街の農薬汚染にもどる
t15306#樹木への農薬散布、施設内での薬剤散布を劇的に削減−世田谷区教育委員会の取り組み−#04-10
 前号で、東京都の「化学物質の子どもガイドライン−殺虫剤樹木散布編」を紹介しましたが、これを先取りする形で、世田谷区教育委員会は学校での樹木への農薬散布、施設内での薬剤散布を劇的に減少させています。保護者からの熱心な働きかけが実ったものです。以下、世田谷区教育委員会で聞いた取り組みを紹介します。

★樹木への農薬散布は年に4〜5本に
 世田谷区には小学校が64,中学校が31,幼稚園が11で、計106校あります。学校の樹木への農薬散布削減の取り組みは、2002年度に小学校5校、中学校2校のモデル校での実践から始まりました。
 保護者の小寺初恵さんは、何回も教育委員会に足を運び、新座市教育委員会の取り組みを紹介し、連絡をとるように勧めたということです。モデル校を作って小規模から始めるというやり方は新座市で始めたものです。世田谷区もモデル校での実験がうまくいったので、翌年から区内すべての学校に広げ、今年度で3年目になります。
 取り組みとしては、毛虫が発生する前(5月上旬、中旬、秋口など)に「そろそろ、毛虫が出る時期ですが、できるだけ初期の段階で見回ってください」と学校に連絡します。
 もし、毛虫が発生していても、低木の場合はその場所で捕殺やせん定をしてもらいます。高木等、全体に広がってしまった場合などは、教育委員会の事務局の職員が現場を確認し、どのような対処がいいか決めます。造園業者に頼んで切ってもらう対応ですむのか、やむを得ず、最終的に農薬を散布しなければならないか、現場を見て決めるということです。
 では、どういう場合に農薬散布をするのでしょうか。担当者は「本当にケースバイケースで、学校の配置の中の場所にもよりますし、毛虫に毒があるかないかにもよりますし、樹木の一部分で処理がすむのかどうか、その当たりを総合的に見て決めます」ということで、去年は106校のうち、農薬散布をした樹木は4〜5本だけだったそうです。

★新座市の経験に学んで
 去年は全国的にチャドクガが大発生して大騒ぎになりましたが、世田谷区ではチャドクガがつく木は小さいので、職員がその場所を切って対応し、農薬は撒かなかったということです。しかし、マツカレハが広がってしまって農薬散布をしたということです。
 「マツカレハなら冬のコモ巻きで対応できるはずですが」と聞くと、「やっております」との回答でした。あれ、これはどこかで聞いた話だな、と思い出しました。新座市での取り組み内容です。新座市ではチャドクガには農薬で殺しても毒針が残ってしまうので、農薬散布をしてはいけないことになっています。
 聞けば、世田谷区では、新座市教育委員会と子どもの健康を守る会が作った「校庭樹木の無農薬管理法」というポスターを印刷して、全部の学校に配布したとのことです。(このポスターと新座市子どもの健康を守る会の活動は、当グループが発行している「農薬いらずの庭づくり」に詳しく説明してあります)
 「苦情の電話などありませんか」との質問に、担当者は「取り組んでくる中で、学校の方もだんだん理解してきてくれて、学校の用務さんも、事前に見回って自分でできる範囲は切ってくれますので、最初に比べたら、電話の件数は減ってきました。」と言ってました。
 「薬剤散布をしてくれみたいな要望があったときに、危険ですよといような説明をなさるわけですか。」
 「そうですね。14年度当たりはひとしきりその説明をしました。でも15年度はもう薬剤を撒いてくれという依頼よりは、毛虫が出たんでどうしましょうというような依頼の仕方になっています。」
 「東京都が子どもガイドラインで『樹木殺虫剤散布編』を出しましたね。」
 「はい、うちにも東京都さんからもいろいろやり方について、問い合わせをいただきました。」
 「なるほど、それで、コモ巻きなんかの方法がガイドラインにあったのですね。」
 新座市子どもの健康を守る会の先進的な取り組みがこうやって、全国に広がっていくのだと感慨を深くしました。

★ゴキブリ駆除費2000万が200万に
 学校の樹木への農薬散布を中止する自治体が最近増えていますが、給食室などのゴキブリ対策で薬剤散布をやめているところはほとんどありません。しかし、世田谷区では施設内での薬剤散布も激減させました。
 1999年度までは、スミチオンなどの有機リン系の薬剤散布をしていましたが、保護者からの働きかけや環境問題に関心が深まってきて、何とかしなくてはと考えたということです。2002年度からはピレスロイド系の薬剤に変えたり、回数を減らしたりしましたが、やはり、根本的に考えようと学校保険法の衛生基準という原点に戻って検討したとのことです。
 学校衛生基準には、ハエ、カ、ゴキブリなどの衛生害虫はまず生息調査をして、生息が認められた場合には、児童生徒に影響のない方法で駆除しなさいとあります。それまで生息調査はしていませんでしたので、まず、生息調査から始めようということで、2002年度に全部の学校で生息調査をしました。結果としては特に問題はなく大量発生しているところもありませんでした。薬剤散布はやめて、少し生息しているところはゴキブリのでそうな隙間にベイト剤を注入する方法で対処しました。2003年も、薬剤散布はしていないとのことでした。
その結果、それまで約2000万円かかっていた費用が200万円と10分の1に減少したということです。結果的にすごい節約になったわけです。生息調査だけでこれだけ減らせるのなら、世田谷区を見習って全国の学校でやってもらいたいものです。
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作成:2004-10-25