街の農薬汚染にもどる
t14701#感染症予防法改定とウエストナイル熱−媒介蚊対策で殺虫剤散布命令も可能に#03-11
 9月下旬に開かれれた臨時国会で、感染症予防法と検疫法の一部改正法案が、あっという間に通過し、10月16日に公布されました。
 今回の改定の主要な点は以下のようです。
  @一類感染症に、今春問題となった重症急性呼吸器症候群(SARS)と
   生物テロの恐れのある痘そうが追加された。
  A五類感染症が追加されて、従来の四類感染症が四と五類に分けられた。
  B四類感染症について、消毒・駆除命令/費用負担/罰則が適用されるよ
   うになった。
  C感染症の発生の状況、動向及び原因の調査について、厚生労働省大臣の
   権限が強化された。
  D都道府県知事と検疫所長の連携が密にされた。
  E感染症を人に感染させるおそれのある動物の輸入が届出制度となった。 
★蚊の駆除を拒否すれば、罰金50万円
 ところで、ウエストナイル熱は、日本脳炎や黄熱、デング熱、マラリアほかとともに、四類感染症に分類されていますが、媒介蚊対策は、どのように扱われるのでしょう。
 いままでは、一類から三類感染症にしか適用されなかった第二十八条(ねずみ族、昆虫等の駆除)の条文が、改定法では、四類にも適用されることになります。
 従って、都道府県知事は、ウエストナイル熱の『発生を予防し、又はそのまん延を防止するために必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがあるねずみ族、昆虫等が存在する区域を指定し、当該区域の管理をする者又はその代理をする者に対し、当該ねずみ族、昆虫等を駆除すべきことを命ずること』ができるようになりました。
 駆除方法は、法第三十四条(必要な最小限度の措置)によって、『感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない。』とされ、また、同法施行規則第十五条(ねずみ族及び昆虫等の駆除の方法)には、『次に掲げる基準に従い行うものとする』として、『二 駆除を行う者の安全並びに対象となる場所の周囲の地域の住民の健康及び環境への影響に留意すること。』とありますが、具体的にはどうなるのか不明です。
 万一、殺虫剤散布の場合は、化学物質過敏症患者などの殺虫剤弱者の保護をどうするのかを、予めきちんと決めておかねば、現場は大混乱になるでしょう。
 そして、この殺虫剤散布に反対すると、駆除命令違反を問われ、第六十九条(罰則)が適用され、50万円以下の罰金が科せられ恐れもあります。
 もうひとつ、駆除費用は、市町村が負担するのですが、第六十三条(費用の徴収)の条文では、市町村長は、『当該ねずみ族、昆虫等が存在する区域の管理をする者又はその代理をする者からねずみ族、昆虫等の駆除に要した実費を徴収することができる。』とありますから、後刻、あなたのところへ、経費が請求されるかも知れません。

 蚊の繁殖を防止するには、感染症が発生してからでなく、日常的に蚊の発生源である水たまりをなくすことが、重要で、下水路や雨水マスなどを、蚊の侵入・繁殖しにくいものに変えることなどに、お金を使うべきで、それが、本当の感染症の予防というものでしょう。
 しかし、なんといっても病原体の侵入を防止するのは、媒介する鳥や動物の海外からの無制限な移入を防止することです。ウエストナイル熱を媒介する野鳥等については、当然、輸入規制の対象になると思うのですが、第五十六条の二で動物の輸入届出制度が出来たというものの、今のところ、鳥類は省令で指定された届出動物になっていません。海外から正規に輸入される場合、動物検疫所で、感染していないことが確認されるまで、留め置かれることもあるでしょう。でも、密輸をしても、罰則が科せられないということでは、ザル法もいいところです。自然保護の立場からも、野鳥は全面輸入禁止にしてもらいたいと思います。

★ウエストナイル熱2003
 アメリカでの、今年のウエストナイル熱の流行については、CDC(疾病防止センター)がまとめたところでは、11月12日現在、患者数8393人と/死者184人となって います。死亡率は昨年の患者4156対死者284に比べ減少しています。
 一方、航空機内での蚊対策について、新たな動きがみられました。航空機客室乗務員組合(AFA)は、この数年、機内での殺虫剤散布の代替を求めてきましたが、エアカーテンによる蚊等の機内侵入防止策が、アメリカの運輸省により検討されることになったということです(Beyond Pesticides photonews)。私たちは、7月に、厚生労働省に対し、航空機へのウエストナイルル熱媒介蚊対策に関する要望を行いましたが(記事t14203)、その中で、強制送風装置の検討を求めました。一歩先んじているアメリカの方に期待した方がよいようです。
 ところで、日本国内でも、媒介蚊や野鳥のサーベイランスが行なわれていますが、幸いウイルスは発見されていません。
 横浜市が7月下旬から実施している調査については、市衛生研究所のホームページに結果が報告されています。トラップを利用した成虫蚊の調査は、週一回、市内20個所で行なわれ、ウイルスチェックがなされています。冷夏だったせいか、蚊が一匹も捕われないトラップもありましたが、10月28日までの検査ではいずれも陰性でした。また、10月30日までに衛生研究所に持ちこまれた23羽のカラスの死骸もすべて陰性だったということです。
 来シーズンに備え、殺虫剤にたよらない蚊対策を実施するよう、自治体に求めていきましょう。
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作成:2003-11-25