改定農薬取締法関係にもどる
t14302#特定農薬申請に厳しい条件−農水省が指定に関する指針案を発表#03-08
 農水省は8月4日、特定農薬の指定のための評価に関する指針案を発表し、9月3日ま意見募集をしています。「特定農薬」という名前はいかにも評判が悪いので通称として「特定防除資材」としていますが、中身は変わりません。ここでは通称ではなく正式名称の特定農薬という名前を使います。

 改定農薬取締法の主要な柱は、登録農薬以外を使用すると罰則がかかるということです。特定農薬は、有機農家などが使用している化学農薬でないさまざまな資材も農薬であると認定したところから始まります。  そこで、農水省が特定農薬と指定した資材は、登録されてなくても使用していいいというものです。危険な化学農薬を使用したくない人たちが経験と工夫を積み重ね、編み出した技術を農薬として取り締まろうというのが特定農薬制度です。  もっとも、最初は農水省は「有機農家への過剰規制にならないようにこの制度を作った」と言っていましたが、実際に動き始めると、次々と新たな規制が加えられ、有機農家規制の輪郭が明らかになってきました。

 特定農薬は、法律では「原材料に照らして安全」なものを指定するとなっていましたが、農薬資材審議会の審議の過程で「農薬であるからには効果がなければならない」とされ、結局、効果と安全性という二つをクリアーしなければならなくなりました。しかも指定申請時の試験データも、実に多岐にわたり、普通の農家が申請することは不可能になっています。ある程度は農水省が試験する場合もあるとは言ってますが、予算の関係からとてもすべての資材の試験は無理でしょう。
 確かに、効き目のない資材を販売したり、化学農薬を混入したりして販売する悪質業者もいることはいますが、販売農薬と農家が自家製の資材を使用するのとは区別して考えるべきではないでしょうか。そして、これらは農薬取締法ではなく、有機農業法を制定して、一括して規制すべきではないかと思います。  JAS法には有機農業として認定する場合に使用してもいい農薬が列記されていますが、デリスのような水質汚濁性農薬も使用可になっていたり、界面活性剤のような補助成分の含有規制もないなどの問題もあります。有機農業は化学農薬を使用するかしないかだけのものでなく、栽培法から違ってきますから、必要なら新しい法律を整備すればいいのです。
 今後、特定農薬制度を農薬取締法からはずす運動が必要と思われますが、現在、出されている評価案も十分検討しておかなければ有機農家にとって思いがけない落とし穴にはまるおそれがあります。

★大量の資料を提出しなければならない−省略−

★特定農薬に指定できないもの
 農水省は、以下のものは特定農薬として指定できないとしています。
  (1)原則として化学合成された物質であるもの(食品はこの限りでない)
  (2)抗生物質
  (3)天敵微生物(弱毒ウイルスはこの限りでない)
  (4)有効成分以外の成分として化学合成された界面活性剤などの補助成分
     が入っているもの
 食品以外の化学合成されたものは除くわけですが、化学合成の定義がはっきりしていません。熱を加えたらいけないのか、抽出したものはどうなのか不明です(食品衛生法では化学的合成品について「化学的手段により元素又は化合物に分解反応以外の化学的反応を起こさせて得られた物質」と定義されていますが)。また、補助成分には化学合成された界面活性剤は使用できません。
 そもそも、特定農薬は、原材料としての活性成分しか規制対象となっておらず、アメリカのミニマム・リスク農薬制度のように、使用してよい補助成分のリストもつくるべきです(このことは、補助成分が企業秘密になっている登録農薬についてもいえる)。

★評価の優先順位−省略−

★これは農薬ではない
 農薬ではないとされるもの(案)として以下のものが上がっています。
   1.薬剤でないもの(物理的防除等)−省略−
   2.農薬取締法上の天敵に該当しないもの
    (1)情報提供のあったもの
      @動物
        アイガモ、アヒル、スズメ、カエル、牛、ヤギ、羊、コイ、フナ、
        ドジョウ、ホウネンエビ
      A植物
        ギニアグラス(イネ科)、クロタラリア(マメ科)、
        イタリアンライグラス(イネ科)、エンバク(イネ科)、
        ソルゴー(イネ科)、マリーゴールド(キク科)、
        ラッカセイ(マメ科)、エンドウ等コンパニオンプラント、緑肥作物
      B使用方法から見て天敵の使用に該当しないもの
       ・天敵昆虫の寄主が好む作物を植えることにより圃場の在来天敵を
        増やし、害虫を低密度に保つ。
       ・圃場にくず米をまいてスズメを呼び寄せ、ついでに害虫を食べさせる。
       ・無農薬栽培、減農薬栽培または天敵に影響の少ない農薬の使用により
        圃場中の天敵昆虫の数を増やし、害虫を低密度に保つ。
   (2)その他考え得るもの
       ・病害虫等や雑草を食べることがある脊椎動物全般
       ・雑草を食べる水棲の貝や甲殻類全般
       ・土壌病害虫を減らす効果のある植物、他感作用により他の植物の生育
        を防ぐ植物、害虫を忌避したり天敵を呼び寄せる効果を有する植物な
        ど、植物全般
 その他、成分が植物に吸収されて栄養的に働くものとして肥料があげられていますが、さすがにそこまで農薬とは言わないようです。まあ、アイガモやアヒルやカエルなどが正式に農薬でないと認められたことを喜びますか。

★登録しないと使用できないもの
 農水省は、報提供のあった資材のうち、農薬として使用すべきでないもの、農薬として使用する場合には農薬登録が必要なものとして以下のものをあげています。
  ○ナフサク(α−ナフタリン酢酸)    ○塩化ベンザルコニウム
  ○クレゾール(BHC、ナフタリンとの混合剤)
  ○クレオソート(灯油と一緒に使用)   ○石油(灯油) ○消石灰
  ○たばこくず・たばこ抽出物・たばこ粉  ○ナフタリン  ○ホウ酸
  ○ホルムアルデヒド           ○パラホルムアルデヒド
  ○その他
     ・硫黄(殺菌剤)   ・ジベレリン(植物成長調整剤)
     ・ホルクロルフェニュロン(植物成長調整剤)
     ・ストレプトマイシン(殺菌剤、植物成長調整剤)
     ・硫酸銅  ・生石灰(殺菌剤ボルドー液の原料)
     ・塩基性塩化銅(殺菌剤)
★特定特定農薬の表示−省略−

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作成:2004-01-25