街の農薬汚染
t14801#通知「住宅地等における農薬使用について」−防除業者への周知と健康被害窓口に関して都道府県知事へ質問#03-12

 9月16日に出された農水省消費安全局長通知「住宅地等における農薬使用について」に関して、都道府県がどのように対応したのか知りたいところです。反農薬東京グループは、11月16日付けで知事宛に質問と要望をだしました。12月12日現在、43都道府県から回答がありました。その結果を報告します。なお、12月14日までに回答のなかった県は香川、高知、熊本、大分の4県です。

【質問1】貴県では防除業者へこの通知をどのように周知しましたか。

★防除業者への周知は県によってバラバラ
 住宅地等での農薬散布に一番関わりのあるのが防除業者です。改定農薬取締法では届け出制を廃止したため、この通知が防除業者にどのように周知されたのか、大変関心のあるところです。
 防除業者を把握してない県が多いことから、防除業者が加盟していると思われる造園業協会などへ通知したという回答が一番多くなっています。しかし、これでは不十分です。農薬散布業者は造園業者だけでなく、PCO(ペストコントロール協会=室内外の衛生害虫対策用の薬剤散布を請け負う業者の団体だが、樹木などの農作物への農薬散布業を兼ねているものもいる)のように、農薬散布のみの業者もいます(PCO業者に通知したところは埼玉県だけでした。)。また、シルバー人材センターも学校などの農薬散布を請け負っている場合もあります。これらの農薬散布を行うことによって報酬を得ている業者すべてを把握しようとしたら、やはり、防除業者の届け出制が必要です。
 回答の中には、農薬使用者一般に知らせているということで、お茶を濁している県もありました。今回の通知は住宅地等への農薬使用による健康被害を防止するためのものですから、一般の農地への農薬散布に埋没してしまったら通知の意義が失われます。
 農薬散布の委託者に知らせたという県もいくつかありました。しかし、これは行政などのはっきりしている委託者のみであり、一般家庭が委託する場合は入りません。やはり、直接散布する業者に直接周知しないと徹底できないと思われます。紙数の関係で県の回答は縮めてあります。また、一応、分類しましたが、どの業者がどの団体に属しているか不明のため、厳密なものではありません。

★防除業者への通知〜届出制度実施は、滋賀*と兵庫のみ
○直接、防除業者に通知した(11県)
 北海道:通知の写しを添付して、道の農政部局名(一部支庁経由)で各防除業者に
     周知した。
 岩手 :各防除業者に文書で通知。
 千葉 :県防除業協会長あてに通知を出し、指導をお願いした。
 岐阜 :農林関係機関や防除業者の団体のみならず、公共域の防除を委託する市町村
     その他関係機関に文書で通知した。同通知とは別に、
          「岐阜県農薬安全使用に係る指針」を県独自に策定し、上記と同様な機関に
          文書で通知し、関係機関・団体に対して会議・研修等の場で指導している。
 滋賀 :防除業届出を県の要綱で位置付け、防除業者へ指導を実施している。
     (*:滋賀県は、06/6/23要綱を改訂し、防除届制度を廃止した)
 兵庫 :「兵庫県防除業者に関する指導要綱」を制定し、防除業者の届出制を独自に
     実施している。今回の通知については、届出済みの全防除業者に文書通知。
     また、市町・農薬販売団体等関係機関にも文書通知により周知を図っている。
 奈良 :本年3月10日までに防除業届が提出された業者のうち造園業関係団体、農薬
     販売団体と加入していない業者への直接送付。市の緑化業務への入札業者、
     電話帳に載っている造園業者、奈良県花き植木農業協同組合の造園業者名簿
     等のうち特に住宅地を抱える都市部の業者へ直接送付。県知事が認定する農
     薬管理指導士を持つ防除業者への周知(重複あり)。
 和歌山:県の防除業者の団体である県防除業協会長あてに通知文を発出。
 岡山 :10月7日付けで各防除業者あてに通知した。11月18日に開催した「防除業者
     農薬安全使用等研修会」において周知徹底した。
 山口 :経過措置として旧防除業者に対し文書により周知。
 鹿児島:県で把握している防除業者宛通知。

 【コメント】この11県は現段階での防除業者を把握していると思われますが、どうや
  って把握しているのかは届け出制を取っている滋賀県*、兵庫県以外ははっきりしま
  せん。奈良県は電話帳に載っている防除業者等に直接送付しています。その努力に
  は敬意を表しますが、ここまでやるのなら届け出制にした方が簡単ではないかと思
  います。
○造園業者等関係団体に通知した(18県)
  青森/群馬/埼玉/東京/神奈川/山梨/石川/ 愛知/新潟/三重/静岡/富山/京都/大阪/鳥取/島根/徳島/宮崎−県別詳細省略
 【コメント】関係団体は造園業者が一番多く、無人ヘリコプター業者を明記している
  県もあります。また、ここでは省きましたがゴルフ場への周知もいくつかありまし
  た。ゴルフ場は別に農薬取締法の省令で、農薬散布が始まる前にその年の計画を出
  すようにとされています。しかし、関係団体から漏れるところも多いはずというこ
  とは、前述したとおりです。
○委託者等関係機関へ通知(11県)
  山形/宮城/栃木/茨城/福井/広島/愛媛/福岡/佐賀/長崎/沖縄 −県別詳細省略
 【コメント】
  地方自治体などの農薬散布の委託者に周知するというのも必要ですが、散布現場に
  必ず立ち会えるわけではなく、防除業者にお任せのところが多いわけで、どのよう
  にチェックするかが問題となります。委託者への通知で防除業者への通知に代える
  ことはできません。また、関係団体に通知したという回答では具体的にどこなのか
  わかりません。
○農薬使用者一般へ指導(3県)
 秋田、福島、長野などは、一般の農薬使用者として、幅広く周知したとなっています。一般農薬使用者には農家や家庭菜園、市民農園などで農薬を使用する人も含まれます。多種多量の農薬を使用する防除業者とは区別すべきです。これだけでは、今回の通知を周知したとは言えません。

【質問2】健康被害に関する相談窓口をどこにしましたか。

 農薬による健康被害を訴えても、窓口がなくたらい回しにされる例が全国にあります。特に保健所での相談への苦情が多く寄せられています。農水省の通知では、必要に応じ、行政が窓口を設置するよう記述されています。どんな部署が相談に乗ってくれるのか聞いてみました。
 県によって違いますが、窓口として名前の挙がっているのは、保健所と農林水産部がほとんどです。従来からそうしているという回答は、相談してきちんと対応された例を知らないことから、本当なのか不信感を持ちます。
 健康被害を受けたら直ちにこれらの窓口で相談してみてください。その対応がどうであったか、反農薬東京グループまでお知らせいただければ幸いです。

○窓口がないか、関係機関としか回答しない県
 特定の窓口がなかったり、部署名をあげず、関係機関が連携して対応すると答えたのは、福島、三重、滋賀、奈良、島根、佐賀、宮崎、鹿児島。回答がなかったのは、山形、東京でした。
○保健所や農林部局が窓口
 北海道:支庁農務部及び市町村農務主管課を窓口。必要に応じて、関係保健所と連携。
 青森 :衛生部局と農林部局が主体となって対応。
 秋田 :各保健所で相談に応じる。
 岩手 :保健福祉部(保健衛生課、各保健所)や農林水産部(農業普及技術課、病害
     虫防除所)で受け付けている。
 宮城 :相談窓口は衛生、保健福祉、農林水産部局等、全庁横断的に組織されており、
     本庁内と地方機関(県産業振興事務所、保健所、病害虫防除所、農業改良普
     及センター)に設置。
 茨城 :従来から保健所において相談を受けつけている。
 栃木 :健康福祉センター(保健所・県内10ヶ所)にて相談を受けつけている。
 群馬 :これまでも蚕糸園芸課植物防疫グループや各保健福祉事務所で対応している。
 埼玉 :各保健所が相談を受け付けている。
 千葉 :必要に応じて、保健所に健康相談窓口を設置する。
 神奈川:農政部局で適切に対応することが難しいため、保健所と連携を図る。
 山梨 :農政部において、速やかに対処する体制が整備されている。
 長野 :地方事務所農政課が保健所等関係機関と連携して対応。
 静岡 :県内各農林事務所を窓口とし、必要に応じて保健所と連携を計り対応。
 新潟 :福祉保健部で所管しており、必要に応じて相談窓口を設置。
 富山 :県庁においては厚生部くすり政策課が、出先機関では厚生センター(保健所)
     及び厚生センター支所が対応。
 石川 :農林総合事務所等で保健衛生部局と連携し対処する。
 福井 :従来から、各農林総合事務所および健康福祉センターにおいて、適切に対応。
 岐阜 :県の農林水産局、健康局など関連する部局が連携して適切に対応していく。
 愛知 :健康被害に関する相談窓口は各地域保健所である。
 京都 :保健関係部局と農林関係部局が連携を図る。
 大阪 :各保健所で引き続き健康相談の一環として対応。
 兵庫 :健康相談は健康生活局と農林水産部局が連携して対応。
 和歌山:従来通り衛生部局で担当している。
 鳥取 :従来から県内の各保健所(5ヶ所)が対応している。
 岡山 :従来から農林水産部局が中心となって県(農林水産、保健福祉、消防防災教
     育庁等)、関係機関・団体(医師会、薬剤師会、農薬関係団体等)による協
     議会を設置し、これら関係部局等が連携し、体制整備を行っている。
 広島 :県の農林部局と保健衛生部局が、市町村とともに対応。
 山口 :農林部経営普及課が窓口になり、健康福祉部(保健所)との連携。
 徳島 :農林部局と保健衛生部局との連携を図りながら、適切に対処する。
 愛媛 :保健所等を窓口に対応している。
 福岡 :健康に関する相談窓口は、従来から保健福祉部(保健福祉環境事務所)。
 長崎 :農産園芸課が窓口となるが、その後の対応は関係部局が連携して行う。
 沖縄 :農林水産部局が窓口となり関係部局と連携し対応。
なお、【要望】「防除業者の事前届出と記帳を義務づけ、その監督・指導できるような条例を制定してください。」に関する回答は次号で報告します。
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作成:2003-12-23、更新:2007-07-11