化について。
  【回答】「廃止期日を具体的に打ち出せ」という件だが、被害の終息はまだ予断を
    許さない状況ということで、現時点で何月何日何年までに特別防除を廃止する
    ということを約束できない。特別防除については毎年7月に県の担当者会議を
    開くので、そういう機会とか、予算の時期の張り付けの会議などを通じ、将来
    的にはなくすような形での条件整備をするということも徹底したい。

  【要望2】地上散布に関する厳しい規制確立について。
  【回答】地上散布の規制だが、農薬取締法の省令に「住宅地等の農薬飛散防止に努
    める」とある。それを受けて、林野庁としても都道府県にたいして地上散布等
    の防除に使う農薬使用については、農薬登録を受けている薬剤を使用すること、
    さらに、農薬登録時に定められた使用方法に基づいて、使用することというこ
    とを文書によって改めて周知を図った。住宅地等における農薬の飛散防止措置
    に関して、農水省生産局が指導文書を発すべく調整している。林野庁としても
    松くい虫防除事業等においても、本指導文書の内容が徹底されるように、でた
    暁には周知の徹底を図る、ないしは必要とあればかみ砕いたものを出す。ご指
    摘があったように事前に関係者に連絡するとか、立て札等の設置によって部外
    者が作業現場に近づけさせないというようなことをやってまいりたい。

  【要望3】伐倒した松を林内に放置せず、焼却することについて。
  【回答】伐倒した松を林内に放置せず焼却することだが、林野庁で行っている松く
    い虫防除方法は、被害木を伐倒し玉切りした上で、被害材に薬剤を散布する処
    理、又は、被覆してくん蒸する処理、また、被害材を焼却するとか、チッパー
    で細かく砕くとかいったような特別伐倒駆除といったようなやり方をしている。
    特別伐倒駆除は、作業の熟練度がなくてもいいのでメリットはあるが、立地条
    件においてはチッパーが入れられないようなところとか、焼却場所の確保が難
    しいところではできない。全てのところで焼却ができかねる。地形的な条件を
    勘案して、やむを得ず薬剤を使用する場合については、農薬登録で定められた
    方法、注意事項を遵守してきっちりやるようにしていきたい。

  【要望4】薬剤に頼らない環境保全型松枯れ対策として、今までの手法をとりまと
       め、広く啓発する。
  【回答】薬剤に頼らない環境保全型松枯れ対策のとりまとめ・啓発だが、薬剤を使
    用しない松くい虫被害対策は、国会の附帯決議にも言われている話なので、林
    野庁としても、積極的に推進している。

★できるところは指導すると
  Q:健康被害の把握状況についてはどうか。
  A:これまで、都道府県から実施状況を聞いているが、健康被害は2,3県からは
    聞いているが、他の県からはあがってきていない。
  Q:把握状況だから、それを出すべきだ。
  A:把握しているのを出す。
  Q:林野庁に上がってくるときにはものすごくバイヤスのかかったものしかない。
    誰かが市町村に電話しても、市町村の人が空散とは関係ないと思ったら、それ
    はもう空散による被害と認定しない。そうすると被害事例としてあがってこな
    いというシステムになっている。そうじゃなくて、言われたことをそのままあ
    げなさいと指導すべきだ。
  A:どこまでできるか研究した上で指導する。
  Q:空散をやめる日時を具体的に約束できないと言われたが、そういうことをずっ
    と言ってきている。97年からずっとだ。被害がでたからまたやるのなら松が
    全部枯れてしまうまで、空散やめないということになるじゃないか。
  A:松枯れ被害が下がってくれば、伐倒駆除に切り換えるのができるので急増した
    ときは一回たたいておかないとなかなか
  Q:そこは基本的に私たちの認識と違う。マツノマダラカミキリを殺せば松枯れ被
    害がなくなるというふうには思っていない。だけど、共通しているのは将来的
    に空散をなくすということだ。もうちょっと性根を入れてやってもらいたい。
    ちょっと松枯れ被害が増えればまた空散が増えるではないか。松枯れが増えて
    も空散を減らしていくと、そこのところは本当に腹をくくってやってもらわな
    いと。
  A:特別防除について縮小方向ということで、指導はしていく。
  Q:森林ではない場所では公園とか不特定多数の人が常時入るということを踏まえ
    てやってほしい。
  A:そこはご指摘を踏まえてできる限りのことはやっていきたい。
【資料】2003年度都道府県別松くい虫特別防除及び地上散布計画
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作成:2003-06-25、更新:2003-07-03