環境ホルモン
電子版「脱農薬てんとう資料集」No.2
<環境ホルモンSPEED98→ExTEND2005批判>
t16506#環境ホルモンについての要望に各省が回答#05-05
環境ホルモンExTEND2005の公表に伴い、環境省、厚労省、農水省に対し、水系での内分泌系撹乱作用が明らかになった物質とフタル酸エステル類の規制を求めるなどの要望を送りましたが、それぞれ回答を得ましたので、ここに紹介します。
★環境省からは、具体的な回答なし
環境省の回答は、個々の質問に答えるのではなく、総括的な答えで『要望書内で指摘されている事項はいずれも重要な課題であると認識しております。今回いただいた貴重なご意見は、平成17年度以降「化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針について-ExTEND 2005-」に基づき、取組を推進していく上での参考とさせていただきます。』というものでした。魚のメス化の大きな原因である天然・合成ホルモンについても下水処理場の排水規制も手付かずですし、SPEED98リストアップ農薬についての評価スケジュールの回答ありません。
★農水省は、農薬補助成分の公表検討と
ノニル/オクチルフェノール系界面活性剤については、『農水省が平成14年に緊急に実施した農薬等に含まれるこれらの物質が河川等に流出して環境生物に影響を与える可能性についての調査研究によれば、農薬の補助成分由来のノニルフェノール等が水田及び畑地から公共用水域に流出する量は少ないとの結果が得られています。』とのことです。
ビスフェノールAについては、現在、農薬の補助成分としての利用はなく、フタル酸エステル類ついては、吊下式くん蒸剤のケースに使用されているプラスチックの可塑剤として使用されているのみだそうで、現時点において農薬の構成成分としての使用を規制しなければならないとする科学的根拠は乏しいと考えるそうです。
地方自治体に対して、SPEED98にリストアップされた登録農薬の使用規制をしないようにとした農水省の協力依頼の事務連絡撤回については、農薬についての評価結果がでていないにもかかわらず、『これまで、魚類及びラットのいずれにおいても、明かな内分泌系撹乱作用は認められておらず、結果的に平成12年当時の指導は適切なものであったと考えています。』と強弁しています。
農薬業界が1998年に実施したリストアップ農薬の毒性の再評価内容については、個々の農薬でどのような評価がなされたかを明かにしてくれませんでした。
また、2001年1月以前の既登録農薬については、従来から行っていた繁殖試験や催奇形性試験の方法及び検査項目によっても、内分泌系撹乱作用の有無を確認することは可能との学識経験者の意見を基に、内分泌系等に係る検査事項の追加項目のデータ提出は不要であると判断したそうです。
その他、以下のような回答がありました。
・農薬製剤中に含まれる補助成分の公表については、今後、検討する。
・水産生物に対する危急的かつ深刻な影響が顕在している確たる証拠は見られない。
・家畜排泄物については、04年11月から対象農家に義務付けられた、畜産業を営む者
が排泄物を管理する上で遵守すべき基準により、不浸透性材料で築造した施設にお
いて管理すること等となっており、今後とも、適正管理を推進していく。
★厚労省の塩ビ可塑剤フタル酸エステル類の規制
医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室からの回答がありましたが、今以上の規制強化にはふれられていません。
包装・容器・おもちゃ等については、
『フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)=DEHP、フタル酸ジイソノニル=DINPについては、厚生省告示第370号(昭和34年12月)において使用規制等の措置がとられているところです。
ビスフェノールAについては、ポリカーボネート樹脂における溶出試験において基準を定めているところです。
規格基準に合わない容器包装等の販売が確認された場合は、食品衛生法第18条違反として回収等の対象となります。』
とのことです。フタル酸エステルについて、00年6月の塩ビ製調理用手袋の使用自粛や、02年8月の「器具及び容器包装」と「おもちゃ」の2分野での使用禁止に触れてくれれば、よかったのに。
塩ビ製の医療機器から溶出するDEHPについては『02年10月にその取扱にかかる考え方を示したところであり、医療関係者等に対して、新生児・乳児に使用されるフィーディングチューブ、ヘパリンコーティングチューブ、人工腎臓用血液回路、人工心肺回路およびその他の血液回路、輸液チューブ及び延長チューブ等について、代替品に切り替えること等の情報提供を行っています。』
室内汚染についての回答では、『「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」において、公衆衛生の観点から室内空気中に存在する化学物質の不必要な暴露を低減させるため、個別物質について対策の基準となる客観的な評価を行っています。当検討会において、フタル酸ジ-n-ブチルの室内濃度指針値が220μg/m3と定められています。』とあり、DEHPの指針値を書いくれませんでした。
家庭用殺虫剤や防疫用殺虫剤、POPs系化学物質やPCPのようにシロアリ防除剤らについての回答は、『薬事法で規制される家庭用等で用いられる殺虫剤のヒトに対する安全性については、種々の毒性データを含む承認申請試料を審査し、また、用法についても、安全性確保のために必要な使用上の注意を付して、薬事・食品衛生審議会の専門家の意見を聴いた上で承認しています。また、市販後の安全性に関する情報を収集し、その評価・検討を行って必要な安全対策を講じています。
なお、残留性有機汚染物質に係るストックホルム条約(POPs条約)で指定されている化学物質については、意図的に製造されることのないダイオキシン及びジベンゾフランを除き、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」において第一種特定化学物質に指定されており、製造・輸入・使用が事実上禁止されています。』としか答えてくれませんでした。
【関連資料】
農薬工業会の見解
・SPEED98に対する農薬工業会の見解(2001年1月)(農水省文書有り)
・環境省の環境ホルモン戦略計画「SPEED'98」および化学物質の内分泌かく乱作用に
関する今後の対応方針「ExTEND2005」について(2005年10月)
厚労省の塩ビ可塑剤フタル酸エステル類の規制
・塩化ビニル製手袋の食品への使用について
・食品、添加物等の規格基準の一部改正について(食基発第0802001号)
・食品、添加物等の規格基準の一部改正について(食発第0802005号)
ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
・ ニュースレター第34号より食品のフタル酸エステル汚染
平成17年度第1回化学物質の内分泌かく乱作用に関する検討会(2005/05/17)
・H14/15年度選定物質の試験進捗状況
平成17年度 第1回 ExTEND2005作用・影響評価検討会
・H14と15年度選定物質の魚類試験結果及び哺乳類試験結果
・H17年度試験対象物質候補
平成17年度第2回化学物質の内分泌かく乱作用に関する検討会(2005/10/31)
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作成:2005-10-29、更新:2005-11-14